2013-01-31

マリへの軍事介入が隣国ニジェールへ拡大される背景

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 アルジェリアの惨劇が終わって、日本では犠牲となって亡くなった日揮の関係者全員が帰国され、区切りがついたかに思う。本当に痛ましい嫌な事件だったが、その主因とも言える背景について触れておきたい。
 結論から言うと、アフガニスタンにアメリカが介入したのと同じような背景と言える。アルジェリアのガスプラント人質事件は、イスラム過激派のチンピラのような数名が主謀したと言われているが、彼らがリビアのカダフィーが所蔵していた武器や弾薬を奪ってマリ北部に潜んでいた背景は前回、ここでも触れた(参照)。当時からマリのこの地域が不安定化していたため、フランスはマリの旧宗主国でもあることからいち早く軍事介入を申し出た。国連もこれに賛成し、マリ政府もこれを歓迎した。フランス軍の介入によって治安が維持されるとあれば願ったり適ったりだったと思う。そして、アルジェリア惨劇の終結によってマリへの軍事介入も一段落し、いずれ撤収すると思っていた。が、現実にはその守備範囲を隣国のニジェールに拡大するような動きになってきている。その第一報は、ニューヨーク・タイムズ紙を引用したアルジャジーラ紙が短く配信していた(参照)。

The US military plans to set up a base for drones in northwest Africa to bolster surveillance of al-Qaeda's affiliate in the region as well as allied Islamist extremists, a US official told AFP news agency on Monday.

The base for the robotic, unmanned aircraft would likely be located in Niger, on the eastern border of Mali, where French forces are currently waging a campaign against al-Qaeda in the Islamic Maghreb (AQIM), said the official, who spoke on condition of anonymity.

The base was first reported by the New York Times newspaper earlier Monday.

The airfield would allow for better intelligence gathering by unarmed drones on the movement of AQIM and other militants, which Washington considers a growing threat, the official said.

 アメリカのドローン(=無人探索機またの名を無人殺人機)のベース基地(飛行場)の設置は、アフリカ地域を脅威に晒しているアルカイダや他の武装勢力の動きについて情報収集するためだという名目である。「名目」とあえてここで表現するのは、アフガニスタンの治安を目的にアメリカが駐留している頃、パキスタン国境付近で無差別に住民たちがこのドローンによって殺害された経緯からだ。もちろん、パキスタンを通り道に使わせてもらっているアメリカが故意にパキスタン人を狙ったわけではないだろう。が、何度となくドローンの犠牲になった。
 ここでアメリカのこの計画を奇異に感じた。マリのフランス軍事介入に支援すると表明しながら実際には関わらなかったアメリカが、何故のこの件で今頃?しかもなぜ、隣国のニジェールなのか?それが透けて見えてきたのは、フランス軍がニジェールに守備を拡大するという情報と結びついた時だった。

France has every reason to fear that its intervention in Mali, which has already seen the bombing of civilian populations and the torture and execution of civilians by the French-backed Malian army in predominantly Tuareg areas, could cause armed conflict to spill over the border into Niger.

 フランスに支援されているマリ軍は、一般市民への爆撃や主にトゥアレグ族の居住地域で起こっている市民に対する拷問や殺戮という事態を惹き起こしている。フランスのマリでの軍事介入によって武装闘争がニジェールへ飛び火するのではないかとフランスが恐れる理由である。

However, in addition to securing its profitable facilities from “terrorism” or popular revolt, France has other reasons to flex its military muscle in Niger. In an attempt to increase its share of the uranium profits, the Nigerien government has recently issued exploration permits to Chinese and Indian firms. By dispatching armed commandos, Paris is asserting its domination of the former colony as part of its African sphere of influence.

 しかしながら、利益をもたらす施設を「テロリズム」や反乱から守る目的に加えて、フランスは軍事力をニジェールに拡大する別の理由がある。ニジェール政府はウランからの利益を増大させるために最近、中国とインドの企業に調査を許可した。フランスはニジェールに武装した特別攻撃隊を送ることによって、アフリカを勢力範囲の一部として旧植民地としての支配を主張している。

As France stepped up its African intervention, Secretary of State Hillary Clinton used testimony before a Senate committee Wednesday to affirm Washington’s determination to escalate its own intervention in the region.

フランスがアフリカ介入を強化させたため、アメリカのヒラリー・クリントン国務長官はワシントンの上院委員会の公聴会で水曜日、この地域に対するアメリカの介入を拡大させる決定を示した。

“We are in a struggle, but it is a necessary struggle,” said Clinton. “We cannot permit northern Mali to become a safe haven.”

 クリントンは、「我々は紛争の中にいる。これは必要な紛争である。」「我々はマリ北部を安全な避難所にするわけにはいかない」と語った。

Clinton acknowledged that the rebellion in Mali as well as the hostage siege at the gas plant in Algeria had been fueled in large measure by the US-NATO toppling of the Gaddafi regime in Libya, where Washington and its allies armed and supported Islamist militias as a proxy ground force in the war for regime change.

 クリントンは、マリでの反逆やアルジェリアのガス・プラントでの人質事件は、米国・NATOによるリビヤのカダフィ政権の転覆で煽られた結果だと認めている。リビヤでは、米国とその同盟国はイスラム主義者を武装させ、彼らを代理者としてカダフィ政権転覆の軍事力にして支援した。

“There is no doubt that the Algerian terrorists had weapons from Libya,” she said. “There is no doubt that the Malian remnants of AQIM [Al Qaeda of the Islamic Maghreb] have weapons from Libya.”

