第3次産業なら成長できるのではないか?
ここ数日頭を悩ましている問題がある。それは、日本全体の頭痛のもとでもあるんじゃないかと思い、この頭で必死こいて解決策を考えていた。そのきっかけとなったことと、そこからどういう展開で表記の「第3次産業なら成長できる」という結論に至ったのか、備忘録的に書いておくことにした。
まず、きっかけとなったのは、水野和夫・埼玉大学大学院客員教授のインタビュー記事「デフレからの脱却は無理なのです」(参照)だった。この記事を読み進める中で、お説がごもっともと思えてきて、今自分が置かれている状況に照らすと正にお先真っ暗になってしまった。以下がその部分。
日米欧ともに成長ができなくなったからバブルに依存し、いずれも崩壊したのです。バブル崩壊の過程でデフレも起きました。私には成長戦略でバブルの後遺症から脱却しようというのは堂々巡りのように思えます。
国内を見ても、身の回りにはモノがあふれています。乗用車の普及率は80%を超え、カラーテレビはほぼ100%です。財よりもサービスが伸びると言われますが、サービスは在庫を持てないし、消費量は時間に比例します。1日が24時間と決まっている以上、サービスを受け入れる能力には限りがあります。先進国は財もサービスも基本的には十分満たされているのです。
個人だけでなく、国全体の資本ストックも過剰です。既に過剰なのに、まだ新幹線や第2東名高速を作ると言っている。資本ストックの減価償却にどんどんお金を使うというのが今起きていることです。
物が溢れて生活は豊かである。豊か過ぎるくらいなので、もうモノ造り日本の時代じゃないというわけ。これは実感からも理解できることで、だから思考がおかしなスパイラルにハマったのかもしれない。
諏訪に住んでいる私の目に日頃映っているのは、大会社のリストラやその下請けや孫請け会社の倒産。こういった製造に携わる会社に材料となる部品や原料を売っていた商社の倒産。そして、失業した人々だ。この状態がもう何年も続いている。街に活気が無くなり、駅前商店街はシャッターを閉めている店も多く、何よりも、戦後から創業していた唯一の百貨店が姿を消したてから何年か経つ。この街が息づいているのは、東京や関西のちょうど真ん中に当たる地理的な有利性に、温泉町であることや、信州の景観を求める観光客がいるからではないだろうか。
以上のような主観から、水野氏の話に納得できた。が、これで終わるのでは困る。何とか打開策ないものか?日本が生き延びる道はないものかと頭を悩ました。そして、水野氏のインタビュー記事の後半部分で、物があふれる日本で成長しないと豊かになれないとはどういうことか?という問いかけへの答えが二つあると。これも前段のダメ押しのようだ。
2つ考えられます。もし日本が今でも貧しいとするならば、1つの解は近代システムが間違っているということです。ありとあらゆるものを増やしても皆が豊かになれないというのはおかしいですから。
2つ目の答えは、成長の次の概念をどう提示するかです。日本は明治維新で近代システムを取り入れて、わずか140年たらずで欧米が400年くらいかけて到達した水準に既に達してしまったということです。これまで「近代システム=成長」ということでやってきましたが、必ずしも近代システムは普遍的なものではありません。変えていかないといけないのです。
氏の考えでは、「ゼロ成長」が望ましいと結んでいる。人が必要としないのだから成長はしなくていいという考え方。そういうことなんだと一度は飲み込めた。確かに、必要以上に物を作れば余るし、目先を変えても飽きられる。画期的な発明でもない限り、製造業はもう限界なのだと納得すべきなのかもしれない。
では、どんなことをして日本人は生きていくのだろうか?本当に仕事はなくなってしまうのだろうか?失業者は本当に溢れかえっているのだろうか? この疑問を払しょくするために色々探した結果、次のようなグラフを見てみた。出典は、社会実情データ図鑑(参照) <
