2012-02-09

ボルシチ -「亡命ロシア料理(ピョートル・ワイリ/アレクサンドル・ゲニス)」より

亡命ロシア料理  もう四年も前に紹介記事(参照)を読んで買った本、「亡命ロシア料理(ピョートル・ワイリ/アレクサンドル・ゲニス)」(参照)は何度読んでも面白い一冊で、先日も、ロシアの食卓では欠かせないというスープ料理を参考にしたくてページを開いた途端、引きこまれて再読してしまった。こんなことはよくあることで、繰り返している内に内容のことは殆ど覚えてしまった。料理の話だけではなく、著者の知性の高さを思わせるような話題の豊富さや、物事の深淵に触れているにも関わらず、サラっとあくまでも軽くリズミカルに話題が移っていくのが魅力である。何とも一言では言い尽くせない。料理のレシピが本文にすっかり溶けこんでしまって、どこで止めてレシピを盗もうか迷ってしまう嫌いもある。
 さて、探しもののレシピだが、日本国民的料理でもある「ボルシチ」にした。と書いてみて、そうでもないかなあ。外食をしないので私がよく分かっていないかもしれないが、本文のあとがきにも日本では、ボルシチとピロシキ、ウォッカがロシアの代表料理とまでは書いてある。本書のカバーには、ロシア料理の写真が4枚あり、その内の一枚のピンク色のスープがボルシチだ。本書では、これも貴重だと思われる、料理作業中のモノクロ写真とレシピが掲載されている。が、この部分だけみてボルシチを作るなかれ!理由は本文を読めば分かることだが、肉抜きなのである。そんなボルシチあり?と、疑ってネットのレシピを探してみても、肉抜きというのはヒットしなかった。その代わりと言っては何だが、レシピは、ブイヨンには惜しみなく野菜を使えと言い、たっぷり時間をかけている。    
 ここで曰く、

古典的ユダヤ風ブイヨンのでき上がり。風にも効くし、大して手間をかけずに素朴なグルメの喜びを味わえる。ほんのり甘いラスクを添えれば言うことなし。正に、何世代ものユダヤ人が、世界中に散らばりながらも、このようなブイヨンを飲んで育ったのだ。

 筆者の生い立ちや本書のタイトルに、「亡命ロシア」とついている意味も興味深い。ロシアで生まれ育ったユダヤ系ロシア人である彼らが、アメリカに「亡命」ではなく「移住」した経緯から、自分たちの料理を懐かしんで作っていたようだ。この辺の感性は私の心を大いに擽ってくれる。現代は、料理は「速くて、安くて、簡単」な上に美味しい料理が人気のようだが、それとは別に、料理には郷愁もあり、懐かしい記憶と一緒にその頃の時代の香りがしてくるものだ。そして、時間や手間もたっぷりかかるが、私もこの年になって、和食に惚れ惚れしている。作っていても食べても、なんだかほっとする。昔ながらの手法による和食と似ていると思うのは、そこだ。   
 おっと、話をボルシチに戻して、今回、私が作ったボルシチには牛すじが入っている。これはブイヨンを取った残りかす。これが食卓にメインとして別料理で上がるというのが一石二鳥料理の裏技でもある。そうか、古いユダヤの料理もそうだったのかと思うと嬉しくなった。貧しさの中の贅沢というか、私の作る出しがらしの昆布と鰹節のふりかけとそっくりじゃないかな。    
 牛すじというのは、牛を解体する時に取り除かれる筋の部分で、この筋は肉と骨のジョイント部分や、内蔵を腹内で固定させるための重要な役割を果たしている。軟骨のような硬い部分もあるが、成分としての魅力はコラーゲンだろうか。ゼラチン質のため、煮凝りができる。こういった部位だからか、脂や赤身の肉も付随していてアクが沢山出る。必ず下茹で処理をして一度茹でこぼし、筋を水で洗い流して再度茹でる。この時の茹で汁がさっぱりして美味しいが、ここに本書で紹介しているブイヨンレシピ(野菜をふんだんに使用する)を展開してみた。    
 まず、下茹でで出るアクを掬うこと30分を含めて、水から茹で始めて約一時間で茹でこぼし、肉を適当な大きさに切ってから水から再び茹で始める。ここで、人参とセロリ、パセリの茎、玉ねぎ、ブラックペッパーホール、のブイヨンを加えて強火で茹で始める。これだけのことだが、美味しいブイヨンを作るコツは二つだけだと本書でも言及されている。

第一に、ごくごく弱火で煮ること。第二に、根菜をけちらないこと。

いや、これだけ?いや、ちょっと付け足してあるが、かなり重要ではないかと思われる。   
使用する鶏肉はオンドリの方が脂がたくさん出るからだと書いてある。つまり、脂が乗っていて美味しいと言う意味だろう。また、沸騰したらこまめにアクを掬いとること。出来れば鍋の淵についたのもキッチンペーパーなどで拭きとると良いとある。濁りのない澄んだ綺麗なスープとはそういうものである(`・ω・´)ゞビシッ!! で、今回は、鶏肉を牛すじに変更したというわけ。また、牛すじは柔らかくなるまで茹で上げ、たっぷり時間をかけた。理由は、ボルシチの色に染まりやすくするためで、他に理由はない。また、その効果の程があったか?と聞かれると、そうかもしれないと言う程度。どちらにしても、柔らかくなるまで煮こむのは同じ事だ。下準備の時間が、午前中になかったのでスロークッカーは使用しなかったが、二度目の「茹で」を任せれば6時間で「弱」の設定で良いと思う。

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 本書のボルシチとは若干材料の点で違うが、行程はほぼ忠実に作った。野菜の旨味をどのようにこのブイヨンとコラボさせるのか、それがとても重要な部分だと思った。    
行程は、大きく分けて4行程ある。

  まず、①、前段に挙げたような方法でブイヨンを取る。 

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②、ボルシチの色目になる野菜炒めを作る。

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③、ブイヨンにキャベツとジャガイモを加えたスープ下地を煮立てる。

④、③に②を加えて煮込む。

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 とあるが、ここで本書の写真にこんな注訳があるのを忘れずに付記しておきたい。 

注=スープストックはあらゆる料理に使用するが、採り方も多様で一口にレシピをというわけに行かない。家庭では市販の固形もしくは顆粒のブイヨンで事は足れりとしたい。

 さあ、この選択はご自由にということで、私のレシピは以下に添えておくとしましょう。   
 

材料(6リットル鍋    

  • 牛すじ・・二度茹で後300g
  • 下茹で後のビーツ(赤蕪)・・200g
  • 人参・・150g
  • 玉ねぎ・・中2個
  • ジャガイモ・・300g
  • カットトマト・・200g
  • にんにく・・3片
  • 塩・・大さじ1
  • 胡椒・・適宜
  • レモン・・半個
  • ブイヨン・・4リットル
  • サワークリーム・・一人分大さじ1(ない場合は、キッチンペーパーを小ザルに敷いてヨーグルトをのせ、一晩冷蔵庫で水抜きする。
  • バター・・大さじ1

下ごしらえ         
 牛すじ、にんじん、玉ねぎ、ビーツはそれぞれ細長く切りそろえ、ジャガイモは皮を剥いて1.5cmのサイコロに切る。キャベツは、筋を切り取りってジャガイモと同じ大きさに切り、葉は、重ねて荒目の千切りにし、にんにくは包丁で潰しておく。 

   
作り方      

  1. 大きなフライパンを中火にかけ、バターを溶かして玉ねぎ、にんじん、カットトマト、ビーツの順に炒め、しんなりしたところへ塩と胡椒をしてレモン汁とブイヨン1カップを加えるて赤い汁を作る。     大鍋に残りのブイヨンを入れてジャガイモとキャベツ、牛すじを加えて強火で煮る。注):カットトマトの汁気がなくなるまで炒めてトマトのカドを取る。    
  2.    
  3. 煮立ってきたらにんにくを加え、20分ほど煮る。注):本文では4~5時間とあるがキャベツがクタクタに煮上がったらよしとする。    
  4.    
  5. 3に1を加えて味を整え、温めたスープ皿についで中央にサワークリームを乗せてパセリを振る♪

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コメント

こういう出汁系を作るのは苦手です。
その手合いのスープだとかは、味や技術だけでなく、慈愛のエッセンスが必要な気がして縄張り外だと思っていました。
なので経験が無くて、読んでいても簡単なのか難しいのかピンと来ません。

SOUP STOCK TOKYOの東京ボルシチで我慢しましょう。

投稿: ふ゛り | 2012-02-09 14:52

ぶりさん、(๑•́ ₃ •̀๑)。お口はこえていらっしゃるでしょうから、きっと作っても美味しいのができます。コツは太線部分だけです。「慈愛のエッセンス。」は年の功でもあるし、物理的にはあまり関係ないけど、ぶりさんが作ってくれたらそれだけで嬉しいと喜ぶ人がいるのがポイントかな。出来不出来のジャッジは・・・(^。^)y-.。o○

投稿: godmother | 2012-02-09 15:11

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