2011-08-14

イスラエル住宅高騰問題がパレスチナ和平問題解決を難しくしているとは考えにくい件

 「相変わらず円高ドル安は改善しない」と、テレビから聞こえてきて耳を疑った。え、円高がいくらかでも安くなる見込みがあると思っているのかなこの人、と、瞬間的に反応していた。これは、自分が正しいという思い込みからだ。自分の正しさから見たら、誰の言うことであろうと、間違って聞こえてくる。相手の話を「そうかもしれない」、ときちんと受け止めて考える方が争いも起こりにくいと思う。なかなかそれが身につかず、それが弊害となって生きるのを難くしているように思う。
 これは一つの例だが、日銀がお金を刷って市場に流せば、あるいは円安になるかもしれないじゃないか、という可能性だってあるにはある。「円高が改善」すると思っていないのは私だ。私のこういった考え方は将来の希望や可能性を乏しくしてしまうが、なんとも現実を見てしまうと悲しさや情けなさが先にたってしまう。今まで、こんな考え方をする自分を責めて苦しんでいたが、先日、吉本隆明氏の一言で、思い方が変わった(参照)。
 暗い現実や悲しい出来事への思いを断ち切ることではなく、そういう現実と分けて自分のことを考えるのも必要だと知った。が、これは、言うほど簡単ではない。飼っている犬が雷に怯えて私を頼りに擦り寄ってくることや、今日書いているこのブログが少しでも良く書けるように努力できるといった小さな幸せで、絶望感をやり過ごすだけなんだということがわかった。だから生きているんだと思えるようになった。
 さて、二日前、こんな記事を目にした「東エルサレム入植地に住宅1600戸の建設を承認、イスラエル」(参照)。イスラエルは、パレスチナと係争中である東エルサレムにあえて新たに1600戸の住宅建設を承認し、同地内の二箇所に合計2700戸の住宅の建設計画も承認する見通しだと伝えている。これは、パレスチナに宣戦布告をしたようなもので、非常に挑発的な行為だと思った。記事には、次のようにある。

 ラマトシュロモの住宅建設計画は2010年3月に発表されたが、中東和平協議の地ならしとしてジョゼフ・バイデン(Joseph Biden)米副大統領がイスラエルとパレスチナを歴訪したタイミングでの発表だったため米国が不快感を示し、両国の外交問題に発展した経緯がある。

 今回の発表を受け、パレスチナ側は強く反発。パレスチナが国家承認を得て国際連合(UN)への正式加盟を目指すなか、中東和平協議再開への道を模索する国際社会からの反発も必至だ。

 一方、イスラエル内務省は今回の承認について、あくまで経済的な理由によるものだと説明。国内で数週間前から続く住宅価格・生活費の高騰に対する住民の抗議デモに応える政策で、政治的な意図はないと強調している。(c)AFP/ Sara Hussein

 「あくまで経済的な理由」って、なんだ?住民の抗議デモの話は、私は知らなかった。それが国の政策を動かし、パレスチナとの国家間問題を拗らせてまでも強行するようなことなのかと疑った。
 そもそも、イスラエルとパレスチナ自治政府の中東和平交渉は、イスラエルが入植地への住宅建設を止めないことで頓挫していた。このため、パレスチナ自治政府は直接交渉を見切り、9月の国連総会でパレスチナ国家としての独立が承認されるよう決議案の採択を求める方針で動いている。これに対してイスラエルは、一方的行動は和平のためにならないと反発しているため、今回の建設許可は、パレスチナへの圧力としか思えず、この記事はクリップしただけに終わった。が、昨日、flickrという写真共有サイトで異様な光景を目にした。

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 おびただしいテントが野営をしている光景だった。それも、観光地と言う感じではない。早速調べてみると、先の記事にあった住民の抗議デモだとわかった。人民新聞というあまり聞いたこともないサイトだが、かなり詳しく書いてある(参照)。

7月31日(土)、イスラエル全土で、過去最大15万人規模のデモンストレーションが行われた。

きっかけは、ひとりのユダヤ系イスラエル人の呼びかけだった。その呼びかけは、瞬く間に「テント村」運動として全国に拡大。当初は住宅問題に限った要求だったが、子育て、医療、教育、そして物価抑制、労働条件など、あらゆる社会問題へと拡大した。

