2011-08-10

ソマリア支援を難しくしている背景について

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 アフリカ、ソマリアで起こっている干ばつによる飢饉で、6分に一人という割合で子どもが餓死するという状態に陥っている。
 7月21日、国連世界食糧計画(World Food Programme、WFP)と米国際開発局(US Agency for International Development、USAID)は、国連が飢餓宣言をしたソマリアの2地域に支援物資が確実に届くことが確認でき次第支援の開始を行なうことを知ったのが最初だった(AFP)。これがどういうことか説明するまでもないことかもしれないが、安全に確実に支援物資を必要とする人々に届けることが困難な状況とはどういう状況なのだろうか。
 国連が7月20日に飢餓宣言したバクール(Bakool)地方とシェベリ川下流(Lower Shabelle)地方は、イスラム過激派組織アルシャバブ(反政府組織)が実効支配している。2010年初頭、外国の支援団体に対し二年間の活動禁止令を出したため、WFPはソマリアから撤退していた。今月になって、このアルジャバブが深刻な干ばつを伝え、それに苦しむ人への支援を国連に要請してきたため、各支援団体への救援要請が呼びかけられていた。ところが、暫定政府に任命されたばかりの女性・家族問題担当相が21日、アルジャバブに誘拐されるという事件が起きたため、支援の難しさが浮き彫りになった。アルジャバブが約束を守れないうちは支援物資が届くかどうかも懸念されていた。また、アメリカの支援が途絶えていた理由は、別にもある。
 Newsweekが報じることによると、アメリカでテロ組織としての指定を受けているアルジャバブに支援物資が渡ると、法律上ではテロ組織を支援した罪に問われ、訴追される可能性があるからだとしている。また、テロ組織を狙った攻撃についても国連のソマリア人道調整官マーク・ボーデン氏は次のように話している(参照)。

ソマリアに潜伏するアルシャバブやアルカイダの指導者を狙った米軍のミサイル攻撃や暗殺作戦も、救援活動の広がりを妨げる要因だ。「(アルシャバブへの攻撃は)人道支援団体の意図に対する疑念をかき立て、現地へのアクセスに影響を及ぼすかもしれない」と、ボーデンは言う。「過去にも、ミサイル攻撃が人道支援の足を引っ張ることがあった。大きな懸念材料だ」

 USAIDによると、8日までに食料危機による死者の規模が明らかになったのは初めてだとして、90日間に5歳以下の乳幼児2万9000人以上が死亡したとする推計を公表した。また、干ばつはソマリアだけでなく、ケニア、エチオピア、ジブチの地域も含めて、過去60年で最悪の状態だと報じている(参照)。
 国連によると、この地域で食料不足に直面しているのは約1240万人に上り、被害の最も深刻なソマリアについて国連は3日、首都モガディシオなど3地域が新たに飢饉(ききん)に陥ったと判断したとある。これで飢饉は当初のバクール、シェベリ川下流地域と合わせ5カ所に広がったことになる。短期間での広がりから、この干ばつと飢饉が限界を超えつつあることが窺える。
 一方で支援を要請していながら他方では同時に妨害するというアルジャバブ(参照)は一体どういう組織で、何の目的で妨害するのかが謎だったが、ロイターがその理由を報じている(参照)。

 ソマリアは1991年にバーレ大統領が反政府武装闘争で追放されて以来、事実上中央政府が存在しておらず、さらに武装勢力が支援物資の流入が依存社会を生むとして人道支援を妨害してきた。

 「依存社会を生む」。そんなことを言っている場合じゃない。あまりにも惨い映像なので、ブログに張って拡散したいとは思わなかったが、平和ボケしていると言われる日本でもあり、事実を知ることも一理あるという思いから載せることにした。


 カメラを持った男性の前にいる男の子は7歳で、小さい子の方はその妹。兄の身長は90cm以下で、体重は9kgほど。また、ポリオ(小児麻痺)にかかったため、歩く事もできない。
 また、アルジャバブが撤退を始めたからといって油断は禁物で、なおも緊張状態は続いているようだ。4年も雨が降らずに、食料も水もなく無言で死んで行く人々に手が届かないのがなんとももどかしい。
 そして昨日、朗報が舞い込んだ。アメリカ政府は、食糧や水など1億ドル(日本円にして81億円余り)の支援を行うと発表した(参照)。

 アメリカのホワイトハウスは8日、飢きんの影響を受けたソマリアとエチオピア、ケニアに、新たに食糧や水などおよそ1億ドル(日本円にして81億円余り)の支援を行うと発表しました。また、バイデン副大統領のジル夫人を含む政府の代表団が8日、ソマリアから大量の難民が流出しているケニアの難民キャンプに到着しており、ケニア政府とも今後の支援体制について協議することにしています。これまでソマリアでは、中部と南部を支配下に置くイスラム過激派組織「アッシャバーブ」が外国からの援助の妨げとなってきましたが、6日、首都モガディシオから撤退する方針を示しています。これを受けてアメリカ政府としては安全を見極めながら、できるだけ早く必要な地域に支援物資を届けたいとしています。

 一部の専門家に、今回の撤退は自爆攻撃の波が訪れる予兆だと指摘されていた中、武装集団が避難民の並ぶ食料配給場所で発砲事件が案の定起きた。少なくとも7人が死亡し、世界食糧計画(WFP)が緊急援助した食料の一部が略奪されたことをBBCが放送していた。が、その映像と記事はその後見当たらず、心ある記者によって削除されたのかもしれない。

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