2011-08-21

茶会党(ティーパーティー)バッシングによる毎日新聞の奇妙な展開記事について雑感

 Twitterで昨日拾った記事、「米保守革命:第1部・ティーパーティーの実像/2 非妥協で政治が機能不全」(毎日)に些か戸惑った。足元をすくわれて転んだ痛さのようなものをまず感じたが、何度か読み直してみて、勘違いでも誤読でもないようだ。記事の解読に時間がかかったことはさておき、この記事では、アメリカ議会政治が茶会党(ティーパーティー)によって崩壊の途を辿っているかに報じている。素直に文字面を読めばそうだが、民主的な政治の執行という文脈で読み進めると、茶会党の行いに疑問を投げかけるような点は何らない。何が問題か、それが解きにくいのが、強いて言えば問題。政治の文脈以外でどう読んだら良いというのか、つかみにくい。そして、この記事が海外紙の引用でもなく、調べると、毎日が独自に書いた記事のようだった。しかも、「(その2)」とあるように、前日の8月18日に「(その1)」(参照)がかなりのボリュームで書かれている。この一連の記事を通してやっと、毎日が何を言いたいかがうっすらわかってきた。そして、このままだと、アメリカ大統領選挙まで、毎日の文脈で話題を引っ張って行くような気がした。「(その1)」の紙面の半分に渡るティーパティーについての解説が、そのスタートを知らせているかに思った。
 事実をまるで歪曲するような悪質な記事でもあると思うし、アメリカ大統領選挙までこんな記事に付き合って振り回されるのは御免。なので、詳しく当たってみることにした。
 記事からだが、まず何が起こったか。

昨年11月の中間選挙では「小さな政府」を目指す議員らを応援するため、全米をバスが走り回った。ウィスコンシン入りの目的は、リコール(解職)された共和党の州上院議員6人の出直し選挙を応援するためだ。

こういった茶会党の選挙応援運動そのものが、「非妥協」で、そのため政治が機能不全を起こしている、というのが毎日の文脈。では、具体的にどういう「非妥協的」態度で、どんな摩擦を起こしたというのか、以下がその部分だろうか。

 「ウィスコンシンで起きていることは間違っている。保守系議員はウォーカー知事(共和)とともに財政均衡のために尽力したまでだ」。バスを背後にエイミー・クレイマー代表(40)はリコール運動を起こした民主党側を批判した。
 州財政削減を公約に掲げた知事は昨年、茶会の支持を受けて当選。就任すると、州政府職員削減を視野に公務員の団体交渉権を剥奪する法案を提出した。反発する労組は州都マディソンの議事堂を占拠。民主党上院議員14人は定数不足に持ち込んで採決を阻止しようと隣のイリノイ州に「逃亡」した。

 ここが指摘の「摩擦」部分だと思うが、文字面では与野党の攻防戦のようで、摩擦と見えないこともない。が、茶会党が推した知事だというだけではなく、この知事の「議会への提出」といった行動に何ら問題はない。むしろ、与党が先に議事堂を占拠するなりして機能不全に陥るような行動をしたというのならわかる。これが、茶会党のせいにして道理を通すのなら、毎日は、米与党を無理矢理擁護するために書いていると証明している事にもなる。ここが、どこの米紙を引いてきたのか探した部分だが、引用はしていないようだ。何を言いたいか、さっぱり検討がつかなかった。
 いくら何でも、こんな支離滅裂な記事で終わるわけはないと、じっくり何度か読み直してここかと思ったのは次の部分。

労組の抵抗に屈せず大ナタを振るったウォーカー知事の改革姿勢は全米の茶会の称賛の的だ。一方、世論調査によると、公務員の団体交渉権停止については州民の過半数が反対しているという。

 世論を味方ににつけて茶会党叩きをしているとしか思えない。ウォーカー知事を賞賛しているのは全米の茶会党だけで、州民からは半分以下だと虚仮(こけ)にしているが、これによって、毎日記事の文脈はなんとかつながる。州民からは半数以上に反対されているにもかかわらず、知事が公務員の団体交渉権停止を強行したのは、茶会党の後押しがあるためで、その茶会は、「非妥協」を武器に政治家を思うがままにしている。という筋書きははっきりしたが、そうなの?という疑問は、これだけでは払拭されない。
 まず、知事が行った「提出」は、非難されるに相当しない正常な行為であるし、これが、ティーパーティーが「非妥協」で政治を機能不全に追い込んでいるという主張の裏付には不充分である。ここまでティーパーティーを虚仮降ろしてその先に何が言いたいのかという点で、毎日記事がおかしいにもかかわらず、それを決定づける事実がどこにも見つからなかった。
 時間をおいて夕方、極東ブログ「茶会党(ティーパーティー)バッシングという都合のいい物語」(参照)が挙がって、胃の支えがストンと落ちた。また、おかしな兆候が見え始めた時点で早期に指摘するという配慮は、ありがたく思った。毎日記事を取り上げて叩こう、などという意図はさらさらないし、先にも書いたが、大統領選挙まで今後、色々な記事が出てくると予想すれば、できるだけ事実を正確に知りたいというのはある。自分の生活に直につながる日本の政治を見てゆく上で、海外の動向は重要になってくると思う。
 毎日記事の終盤部分から話はつながっている。

 今月9日のリコール選挙で共和党は6議席中4議席を維持し、上院(定数33)で過半数を確保した。「いま大事なのは雇用創出であり、共和も民主もない。協力できることから始めたい」。リコールされた後、そう話していたランディー・ホッパー議員(45)は惜敗、雇用創出に取り組む機会は失われた。

 話をすんなり読むなら、労組と民主党の強攻策でリコールされた共和党議員が返り咲いたのは、「ティーパーティー・エクスプレス」大型バスによる茶会党の運動であり、それこそが強攻であり、政治混乱を引き起こし、雇用創出機会も失われたというのだが、この話は、嘘と論点の錯綜である。錯綜というのは、雇用創出はまず当面の問題ではないということだ。
ではどこが嘘なのか。

 げ、「嘘」とは。
 何度記事を読んでも真相が見抜けなかったわけだ。で、当のファイナンシャルタイムズ記事は、この部分を暴露するといった記事でもなく、オバマ政治を伝える記事の中でサラっと書いている。私も以前クリップしていた記事だった。ここで二度目のがっくり。それはさて置き。
 リンク先の引用部分を読んでもらえばわかるが、民主党と労党は買収行為で共和党議員をリコールすることに成功したが、茶会の応援による共和党の返り咲きに会い、議席を減らしたとある。
 毎日がこの事実を知っていたのであれば、事実を歪曲した上、記事を捏造したと言えるし、知らなかったとしたら、ただのでっち上げで、悪質極まりない。下手をすると、茶会党から名誉棄損で訴えを起こされても仕方がない。
 真相がわかってすっきりとはしたものの、後味は悪い。日本だけに限らないとは思うものの、それにしても毎日がこのレベルだとは。この記事でふと重なったのは、イギリスの先日の暴動だった。
 動機や意図を全く共有しない人々が、小さな出来事に便乗して暴徒化し、盗みや乱暴を働いてストレスを発散させるために狂ったように暴れた姿だった。記者が言葉を巧みに操って、今回のような記事を書き、それが風評となって世界中にばら撒かれる状態と何ら変わりはないと思った。
 「茶会のまいた対立を火種」として燻らせようとしているのは、毎日ではないだろうか。

|

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 茶会党(ティーパーティー)バッシングによる毎日新聞の奇妙な展開記事について雑感: