2011-12-08

大根のつみれ鍋:霜に当たった大根の旨さったらもう

 今年の冬は、信州としてはかなり暖かな冬だと感じている。とは言え、霜が降りる日も何度かあり、先日はあられが降ったり、12月初旬だというのに雪も降るようなおかしな陽気でもあった。今年はこんなことを繰り返してばかりいる。が、畑の野菜達にとっては好都合のようだ。その一つとして、今日は、大根に起こった異変から話を始めたいと思う。
 この近くの畑では、お盆を過ぎたら一斉に冬野菜の種まきを始めるが、お盆を過ぎた頃に暑い日が続き、私はこの時期の種まきをサボった。これは、ヘタレな家庭菜園の暢気さである。そして、9月の初旬、涼しくなってきた頃合いを見て大根や赤かぶ、小松菜、ター菜、ほうれん草の種を蒔き始めた。この光景は、畑の先輩である近くのお婆様達にはおかしな行動に見えたのだろう、と言うよりも異様に見えたのだと思う。何をしているのか聞かれ、答えると矢継ぎ早に「おめさん、今頃蒔いたって大根なんか寒くて育たんよ。葉っぱを間引いて食べるだけだえ」と、忠告を受けた。まあ、それが順当な考え方ではあるが、この時の私には、一雨降ればすぐに芽が出ると確信めいたものがあった。ほのかな期待ではあったが、もしかしたら気候の変動でも起きて暖かい冬となるのではないか、そんな幸せな冬を待っていた。

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 というわけで、12月だというのに、青々とした大根の葉が私の畑だけに生い茂っている。あはは。嬉しくてたまらない。しかも、鹿被害を避けるためにネットまで張り巡らしたしなあ。あはは、手の込んだお仕事、やったゼ。 そして、霜が降り、日中のぽかぽか陽気の繰り返しで、葉物はますます甘みを増している。いや、ある意味鍛えられている。信じられないくらいの柔らかで甘い。早朝に引き抜いたばかりの大根を畑にまるで付属している小川の水で洗おうとすると、茎の表面の皮が弾けて剥け、中の筋が露出する。これはおそらく、小川の水の暖かさを感じた大根葉達の、霜に耐えてきた緊張がほぐれたからだろう。

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 これが甘さの源であるのだと分かったのは、野沢菜漬けの漬かり始めだけに味わえる太い茎のぬめりを連想したからだった。茎の内側はややぬめりがあり、そして何とも言えない甘さを蓄えているあれだ。その理由は、野沢菜の収穫まえにはわざわざ霜を当てることも聞いて知っている。だから、大根葉とは言え、何倍も得をしたような気分になった。そして、この大根のお蔭で今年は、何度もつみれ鍋でこの幸せを感じている。おそらく、大根の産地で有名な千葉産なども、葉付きなら寒さに当って鍛えられているはずだと思う。ラッキーならきっとこんな大根に誰でもいつかめぐり会えるのではないだろうか。そう思ったら、この鍋のレシピをちょっとここに置いておきたくなった。

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 このつみれ鍋は至って簡単。で、ポイントは、メインであるこの葉っぱの煮方にある。
 大根場を3cmほどにぶつ切りしたものを出汁を張った土鍋で10分ほど、茎の色が黄金色に透き通るまで煮込むことだ。畑から引き抜いてきたばかりの大根であるため、火の通りは早いが、じっくり時間をかけてもこの程度で充分である。次に、大根をピーラーで剥きながら好きなだけ鍋に落とし、続けて豆腐やつみれを落とすだけである。味付けは、塩と香りづけの醤油で調味する。手間をかけると言えば、しいて言えば、つみれがゆるふわになっている事だろうか。秘訣は、大和芋をすり下ろして若鶏のひき肉に混ぜ合わせる。これだけである。好みで、豚のひき肉だっていいと思う。大和芋をつなぎに使えば結果は同じである。そして、全てのうまみをしっかり吸い込んだ春雨が鍋の底の方で待っている。鱈腹食べてもちっとももたれないのは当たり前だ。ほとんど野菜だからである。

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 そして、最後の極めつけは、残しておいた出汁汁にご飯を加えたおじやだ。ここまでくれば鍋のフルコースとも言えるが、この手前で大概満腹になるため、翌朝の朝ごはん代わりに食べることが多い。これが寒い朝の体を芯から温めてくれる。
 息子が帰省し、昨夜はまたこの鍋を囲んで話がはずんだ。

材料(3~4人分)

  • 大根・・小1本
  • 大根葉
  • 中国緑豆春雨・・80g
  • 木綿豆腐・・1/2丁
  • 昆布と鰹の出汁・・2リットル レシピ☞
  • 塩・・こさじ2
  • 醤油・・大さじ1

つみれ

  • 若鶏のひき肉(または胸肉)・・250g
  • 大和芋(または長いもか里芋)のすり下ろし・・80g
  • 塩・・小さじ1
  • 葱のみじん切り・・10cm

作り方

  1. 昆布と鰹の出汁取る。
  2. 小ボールで春雨に熱湯を注いで蓋をし、10分ほど置いて戻す。
  3. 土鍋に3cmにぶつ切りした大根葉と1の出汁と一緒にひ、蓋をして茎が透き通るまで10分ほど中火で煮込む。
  4. その間に、鶏肉をボールで粘りが出るまでよく練り、すり下ろした大和芋を少しずつ加えながら混ぜ込んで塩とみじん切りの葱を混ぜ合わせる。
  5. 大根をピーラーで剥きながら3の土鍋に落としてゆく。
  6. 2の春雨の水けを切り、豆腐を一口大に切って加える。
  7. 塩と醤油で味を調え、最後に二本のスプーンを使って丸くしながら鍋に落とす。
  8. つみれに火が通ったら出来上がり♬

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