保育所が完備されれば少子化は改善するのか?
タイトルのこの問題、子どもの預け先が充実していれば少子化問題は徐々に解消していくものだと、これまでものすごく当たり前に思ってきた。それでも本当はどうなのか、一度じっくり考えて見たくなったのは、先日のエントリー「私が魔女だった件」(参照)でも少しふれた、離婚率や結婚率にも少なからず関係があるのではないかと思えるからだ。
補足的な意味でも、少し掘り下げてみたい。
いきなりだが、厚生労働省から、平成25年4月1日年時点での保育所の定員や待機児童の状況が公表されたので(参照)、現状把握のために数字をみてみた。
○保育所定員は 229 万人
増加数:平成 24 年4月→平成 25 年4月:4万9千人
(平成6年の保育所入所待機児童数調査以降、過去最高の増加数)
【参考】平成20年4月→平成21年4月→平成22年4月→平成23年4月→平成24年4月→平成25年4月
(1.1万人増) (2.6万人増) (4.6万人増) (3.6万人増) (4.9万人増)○保育所を利用する児童の数は42,779 人増加
・保育所利用児童数は2,219,581人で、 前年から42,779人の増
【参考】平成20年4月→平成21年4月→平成22年4月→平成23年4月→平成24年4月→平成25年4月
(1.9万人増) (3.9万人増) (4.3万人増) (5.4万人増) (4.3万人増)・年齢区分別では、3歳未満が29,148人の増、3歳以上は13,631人の増となっている。
リンク先にグラフが分かりやすいかもしれない。
見た通り、保育所は確実に増えている。5年間で約17万人も増えている。そして、待機児童数は22471人で前年度比では2千人減少している。しかも、3年連続減少となっている。不思議なことに、入所者数が定員数を下回って余裕があるというのに、待機状態が発生するのはなぜだろう?娘の住む副都心の様子を見て気づく点がいくつかあった。
まず、高層マンションや高層の都営住宅が駅付近に密集している割に、駅から2kmも離れると先住民の暮らす庭付きの大きなお屋敷が建ち並び、畑や果樹園が広がる地域になる。その落差から思うに、公営の保育園の立地条件と、人口あたりの保育園数の定数から、需要が偏在しているのではないだろうか。因みに私の住む長野県の諏訪の状況だと、保育園は定員を割っているため、統合したり閉鎖されている。その割に保育士不足などと聞く。
首都圏に人口が集中しているのは言うまでもなく、地方では働き先が年々減ってきているため、若い世代がかなり減少傾向にある。
首都圏の大規模な住宅群に子育て層が増えると、所定保育所では間に合わなくなり、その設置が急がれるが、実際の増設までにはにはタイムラグも生じる。しかも、出生数が単純に保育希望者に移行するかどうかも不確実で、保育希望者数の読みも難しい。
また、娘の話から、待機児童問題解消への市の取り組みも顕著で、普通の会話で子どもを保育園に預けてみようかなどの話がポンと飛び出してくるほど、いざとなればいつでも預けられるという安心感はありそうだ。私の子育て時代は、保育園に預けるためにいろいろと算段をしたものだったが。
要は保育所を増設すると需要も増えてしまうというか、これが、少子化解消の数字に現れてくるのかもしれない。また、保育所増設で問題となるのは、利用者が増えれば自治体の財政負担が重くなる点だ。
保育料は保護者の所得で振り分けられていて、自己負担分は年間で30~50万円の中でランク付けされている。夫が働き、妻が子どもを保育園に預けて働きに出たとすると、仮に時給1000円で日に6時間、月20日間とすると年間で150万円を切る。税引き後の手取りから保育料を支払ったとしても家計にプラスにはなる。働いて保育園に子どもを預けるメリットの方が大きいので、私の子育て時代はパートが多く、それなりに楽に子育てが両立出来た。夫婦正社員の共働きが限定の保育所入所の規制が緩和されれば、30年ほど前のように、希望者が続出するのは当然とも言える。
これを流通市場に置き換えてみると、需要やサービスの増大に比べて供給量が少ない時、価格は高騰する。これが保育園だと、需要に比べて供給が少ない場合でも、保育料は「公定価格」であるがために変動せず、延々と単一であり続ける。そのため、物不足が延々と続くことになる。これが常態化した理由はよくわからない。誰も疑問視しないのはどうしてだろうか?民主主義の国で社会主義国のような政策が国民に浸透しているのは確かだと思う。なんか不思議な国、日本。
仮に保育料の価格統制を市民に委ねて自己負担にするとしたらいくら位になるだろうか。利用者が実際に支払っている保育料は平均で30~50万円としでも、公営保育所では、一人当たり年間150万円程度のコストと言われている。これが自己負担の全額とすると、保育料は月額8~10万円となる。さっきのパート計算にもどると、子どもを預けて働きに出ようというメリットはなくなるため、需要が減る。つまり、預ける希望者が減るので待機児童も減ることになる。やったー、これだ!と思いきや、考えてみると親の心理としては、だったら子どもは多くは育てられないや、ということになりそう。少子化にかなり貢献してしまいそうな危険な思考だったな。
しかしながら、このまま「公定価格」を維持すれば、経常赤字は増える。その穴埋めの補助金がいつまで持ちこたえられるのか?結局、国と地方自治体の財政再建の話になってしまう。
大都市の半数が単身世帯で、高齢者の単身世帯も増えている。それどころか、高齢者の比率は、日本人の4人に一人の割合になっている。子育て世帯を支援するにも、例えば、有権者の圧倒多数が高齢者のため、少子化問題や保育の公費支援にどれほどの理解が得られるかは疑問だ。医療費や介護費が圧倒的に多くかかり、そのために自民党を選んでいると、そういう支持者に応えるというのもわからなくはない。
民主的に物事を進めようとしたり、進めてきた結果で問題を発見し、それを民主的にどう解決していくか、解決法はあるのか?
とても難しい問題なのだと心した。
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