リビア外交を進める中国-アメリカ支配に喘ぐ日本(再編集)
今朝ほどJBPRESSで見かけた記事にこんなのがあった。「カダフィ大佐も中国企業も悪役にあらず、はるか遠いアフリカの価値観」2011.09.20(火) 姫田 小夏(参照)。こんなのと言っては失礼かもしれないが、このフレーズはどこで嗅いだ覚えがあった。そもそも、日本のメディアがリビアのカッダフィー大佐を悪役扱いしないなんてあまり聞かない。そうでしょう?それだけにタイトルが輝いて見えた。
早速、中を読ませてもらって驚いた。長々書きたいのは山々だが、率直に短く書くと、少し前にYoutubeで知ったこちらの方が話している(参照)のとほぼ同じ内容だった。文脈は、カッダッフィー大佐が意外にもリビアでは支持されているというお話で、ビデオの語りとは角度が違うというだけかもしれない。ビデオの印象は強烈で、くっきりとそれが私の記憶に残っていた。理由は聞いてもらえればわかると思う(翻訳は、dandominaさん)。
ビデオでは、「カッダフィーが西側に殺される三つの理由」として述べられていて、正にその点に触れてJBPRESSに寄稿された姫田氏も触れている。ただ、少し気がかりがある。この方の立場はよくわからないが、引用先が明記されていない点だ。つながりをあからさまにしたくない理由でもあるのだろうか、何かを懸念されたのか、それもあって、引用元がどこのメディアのものであるのかを知りたかった。自分の取材によるものであれば明記されてもよさそうだとは思ったが、このような内容を報じる時、業界では袋叩きの目に合わないとも限らない。微妙な内容だけに、慎重に扱われているのだろうか。文脈は、何を目的としてカッダフィーがリビアに君臨していたか、その説明用に引用されている感じを受ける。
以下がその部分だ。
例えば、かつてアフリカの国々は、イギリスやフランスが打ち上げた通信衛星を利用するために毎年5億ドルを支払わされていた。アフリカが当時世界で最も通信料金が高いと言われていたのは、この高額な使用料によるためである。
そうした状況を脱しようと92年から45のアフリカの国が組織を作り、アフリカ資本による通信衛星の打ち上げを計画した。その最大の出資者がカダフィであった。カダフィは3億ドルを出資、さらにアフリカ開発銀行が5000万ドル、西アフリカ開発銀行が2700万ドルを出し、2007年末にこの計画が実現となった。そして、衛星の打ち上げに技術を提供したのが中国とロシアだった。
後にも先にもリビアが支援を求めるのは中国かロシア、北朝鮮くらいのものなので、中国とロシアに白羽の矢が立ったのも理解できる。また、それに答えようとする中国の独自外交がなぜ成り立っているのか。また、日本は、なぜ独自の外交に踏み出さないのか。その疑問を解くために理解する必要があるのは、石油外交は何のために政治家が利用しようとしたかではないだろうか。
日本のイラン外交で考えてみるとわかりやすい。ここで出てくるのが、通産省という天下り先の確保だった。アメリカに反対的な態度を取って「核の傘」から出されるのとどっちが得か天秤に掛けただけの話だった。つまり、カネのかかるイランの油田ドリームへの賭けと比べてどちらが得策であるかという選択肢だった。これは、森前首相時代の頃の話で、日本の高度成長が始まった時期と重なる。結論から言うと、日本が安全保障をアメリカから取り付けることと、この油田の権利放棄を天秤にかけた結果、日米同盟の根幹となる安全保障を取った。これが、及び腰外交でなくて何?ということだ。
時代は前後するが、この油田を手に入れたのは、1967年に亡くなった日本の石油王と言われた山下太郎氏だった。彼が取り付けたイランのアーザーデガーン油田が通産省の天下り先として確立されたのは、森前首相によるもので、当時、トヨタがトーメンの大株主で、ここでカネが動いて油田の採掘権を獲得した。これは、森氏がいまだに政界のドンと言われるゆえんである。この油田開発がやりにくくなった直接の理由は、アメリカによるイランへの制裁措置で、イランの核保有を阻止しようとするアメリカ曰く、世界平和(?)の構築のためだった。日本は、ここでアメリカに同調せざるを得なくなり、トヨタがトヨタぜんとしていられるのもこのお蔭。仮に、トーメンの大株主が日産なら話は日産になっていた、みたいな偶発的なものだった。結果的に、イランは、日本とアメリカに踊らされ、踏み台のようになったとうのが私の認識である。この件に関しては、「極東ブログ「アザデガン物語 必死だったな石油公団」命と石油ドリームとどっちを取るの?」(参照)に詳しく書いたので参照されたい。
話を戻すと、先の記事の続きには、何故IMFとの関係を持たない選択をしたか、カッダフィーがそこにどのように貢献していたかが語られている。
また、IMF(国際通貨基金)とも距離を置くことを望んだカダフィは、自らも出資して「アフリカン・マネタリー・ファンド」を創設しようとしていた。この計画は年内にも始動するはずだったが、カダフィが失脚したため、無期延期に近い状態になってしまった。
こういった経緯から今後、欧米に対しては警戒するリビアかもしれないし、この状態をくみ取って、相手が求めることに応じようとする中国の独自外交が進むともいえるかもしれない。が、姫田氏の文脈は、「「握手するなら中国と」という気持ちは意外にも強いのである。」という結論に落ち着いている。これが現実的になるとちょっと厄介なことになるのではないだろうか。
中国は、リビアに対する国連の議決には反対であったため、フランスやイギリスが中心となってリビア新政権樹立の支援をしていることに加担するような動きなどしないと思う。でも、中国外交は、欧米と日本の認識とは違う路線であるためヘタをすると、何をとってどちらに付くかみたいな話になるかもしれない。また、中国は、他の諸外国を配慮するような余裕も実際はないのではないかという国情でもあると思う。イケイケ中国のようなムードはないが、今の中国をどう見るかが問題。このことを思うとき、かつての日本を思い出す。
日本は、イランを踏み台にして東南アジアに進出したが、その恩恵はきちんとアジアの発展に残したと思う。そして、西側諸国はイランを潰し、すべてを破壊してしまった。中国は今、リビアを中心にアフリカ主要国へ外交の手を伸ばし始めている。これは、かつての日本の姿と同じではないだろうか。その中国を怪訝に思う西側がまたしてもすべてを潰しにかかるのだろうか。
こう見てくると、今の中国の姿に対して反感を抱き、中国叩きをする日本は何故だろうか。自分たちもイランに対して同じであったように、中国とリビアの外交を何故快く受け止めるこことができないのか。
反中国という心理は一体どこから来るのだろうかと考えた時、日本がアメリカに支配されている事実を隠すためなのかと疑ってしまう。
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