 「アルジェリアのテロリストがリビヤから武器を持ち出したことに何の疑いも無い」「マリのAQIMの分派がリビヤから武器を入手したことに何の疑いも無い」と語った。

She argued that, while there was no evidence that any of these forces in North Africa posed a direct threat to the US, Washington should launch a preemptive campaign against them anyway. “You can’t say because they haven’t done something they’re not going to do it,” she said.

彼女は、北アフリカのイスラム武装勢力がアメリカへの直接的な脅威になるという証拠は無いが、アメリカは彼らに対する先制的に作戦を開始すべきであると主張した。「彼らが脅威にならないと示してはいないのだから、その補償はない」と話した。

 ヒラリー・クリントン氏はたてまえでは「リビアからの武器」と言うが、結局、マリ北部の反抗勢力を育てた張本人であるし、アルカイダを増強して育成したことになる。この背景はこちらが詳しく考察している。参考までに(参照)。
 文脈を戻すと、「備えあれば憂いなし」ではあるし、ウランをイスラム過激派の手には渡さいという決死の構えを見せる必要はあるとしても、ニジェールにドローン基地計画を進める目的は、中国とインドへの牽制も働いていると見るほうが正常な気がする。
 中国とインドは核を盾に、常にお互いを牽制し合っている危ない関係で、北アフリカに両社が入り込むのはかなり厄介であるし、事前に抑止を働かしておくのも一つの備えであると思う。
 そして、この関係で昨日情報を見聞していたところ、日本の関わりも出てきた。これが正にアフガニスタンに協力した小泉政権当時の対応と同じである(参照)。

外務省は29日、アルジェリア人質事件を受けて隣国のマリや周辺国の治安維持と人道支援を強化するため1.2億ドル(約110億円)を拠出すると発表した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など国際機関を通じて関係国に提供する。マリから避難した難民支援やガーナにある国連平和維持活動(PKO)訓練センターでの人材育成に役立てる。

 松山政司外務副大臣が同日にエチオピアで開いたマリ支援会合に出席し、日本政府の方針を説明した。マリではイスラム武装勢力と政府軍の対立が激化。フランスが軍事介入に踏み切り、治安が悪化している。

 ここまで書いて新情報はないかと検索してみると、ファイナンシャル・タイムズも今回の介入について記事を書いている。訳文が日経に出ているではないか!(参照
 日経は記事がすぐに削除されてしまうので、全文を引用させてもらうことにした。参考として記録までに。

[FT]仏軍のマリ介入に強力な国際支援を(社説)
(2013年1月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 西アフリカのマリで起きている出来事は、気がめいるほど見慣れた光景だ。危機に陥った国に最新装備を誇る欧米軍がすばやく介入し、イスラム過激派の掃討作戦を助ける。いくつかの都市を制圧し、武装勢力が退散したところで、政治家が勝利後の話し合いを始める。ところが戦いがいつまでも終わらないリスクに直面する。

■アフガニスタンの二の舞いにしないために

トンブクトゥの空港を警備するフランス軍の兵士(1月28日)=ロイター
 フランスのオランド大統領は「この戦いに勝利しつつある」と力を込めた。仏軍とマリ政府軍が今週、イスラム武装勢力の支配下にあった北部の主要3都市のうち、トンブクトゥとガオを奪回したからだ。しかし、反政府勢力を封じ込める戦いは始まったばかりだ。

 武装勢力は敗北を喫する前に、山中に撤退したにすぎない。都市奪回という比較的明快な作戦に比べ、イスラム兵士を探し出すのははるかに困難な任務だ。加えて、かねてこの地域ではジハード(聖戦)の拠点が着々と築かれており、周辺国に戦火が広がるリスクもある。一方、マリ政府軍はほとんど軍事訓練を受けておらず、奪回した都市を守り、平和を維持することすら容易ではなかろう。

 アフガニスタンの二の舞いにもなりかねない。だからこそ国際社会が迅速に行動し、仏軍の介入をしっかり支えることが非常に重要だ。勇気づけられる兆候も見られる。米国は過激派の拠点を探索する目的でニジェールに無人偵察機を派遣。英国は29日、マリや他のアフリカ諸国の軍事訓練を行う部隊を派遣すると表明した。目の前の戦闘とは無関係だが、地域連合軍のマリ派兵を実現させるために役立つだろう。

 さらなる資金援助も必要だ。国際社会は経済・軍事支援として4億5000万ドルの拠出を約束している。しかし軍事作戦のコストは10億ドルに達する見通しだ。マリ政府は資金をまかなえず、フランス単独で西アフリカ全体を脅かす紛争の負担は引き受けられない。

■アフリカ諸国も責任を負うべき

 アフリカ諸国もより大きな責任を負うべきだ。周辺各国軍の派遣は遅れていたが、チャド、ナイジェリア、ニジェール各軍がようやく現地入りした。他の諸国も即座に参加できるような体制が必要だ。またマリ軍事政権も、自治権問題で対立している遊牧民のトゥアレグ人との話し合いに応じ、協力を求めることが必要だ。彼らはイスラム過激派を拠点から追い出す方法にたけているだろう。

 フランスはマリ政府の支援要請に応え、勇気ある一歩を踏み出した。この介入は、サハラ砂漠のイスラム過激派がもたらす脅威を食い止める有効な手段となり得るが、実現のためには喫緊の国際社会からの支援が必要とされる。

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