ティーローフ(tea loaf-イングリッシュファームハウスティーローフ)
私が今年の1月で二人の孫娘を持った事は、「近況について」(参照)で話した。孫を持った喜びのついでみたいだが、今日の焼き菓子は、その孫たちに今後、何度も焼いて食べさせるだろうという予感もある。この焼き菓子にはいろいろな思い出もあり、ふとそんなことから自分の人生を振り返る契機にもなった。そして、これからどんなふうに生きていくのか、そのことを決める大きな節目でもあると感じている。このブログについても少し書いておきたくなった。
我が家の家庭料理からレシピを紹介し始めて9年が過ぎようとしているが、あっという間だった。始める大きなきっかけは娘が高校卒業後、都内の学校に通うようになり、半自炊を始めた時だった。
家にいた頃に食べたおかずを参考に作りたいというので時々、電話をかけてくるようになった。電話のやりとりで作り方を教えるというのは簡単なようで、140字でまとめるよりも難しいものだった。いや、当時はTwitterなどもなかったが、だったらと、その頃、流行っていた「ブログ」に書いて公開すれば、いつでもどこでも何度でもチェックできる掲示板の手軽さというひらめきで始めた。しかも、記録として後にも残る。それはいいのだけど、日常の忙しさの中で一定のエネルギーで続けるのは大変なものもあった。
その娘がだ。わずか9年の間に結婚して子どもを産み、二児のお母さんになってしまうのだから人生というものは、生きてみないとわからないものだとつくづく思う。またその間、私は、何も大きな変化を生み出すことはなかった。
若いころの激動というのは、人の一生のうちの極限られた時期だけのものだなあと思うと、親となって我が子が人生の節目を向かえるころにはもう下り坂に差し掛かってしまう。そのことに迂闊に気付かずにいると、ちょうど今の私のような状態で我に戻される。これといった足跡が残せなかったのに気づいても、もう一度やり直す猶予がこの先ない。これは、寂しくもある。
孫娘が「おいしちいねぇ。」と連発しながら私の手料理を食べている姿は何とも可愛いもので、そういう日常に酔って、ずっとそのまま時間が止まればいいのにと思ったりもする。こういった思考は、老い先の短さや、老いたことをしっかり認めた婆さんになる事が前提に置かれる。そういう意識が芽生え始めた証ではないかと思えるのも、とほほ、である。
さて、そのお祖母ちゃんが、孫がいつか「お祖母ちゃんの作ってくれたあのケーキが食べたいなあ」と思った時のためにレシピを書き記しておくことにした。(マジで、遺言レシピのようになってきたのぅ)
この焼き菓子については、長谷川恭子さんという料理研究家の「イギリス菓子のクラシックレシピから(長谷川恭子)」(参照)に背景やレシピが掲載されている。また、極東ブログで以前、この書籍に触れて、著者の紹介もしている(参照)。そして、実は昔、私がイギリスでしばらく暮らした折、同居させてもらったロンドンの南部のイギリス人一家の家庭のおやつで知っていた。
この家庭は典型的なイギリス人の暮らしぶりで、ご主人は検察官、奥さんは学校教師というお固い家柄。もちろん日常の英語も上流階級の上品なレベル。家族がいる土曜日の午後は皆でハイティーを頂き、夜は、夫妻は招かれたパーティーに出かける。私は子どもたちの寝かし当番だった。絵本の英語の読み聞かせは、ここで上達したのだった。
このケーキは特別の日に作るという印象はなく、スコーンやクッキーを作ってタッパーに保存するような手軽さだった。平日の忙しい日でも夜にちゃちゃっと紅茶を用意し、ドライフルーツを漬け込む。翌日の忙しい夕方時、粉類を混ぜて焼き上げる。見ているとものすごい早業のようだった。なんせ、手順がイイ。そして、自分で作ってみるとわかるが、道具は多くを必要としないし、場所も狭くてもできる。見ていたように私にもできたのが何よりも嬉しかった。しかも、美味しい。
さて、長谷川さんの分量と材料とは若干違うが、プルーンを入れたほうが断然美味しくできる。ここは面倒がらず、ドライフルーツにコーティングされたオイルをお湯で洗った後、刻んでレーズンと一緒に紅茶に漬け込むことをおすすめする。できればオイルコーティングのないドライフルーツが美味しいし、安心なのでお薦め。
また、材料の小麦粉とベーキングパウダーの代わりに、市販のホットケーキミックスを使い、砂糖の分量をその分、減らしても良い。前日の夜に紅茶にドライフルーツを漬け込み、翌日焼き上げるため、この分業が忙しい人にとっては嬉しいかも。
ではそろそろ、材料と作り方に行ってみよう。
材料(内法22cm深さ3cmのパイ型または、一般的なサイズのミートローフ型)一個分
・ ティーバッグ・・2個(コクと香りのよいアッサムティーがおすすめ)
・ 熱湯・・200cc
・ レーズン・・80g
・ プルーン・・70g
・ 黒砂糖と砂糖・・半々で合わせて80g
・ 卵・・1個
・ 薄力粉・・150g
・ ベイキングパウダー・・小さじ2
・ 型に塗るバター・・少々
作り方
- ティーバッグから取り出した紅茶をボールにとり、熱湯を注いで冷めるまでそのまま置く。
- レーズンやプルーンがオイルコーティングされている場合は50度のお湯で洗い流した後、たっぷりの50度のお湯で30分ほど戻す。
- 2の水気を拭き取り、プルーンは荒くみじん切りにして分量の砂糖と一緒に、1の冷ました紅茶(茶葉も含む)に一晩漬け込む。
- オーブンを180度に予熱し始める。
- 小麦粉とベーキングパウダーを混ぜ、笊などで1~2度振るって空気を含ませておく。
- 3に卵を割り入れてよく混ぜ、5の粉を加えてさっくり混ぜ合わせる。
- バターを型に塗り、6を流し入れて10cmくらいのところから台に落として空気抜きする。
- 180度で予熱が終わったオーブンで、表面がチョコレート色に仕上がるまで約35分焼く♬
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