2011年に更新されているが、データ内容はやや古いかもしれない。産業別に見ると第3次産業では就業者数は増えている。日本全体での相対数はどうかと見るとIMF - World Economic Outlook Databases (2012年10月版)就業数はあまり減っていない事がわかる。
個人的な実感から失業者は多いとみなしていたが、そうではなく、第3次産業に雇用を増やすことがこれからの日本のスタイルではないかという点が浮上してきた。これまでは、第2次産業の生産性が低いから儲けが出ないと考えられてきたため、ここで質の向上をめざして合理化を計ってきたが、その結果、所得はある程度確保できても新たな雇用を生み出すことはできなかった。むしろ、リストラの必要性が出てきて失業者を生み出してしまった。
ここで次の問題。第3次産業を増やせばいいという暫定的な結論ではあるが、この結論を元に、どうしたら雇用を増やせるだろうか?第3次産業とは、小売業や運送業や飲食・宿泊や教育・介護・医療など、形に残らないもので、主に人が中心になる仕事のことだ。つまり、消費を拡大することだ。結局は、経済成長のネックとなっているのは、消費の拡大ではないかな。
日本の産業構造が変化していることにも気が付かなかったのは遺憾だが、それにともなって雇用はシフトしながら失業者は吸収されていくという現象につながるのではないだろうか。日本のGDP(国民総生産)にもそれが少し現れてきているようにも思える世界銀行の最新データがある。
さて、ここで次の問題。消費の拡大をすればいいことがわかった所で、購買意欲が沸かない。だって、給料(時給も含めて)は上がらないし先き行きの不安もあって食費も削っている状態だもん!
これは個人の努力でどうこうできる問題とは違う。これはもう、減税しかないだろう。違う?
水野先生がいう「豊かさ」かどうかは分からないが、少なくとも国民は働いて富を得る。働いたら働いた分を消費に向けるではないか。日本経済の停滞は、低所得が物の流動性を詰まらせ、ボトルネックになっていると思う。だが、企業としては業績が上がらなければ昇給できない。ここに動きが出て来るとしたら、「デフレ脱却する」「景気回復する」と、政府・日銀の言葉の信憑性だが、イマイチどうなるかわからないとても微妙なところ。ついては、「大型減税」が実行されたら?少なくとも私は将来に希望が持てるようになるが、どうだろうか。
追記: 書き終わってからちょっと気になった事
産業構造にメスを入れるというのでもないが、第3次産業を成長させる実効性について、減税は一つの手段であって、構造がこれによって変わるということでもない。では、働く人口はどこで増えるのだろうか?この点が抜けていたように思う。
少子化と高齢化による退職が重なって労働可能な人口は減る一方だというのに、上のグラフでは労働者総数は増えている。それは、どう考えても女性労働者としか思えない。しかもそれは、非正規雇用によるのが大半だと思う。女性の非正規雇用体系をぜひとも正規雇用に格上げしないと現在の日本社会では、安定雇用につながらないのではないか?と、ここまで考えて以前読んだ「ようやく来るか、不機嫌な時代(参照)」のこの部分を思い出した。
どうにもこうにも「家計を維持するには妻が働かないといけない」という状況があれば、変化するだろう。そうなれば、つまり、日本の最終兵器、女性がまた出てくるわけである。「また」というのは、日本の戦時下で実は女性の労働力がマックスになっていた。それが戦争を長引かせてしまったと言えないでもないようだが。
ここだけ引用するのはもったいないと思いつつ始め、この部分に笑ってしまったのだ。戦後の日本は総じて女性が強くなったというフレーズが重なってしまい、それが妙に印象に残っていたのだが、これは事実で実効性もある話だ。
雇用形態の質を改善すれば女性が働くことでかなりGDPを押し上げるのではないだろうか。
そして、もうひとつ気になるのは、正規労働者を増やした企業に補助金を出すという話があること。これは愚策だと思う。理由は、若者を新規雇用してもその分高齢者を解雇するのが企業が普通に行うことだからだ。
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