2013-01-09

読書とは-cakesの「新しい「古典」を読む」に始まった古い自分との出会い

今更「読書とは」なんて。しかも、こういうことは、普通は秋に書くだろうが。と、昨年書きそびれていた事がちょっと恥ずかしく思える。なんか青臭いし。長年読書に親しんできた私が、この年になって「読書とは」と、改めて書こうなんて・・・まあ、でもしみじみ感じていることだからこそ書き留めておこという気になった。

cakes(参照)という、Web上の雑誌とでも言ったらいいのか、ネット上でもリアルでもいろいろ書いている人達の書物に出会う事ができるこのサイト、気に入っている。ここで私が贔屓にしているのは、「新しい「古典」」を読む(参照)」で、ここで出会う「古典」は、長年眠っていた私の細胞をリフレッシュしてくれる、ちょっと面白い体験ができるので大好き。(ご本人の紹介はこちら➡

ここで取り上げている「古典」とは、学校で苦労したあの古文や漢文のような古典ではない。私が10代から20代、30代で読んだ書物がその大半で、それらの書物を再読された筆者が「古典」として評されている。既に読んだ書物を後で振り返って再読するのは、よっぽど気がかりなことがあるか、著者のファンで、その筆致がたまらなく好きだからというような理由でもない限りあまり再読はしない。が、cakesが昨年9月に始まった当時からここで出会う「古典」から、再読の価値のある書物であるという言い方よりも、私の読書力とは「無」に近いものだということを思い知らされる。そして、再読してみると、なんとも新鮮な読み心地が味わえるのである。この感覚はとても伝え難いものがあって、それは何かが邪魔しているからだろうか?そう深く自分に問うても湧き上がるものがない。以前読んでから長い年月が経ってしまったからとしか言いようがない。ただ、取り上げている書籍やマンガの著者の年齢が私と同世代であったり、最近取り上げたばかりの「思い出トランプ」の著者である向田邦子などは、今の私の年齢に近い頃書いた物であったりする。つまり、私自身の人生の振り返りと、これからの人生を模索するような異次元に出会えるわくわく感がたまらなく楽しい。いや、とても辛辣でもある。

かつて自分で読んだ書籍が他者の感性で読み込まれたところから表出され、書評となって私の感性に届いたものを一言で言うと、人の生き方そのものに触れているという重たいものでもある。大なり小なり自分の恥部として隠して生きてきたことになんら恥じることなく、ありのままの自分でいいんじゃないか?それに良し悪しをつけて高いところから下を見下ろして、それが何だというのか?ひどくもったいない生き方をしてきたように、後悔するような気持ちにもなった。

昨日紹介の「無影燈」(渡辺淳一)の書評は、強烈だった。昔、読んだその時にも深い感銘を受けた小説だったが、次の部分で、私は再度この本に触れなければ自分に向き合えないと感じた。

「汚辱」が浮かび上がらせる人間の生

この物語は、純愛の物語としても、社会派的に医療批判の物語としてもよい。そのように脚色された二次作品や正義の言説となってもよいだろう。しかし、物語を読み進めながら読者の心に沸き立つのは、そこではない。汚辱への意志だ。読後の感動を冷まし、感興の点をいくつか冷ややかに映し出してみるとよい。私たちがこの作品にのめり込んだのは、汚辱への意志だとわかるはずだ。

「汚辱」。ドロドロした物を剥ぎとって素っ裸になるということ。そういう生き方をするということ。このように評する事ができるのは、そういう生き方をしているという意味があることに気づく。

無影燈」の本文から、

医者は本来、殺し屋なのだ。人間誰しも避けられない死をいかに納得させるか、その手伝いをする職業である。われわれは患者を助けてはいない、助かったのはその人達に助かる力があってからだ。医者はその生命力に手を貸しただけだ。

臨床医としての渡辺だからこそ出てくる言葉でもあると思うが、汚辱によって、人としての医者が医者として向きあうと、こういう言葉に書き換えられることを知った。そして、患者は一瞬放り出され、医者との関係が絶たれる。そして、人がどう生きるかという問として投げかけだけが残る。とても深い意味を持っている。この先、いつかきっとこれを自分に問う日が訪れるだろうと覚悟した。

「古典」とは?こうして「古典」に触れることは、言い換えると、これから生きていく私に新たな課題を呈してくれるということだろうと思う。だらっとした日常の思考に鋭い視点が入って来ることは、生きるための刺激となりエネルギーでもある。そういうものを授かっていると思えることがまた、嬉しい。

これからどんな掘り出し物が出てくるのか、読書を通して私の人生にもっと厚みが出て来るような気がしている。

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