2011-08-01

中国の高速鉄道事故について雑感

 昨日の毎日社説「論調観測 中国の高速鉄道事故 安全軽視に厳しい目を」(参照)を一読して、最初、論旨が汲み取れずに再読した。まとめの部分から解釈すると、中国の高速鉄道の安全性を問いたいのだろうとは思ったが、それを問うために引き合いに出されているのが他社の社説という文章の構成のようだ。だが、安全性を問うなら、技術的な問題が具体的に出てこないと説得力がない。引用された各紙の文脈は、それとはかけ離れたモラルや国威発揚のための道具にしているなどという文脈の記事だった。だからか、すんなり腑に落ちないのは言うまでもないが、毎日社説は何が言いたいのだろうか。安全性を問いたいのか、中国政府の腐敗を言いたいのかどっち?という変な疑問までわいた。
 後者の中国政府の腐敗を問うのを論旨とするにしても、中国の実態には実際触れていない上、見えるようで見えないのが中国である。そのため、全て仮説となってしまい、論点が見えにくくなる。どの手を使っても中国政府を語るには乏しい材料しかない。でも、日本というお手本ならある。これについては、毎回書いている気がするが、朝日などは民主党や中国に不利なことは取り上げない。これで会社の筋はそれなりに通している。また、時々、事実を隠してでも擁護する部分はしっかり擁護している。だから、日本をお手本に中国を語る社説なんぞあり得ない。他紙も日本政府叩きはしないし、それをやると日本では新聞社として食っていけなくなる。そういう国家権力が働いているのは事実である。
 記者についても同じで、番記者と言われる仕事についている記者の表と裏の見え隠れする部分が時々記事から窺われ、それを物語っている。
 で、私はそのずっと端の方でブログを書くおばさん。新聞が書かないようなことはいくらでも書ける。だが、人や国を陥れるような意味合いになるなら書きたくない。真実は、時に隠されていた方がよい場合もあるし、Untouchableという便宜も必要だと思う。だが、昨日の極東ブログで取り上げられた内容は、社説の読みだけではなく、私が踏み込めないと思っていた部分にまで踏み込まれていた。
タイトルは「中国の高速鉄道事故についてあまり気の向かない言及」で、私が未消化だった毎日社説について細かい考察が入れられている(参照)。
 書いて欲しいとは望んでいたが、読んでみて、書かせてしまったという申し訳ない気持ちになった。だからということでもないが、いつもの私らしくというスタンスで、胸にあることを少し書いておこうと思う。
 率直にいうと、日本と中国の腐敗政治ということになるだろうか。
 先にも触れたように、中国社会のことは実態はよく分からないが、中国とよく似た日本の歴史や、生きてきた人々が遺したものから学んだことと照らして見ることはできる。それを言うのに手っ取り早いサンプルは、日本の原発事故だろうと思う。
 今更感が漂う福島原発事故後のニュースが近頃多くなったが、国家と電力会社の関係性から、ぼろぼろとほころびが見えてきた。繕いきれないほどの隠蔽や、東電の板ばさみ状態の苦しい立場も分かってきたと思う。特に、東電のせいにして、東電を隠れ蓑にしているという官僚たちの姿が近頃くっきりしてきた。前にも書いたが、私企業と、それを監視し指導する側にある国家が結託すると、水面下では談合もある。また、天下りという甘い汁を吸ってふんぞり返っている元官僚も大勢いる。この腐敗構造は、中国も似ている部分があると思う。汚職を報じている新聞もあるが、その事実を掴む必要もなく、国家権力の元に高速鉄道が建設されているというだけで、その構造は自ずと構築される。それがまず一点挙がる。
 老朽化した福島原発や津波災害の対策、地震時の停電対策などは前から不安材料としてあり、いつか起こる災害に対処するための指針も出ていた。それにも関わらず、適切な指導をしていなかった官僚(保安院など)の問題が浮き彫りとなった。この対策問題を放置した理由は、東電という私企業にとって、安全対策工事を怠ることで経費の節減という助平根性があったからだ。ここで同時に安全性の厳守がすっ飛んだことは言うまでもない。最近になって、いくつもの対策工事が見直されることになったため了解できる。そして、原発を誘致した地方や住民への対応などはそっちのけとなった。国家は保身へ回り、実質原発を稼動している東電が全て悪い、となったが、国民は黙って見過ごさないというメッセージを送り続け、海外からも注視され批判されてきてやっと最近、官僚が頭を下げる光景を目にするようになった。だからと言って済む問題でもないが。これらの姿と、中国政府が現在している事とダブって見えるというのが二点目に挙がる。
 大きな税で大きな政府を作れば、企業が国営化するというのは、日本は学習済みである。そこから見えてきたのは、国が面倒を見てくれてありがたいという依存体質を市民に植え付けることや、お代官様を作ってしまう。はっきり言って、原発で被災された方々の補償の一から十までを国の補償に頼る、または、賠償として責任を果たさせるということは、またしても依存体質を作る結果となる。しかも、増税となると、大きな政府作りをまたしても担ってしまうことになる。
 その姿を今の中国に見てしまう。中国に民主化が訪れない理由も、日本の政治が民主政治だと言い切れない点も、どちらもどんぐりの背比べである。国営一本の中国と民主化(民営化)できずに喘ぐ日本の姿だといえると思う。
 そこで、中国という国家から見えてくるのは、高速鉄道という国家の事業が何を齎すかだ。言わずもがな、一部に私腹を肥やす政府の要人や、政府管掌下の工事を請け負う公司などである。その実態は勿論明らかではないが、ここまで書いた日本の姿から想像できる。
 中国で新幹線に乗車できるのは一部のお金持ちだけである。どれ程インフレが進んだかはっきりとした生活観は言えないが、うちの会社で昨年まで働いていた中国人の娘達の話では、一ヶ月二万円もあれば生活には全く困らないと話していた。
 因みに、大紀元(中国紙翻訳版)「」で、次のように伝えている(参照)。

