2012-12-03

「ちょっと早めの老い支度(岸本葉子)」を読み終えて

51MqueSwQuL._SL210_先月、「ちょっと早めの老い支度(岸本葉子)」の紹介記事(参照)を読んで、ああ、これは私が読むべき本だわと、そう思って早速、取り寄せて読んでみた。岸本さんは、私の年も近いが、彼女は独身で、この先結婚する気配も子どもを産み育てる観測もないというところから切り出している。そのへんが私と違う点だが、いつからどのように老いを意識し、「老い支度」とはそもそも何かということを考えさせられた。読み終えて、彼女が最初に書き始めているクローゼットから私も始めようかなと、やる気になったのは確か。老い支度にやる気が湧いたというのも変なものだが、普通の片付けものではなく、人生の見なおしついでの「老い支度」だ。本書からちょっと離れて、自分の事を考えてみた。

まずは、身近なところからとクローゼットだ。が、行って見るまでもなく、頭の中に物に溢れている我が家のクローゼットが浮かんだ。箪笥なら5~6本分の大容量ウオークinタイプは整理しやすく、大量に収納できるからと電動式を玄関正面にどーんと据えたのが、まず、間違えだった感。このクローゼットとの付き合いは、かれこれ21年目になる。新築当時は、広々としたスペースにうっとりとし、この素敵なクローゼットを使いこなせば、いつも衣類や生活小物が整理整頓されて使いやすいぞ!と、心を弾ませたのを今でも忘れない。そして、買い物をする度に「無駄に物は増やさないぞ。」と心に何度も言い聞かせては、それと同じくらいの数の買うための言い訳を作って買い足してきた。そういう私という現実。まずは、この私と向き合うことから始めないと。クローゼットの整理にとりかかることも儘ならないと、うんざり感が澱んだ。

岸本さんは、30才になろうとする頃、老後が怖いと感じたそうだ。その怖さは、結婚しない自分の生活や生き様に、暮らしの安定を求める心からの逆説のようなことだろうか。幸いと言うべきか、私は、婚期としては当時は遅い方だったかもしれない29才の誕生日直後に結婚した。なので、結婚前は老後の心配と言うよりは、人生設計がはっきりしていなかったのを思い出した。その私が突然のように結婚してしまった。老後のことなど何も考えていなかったように記憶している。その後、すぐに思ったのは、子どもを産み育てるなら何人兄弟にするかから始まり、だったら、何年ごとに生むのが良いか?など、そこから老後を想像して逆算していたように思う。確たるはっきりしたものではなかったが、自分の置かれた環境によって、女というのはとにかく安定を求める生き物じゃないかと思う。自分の周囲を「安定、安心」という基準に整える事が日々を送る糧でもあるかもしれない。その思考回路も相まったのか、物を持つことと処分することは表裏一体で、安心感の物差しで全て測った上で判断するような仕様になっていると思う。

まだ、何も処分していないというのにクローゼットを老い支度として捉えただけでも色々な事を考え始めている自分がいる。持ち物を処分して身軽になろうとすることは、私にとっては、安心のためであるとはっきりした。

4194BeD1XvL._SL210_そういえば、書物についても、処分する決断ができずに実家を物置代わりにしている後ろめたさも浮上してきた。嗚呼、なんてこった。私は、老後の先は、いつか死ぬんだということに向き合わないようにしてきたんだと、改めて言い聞かせた。取りあえず自分の見えるところからは片付けたものの、いつかあそこに仕舞った物をどうするか決めなくてはならないのだと、この件もはっきりした。因みに、ぼんやりとだが、書物が残らないようにできうる限り電子書籍を買いたいと思っている。先日発売になったKindleシリーズのKindlePowerWhite 3Gを悩みに悩んで予約注文した。これも、物を増やさいないための買い物だ!えい!とばかりに・・・。

まだ、今はこの段階だが、岸本さんのスタートとは違う私には、もっと老い支度の項目があることにも気づいた。それは、今住んでいる家のことだ。

新築当時に描いていたのは、長男がお嫁さんをもらったら一緒に住むということ。でも、そこを配慮して設計したことは、今となってはどうでも良くなってきている。

子どもたちが都会に住むようになって戻らなくなり、自分一人でここに住んで老衰したら、この家も空き家になる。近所にもたくさん増え始めたが、老夫婦のどちらか片方が先にあの世へ行くと、残った一人がそのまま住むとしても、老衰して一人で置いておけなくなると子どもたちがいずれ引取り、家は空き家となる。そうなると、家は売却される運命なのか、子どもたちの誰かがいつか住むようになるのか。そうこう言っている内に、明日、突然死するかもしれない。どう転んでもいいように、家に無駄なものを置いておかないようにしないといけないではないのかな。そうなると、整理しなくてはならないものがたくさん出てくる。ああ、岸本さんも書いていたわ。片付けは「部分」からだった。

いやホント。書いてある通り。

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コメント

岸本葉子さんってちょっと孤独な?中年男に静かな人気あるみたいです。大げさに言うと闇をほのかに照らしてくれるような気がします。最近、ブックオフで数万円分の本処分しました。シンプルに生きたいし、シンプルに死にたいですが、なかなか難しいです。

投稿: tekukami | 2012-12-03 08:03

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