2012-04-22

ますます見えにくくなるミャンマー

昨日、野田佳彦首相は、ミャンマーのテイン・セイン大統領を迎えて会談した。各紙が一斉にその様子を伝えている。その結果、どうやら、1987年以降凍結していた円借款を25年ぶりに再開するそうだ。債権額は5000億円であるが、その内の3000億円は、返済を免除。また、資源・エネルギー開発協力やヤンゴン郊外の経済特区ティワラ開発計画などの覚え書きに署名したようだ(朝日)。 いきなりこのような大きな約束事を決めてしまうのは、野田さんにしては早いなぁと不思議な思いで記事を読むと、「覚え書き」とある。どこかで約束事として成立していたらしい。いつ?誰が?大した問題でもないが、気になって調べてみた。

なるほど、1月に枝野さんが港湾開発の約束事を覚え書きにしたということ?(参照)。1月に枝野さんがミャンマーに行ったことなんてニュースになったかな?というほどクルーズアップされない話題であったのかもしれないが、着実に先行していたわけだ。

前段の日経ビジネス記事もそうだが、ミャンマーについては、ものすごい騒ぎ立てようだ。それもそのはずというか、これは昨年末、いろいろな制裁を課してきたアメリカのクリントン国務長官が突然ミャンマーを訪れたあたりからで、メディアの報じ方も、がらっと手のひらを返すように変わった。

ミャンマーは、軍事政権と言うだけで批判の的となり、インフラなどまるで無いに等しいような貧乏国というのがそれまでメディアが報じていた印象だ。その中で、唯一まともな組織としての軍というイメージが強い。私は、軍政がダメとは、ミャンマーに関してはあまり思っていなかった。上手くバランスをとって成功していたかに見えていた。軍人は政党に属していないため、政党内の拘束も発生しない。全員がそれぞれ個人の意志で議決するため、それだけでもどちらかと言うと、我が方の政治よりもまともじゃない?

アウンサンスーチー女史が政界に復活したということは、彼女の言う民主化の渦は、次第に目に見えては来ると思う。私がよく理解できないのは、ミャンマーの人達にとっての民主化とは、これまでの軍事政権化での生活が、どう変化していくのかという点だ。これがすっきり見えてこない。アウンサンスーチーさんは正しく、軍政権は間違っていると殆どのメディアが報じてきたミャンマーを、アメリカを始め国際社会は、政治、経済、金融面などでおもいっきり締め上げてきた。あの国を孤立させてきた。だが、ASEANだけは、民主化を支援する意味合いでミャンマーを加盟させた。その後、バーツの暴落でアジアに危機をもたらしたこともあった。とにかく、何故ミャンマーだけがこうなるの?と、気の毒なことが続いた。

最近、アウンサンスーチーさんのにこやかな顔がTVのニュースに現れることが多くなった。彼女も以前とは変化してきていると感じている。「鎖国」を解くまでは、哀れな拘束の身をというイメージだった彼女もこれからは、ミャンマーに民主化を齎すための顔になる必要がある。彼女の戦略は、欧米や特に日本のメディアに積極的に働きかけて国際世論を味方につけ、現政府の批判をすること。イギリスが生育の基盤でもある彼女(参照)には、イギリスやアメリカの支援もあり、今後のその路線からそれるような情報は報道されることもないだろうと思う。

また、The Last Piece of Sweet Cake”と言われているミャンマーと日本のこの度の合意は、とてもおいしい話となるはず。かつての中国やベトナム以上に投資&リターンが期待できる国という期待感もあり、しばらくはミャンマーにスポットが当たるのだろう。

民主化を目指す国を快く歓待する各国の姿は、何か、餌を啄む鶏のようでもある。

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コメント

ミャンマー(ビルマ)というよりは、アウンサンスーチーという人に興味をもっていました。6月に当時自宅監禁のために参加できなかったノーベル平和賞を受けにオスロを訪問するようですが、当然イギリスにも寄って(こちらが本命?)今後の方向付けするのでしょうね。ただ、ノーベル平和賞をもらった帰国子女的な彼女、軍部とどう折り合いをつけるのでしょうか、気になります。善い人という先入観を捨てて、眺めて見たいです。

投稿: tekukami | 2012-04-22 15:49

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