 また、G142沿線の蘇州北駅、南京南駅、蚌埠南駅の周辺で行った調査では、駅構内は極めて豪華に装われているが、駅の外は汚く、工事中の状態が放置されていたという。市内からも遠くてアクセスに不便なこれらの駅は、現在、周辺に関連施設はほとんどなく、計画中の施設建設プランが掲示されているのみであった。

 高速鉄道の乗車率が低い最大の原因は、チケットが高すぎることにある。例えば、G142(上海-北京)のチケットは410元~1750元で、中国人の一般的な平均収入(1000~3000元)で計算すると、1往復で1カ月の収入が全てなくなることになる。

 そんな高価な乗り物を作って一体どうするのか、という疑問は当然起こる。
 この疑問に応えてくれているのが、極東ブログで引用されているワシントンポスト記事の、アメリカを輸出の相手国として狙っていた点ではないだろうか。だが、この記事のポイントはそこではなく、そもそも高速鉄道の経済性のなさがポイントであるようだ。日本の新幹線が成功(?)したのも、経済成長という真っ只中にいて、将来への輝かしい夢もおまけにあった。今だったら経済性を懸念する声も多く、その意味も分かる。
 戦前の国家主義に戻るというのであれば、東電もJRも郵政も全て国営にして、すっきり国にお任せすることも選択肢にはある。が、生み出すのはでかい膿をもったできもののようなものだろう。私の指先に刺さった茄子の棘も痛いが、それどころの話ではない。その膿に気づいて傷を治すきっかけとなったのは、バブルが弾けて初めて腐敗が発覚したからだった。あのうんざり感を今の中国市民はきっと味わっているに違いないと思う。
 中国政府の正体を暴くのはわけもないことだが、中国政府を外から叩くと、その皺寄せとして圧政が市民に及ぶのが忍びない。それでも中国市民は潰れない強さを持っているのだろうけど、そういう姿にわざわざさせたいとも思わない。政治構造や腐敗は許しがたいが、政府の要人も含めた人を憎むわけではない。なんとも複雑な気持ちが残る。

追記:Twitterのクリップ記事、「脱・原発はムリ?民主“電力マネー”を食った議員リスト」(参照)によって、戦後の自民党政権からこっち、民主党政権に至るまでの癒着体質の顕現化ともいえるデータが得られた。

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      表:民主党議員への電力関連団体などの献金(パーディー券含む)

    「皆さんどう思いますか?」

  ソフトバンクの孫正義社長は今月23日、自民党の政治資金団体「国民政治協会」本部の2009年分政治資金収支報告書で、個人献金額の72・5%にあたる4702万円が東京電力など電力9社の当時の役員・OBらからのものだったとの共同通信の配信記事を受け、こうツイートした。
  孫社長としては、自民党と電力業界の“癒着”を指摘することで、太陽光発電などで連携した菅首相や民主党を後押しする狙いがあったのかもしれない。
  ここ数年の民主党議員や民主党本部の政治資金収支報告書を夕刊フジが調べたところ、電力業界からの政治献金やパーティー券購入が確認できた=別表参照。
現職閣僚では、電力業界を所管する海江田万里経産相が2006年10月、東京電力労働組合政治団体から6万円。前経産相である大畠章宏国交相の政党支部には、茨城県電力総連や東電労組政治連盟本部、電力総連政治活動委員会などから計8万円が献金されていた。

「ポスト菅」の筆頭格とされる野田佳彦財務相の政党支部には09年8月、電力総連政治活動委員会の代表から3万円。維新の元勲・伊藤博文の子孫にあたる松本剛明外相の政党支部には09年8月、電力総連政治活動委員会から3万円など。

 額が大きいのは、平野博文元官房長官の政党支部が09年8月、関西電力労働組合から受けた30万円。民主党屈指の政策通である大塚耕平厚労副大臣にも09年7月に中部電力労組政治連盟から24万円。経団連の石川一郎初代会長を祖父に持つ下条みつ政調副会長には09年11月、東京電力から40万円が献金されていた。

 前段の癒着体質を数字で見るという点で有用な資料であると思い、追記した。

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