「ネタニヤフ退陣」を求める声も日増しに強まり、現在ではイスラエルの政治状況を揺るがすまでに運動は高まっている。パレスティナ問題解決に向けた動きは生まれるのか?イスラエルのテント村運動を追った。(阪口浩一)

 中東や北アフリカ諸国に起きている反政府運動と類似したデモが、ここイスラエルではこんな形で展開されている。なぜか憎めない。子どもも参加して絵本などを読んでもらいながら過ごす風景や、BBQをしながらビールを飲むグループなど、様々なことをしながらテントで生活する事自体がデモであった。それが、イスラエル政府を本当に困らせているのだろうか。

 運動の中心は、中産階級の学生を中心とした若者たちだ。とはいえ、教員、ヒッピー、アナーキスト、環境保護活動家、労働者、医者など、多種多様な人々が参加し、世代を越えた支援が拡大している。最新の「ハーレツ」紙の調査では、テント村運動への支持率は87%に達している。
 当初は寛大なコメントを出していたイスラル政府も、この事態を受けて、方向を転換。7月末にポーランド訪問を予定していたネタニヤフ首相も渡航を中止し、「①今後1年半で5万戸、うち1万戸を学生用として公営住宅を建造する、②学生に交通費を補助する」と公約したが、国民の要求は、もはや収まりはしない。
 「マーリブ」紙の報道によると、7月31日には、イスラエル建国以来最大規模の抗議行動となる15万人が、イスラエル各地の抗議デモに参加した。「アルジャジーラ」英語版のベン・ピーベン氏によると、「ビビは帰れ」(「ビビ」はネタニヤフの通称)の声が、前回23日のデモより拡大し、そこで頻繁に使われたスローガン=「私たちは社会的な正義を要求する」は、「アラブの春」を彷彿させたという。

 流血や破壊のない反政府運動として、これは賢い戦略だと思う。この抗議に対してイスラエル政府がどれだけ歩み寄れるのか、国の経済情勢はどうなっているのかが気になった。それと同時に、パレスチナへの嫌がらせ的な意図も疑っていて、これは、調べてみないとわからないと思った。
 Newsweek8月10日 日本語版で少し触れていた。

 数年前まで、テルアビブの物価は世界的にみればそこそこの水準だった(主要都市の物価ランキングで40位近辺)。だが03年以降、順位は次第に上がり、昨年はある調査で19位に。東京やモスクワよりは安いが、ニューヨークよりも高いという。

 イスラエルでは巨額の安全保障支出のせいで税金が欧米より高いからという説明が一般的だ。なかでも悲惨なのは自動車で、100%の購入税がかかるため新車はアメリカの2倍も高い。
 しかし、国防予算は70年代以降激減し、昨年はGDPの6.3%程度にとどまっている(アメリカは約4.7%、フランスやイギリスは3%未満)。

 記事では、住宅価格などの物価高やその背景にあるされてる税金の高さは、巨額の安全保障支出よるものと言われている一方、ヨルダン川西岸への入植費用、ユダヤ教超正統派への福祉予算の膨張、競合性のない産業形態に原因があるとバルイラン大学の経済学者ダニエル・レビ氏は見ているようだ。つまり、誰に言わせても、政治が悪いということに帰結する。
 一方でユダヤ人入植者の住居建設に迫られ、他方で猛反発するパレスチナとパレスチナの独立に賛成する多くの国との板ばさみ状態になってしまった。このイスラエルという風景は、変わるのだろうかと考えていた。イスラエルを支えるのはアメリカしかない。そのアメリカも、イスラエルを擁護すれば、パレスチナやアラブ諸国を敵に回すはめになる。これでは身動きがとれない厄介な問題だ。イスラエルの経済が安定するためには、歳出の全体像は、補償費が多い国だという印象が強いが、では、このところの急成長はドル安からだろうか。一方では政策に圧力をかけるロビーの存在も大きいと思う。アメリカ大統領選挙で票の取りまとめなど、大きな力を持つと言われているロビーの機嫌を損ねることはオバマ氏の望まないことでもあると思う。
 テントのデモがきっかけだったが、考えれば考えるほど根深く難しい問題が潜んでいると思ったが、イスラエルが自縄自縛という風景とも映る。パレスチナの要求とイスラエルの事情をすり合わせて検討し、双方が歩み寄れば解決できるのではないかという思いも一方にある。

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