2011-08-07

日本、この国がおかしいことについて雑感

 昨日、NHKでTVシンポジウム「震災後の日本経済を展望する」という公開番組の録画を見た。広島に原爆が投下された日でもあるし、朝から菅さんの式典での挨拶も聞いたことだし、なんとなくそれにちなんだ教養番組はないかなと思ってスイッチを入れただけだったが、中央に白髪の小泉元首相が座っているのに気づいたのは、カメラが引いた時だった。あら、懐かしいと思って新聞で番組を確かめると、パネラーとしては主賓のようだった。他のパネラーを見ると、日本をリードしてきて来たつわものがずらっと並んでいる。せっかくなので紹介すると、元内閣総理大臣:小泉純一郎、新日鉄名誉会長:今井敬、キャノン会長:御手洗冨士夫、パナソニック会長:中村邦夫、トヨタ自動車相談役:奥田碩、関西電力顧問:秋山喜久、タンフォード大学教授:フランク・ウォラック、【司会】経済評論家:田中直毅であった。個々にじっくり話を聞いてみたい人たちばかりだが、7月26日に公開録画したものを1時間に編集した番組だった事もあり、時間が短くて残念だった。
 構成として面白いと思ったのは、企業、政治家、電力会社、アメリカの学者というパネラーをそろえていたことで、震災後のエネルギー問題について、それぞれの立場から意見が聞けたことだった。内容は、議論や討論ではなく、聞く側の私達に「僕はこう思う」というメッセージをそれぞれが発したというものだった。詳細に渡る意見という内容でもなったが、企業側が制約された電力と製造をどうやり繰りするかというテーマから、原発廃止に取り掛かるというよりは、今ある原発から電力供給しながら新たな供給源を分散させ、スマートグリッドによって効率よくコストの削減に取り組むなどの意見が多かった。はっきり言って、菅首相の言っている「脱原発依存」には難色を示していた。小泉さんは、原発が仮に減るとしても、事故後のノウハウを世界に発信してより良きを求める使命感を日本は持つべきだと熱弁していた。一方アメリカは、アメリカには原発がなくてはならないものという位置づけを明確化していた。こと原発に話を絞るとこんな感じであった。
 で、私は、番組が終わってからしばらく雑念が払拭できず、呆然としてしまった。
広島での菅さんの話を聞いて、何故、この人は「脱原発依存」をこうも胸を張って言い切れるのだろうという疑問が残っていたこともその原因になっている。私の中では、この構想は、菅さんの思いつき発言にとどめておく以外、置き場のない事という位置づけだ。何故なら、マニフェストにも政治家としての菅さんの公約にもない構想で、福島で原発事故が起こってから言い出したことであるからだ。それを、世界から来賓を迎えている式典であり、日本全土に放送される番組で公言するのはあんまりだろ、という些か呆れた感もあった。菅さんにしてみたら、この日を心待ちにしていたのかもしれない。一昨日、懸念した通りになった(参照)。
 ウイキーリークスで明らかになった日本の政治家と官僚の権力関係から、ますますはっきり物を言うようになった私だと自覚して言うのだが、菅さんがこれほど浮きまくっているにもかかわらず、堂々と首相の座に座っていられるのは、官僚の言うがままに動く人だからではないかと思う。ある意味、官僚に支えられているというか。どれ程の神経の持ち主か分からないがよく耐えていると思うし、元々お人よし的な菅さんで、官僚にとっては扱いやすい人ではないだろうか。脇でよいしょしている財務畑の官僚がいるから「増税」路線を崩さないのだと思う。そういう意味では、与謝野担当相も同様だと思う。
 シンポジウムの話から、日本の企業の多くが安定的な電力供給を願っている背景だということが分かった以上、今後、「脱原発依存」など大きな口を叩けない場面も出て来ると思う。例えばこんな事があった。
 いきなり10%増税で大口をたたいた。国民から非難轟々の目にあい、民主党議員からも非難されて嗜まれて参院選では惨敗した。当の本人は、自分の発言に自信たっぷりだった。こういった経緯を辿ると、官僚が傍で操っているとしか思えない。
 こういう話しになると繰り返しになるので、自分でもくどいなと嫌気もさすが、矛盾した中で悶々とするのに耐えかねている。なので言っちゃうと、東北大震災後の復興や長年のデフレや円高、汚職などの問題が解決しないのは、政治家と役人の関係構造に問題がある。私達が普段生活していて、これは変だ、おかしいという疑念が湧くのも、こういった関係から正しさが隠れてしまっているときではないかと思う。嘘やまやかしが根底に潜んでいるのじゃないかと思うようになった。
 日銀が為替介入を行なったが、たった一日で円は元に戻った。これは予想の範囲だったが、介入額は戦後最大ではないかとも聞いた。それでも市場に吸収されてあっという間に元に戻ってしまう勢いだ。が、日銀の白川さんも馬鹿じゃない。頭の良い人ではあるが、何故そういう人が素人の私にもタネが分かる程度のマジックしかしないのだろうか。ここにも官僚と絡めると見えてくるロジックがあると思う。
 介入努力をしてもデフレや円高は阻止できない、という実証が現在できたことになる。これは増税がやむを得ないのだという理由になるのと同時に、国民を納得させるための口実である。増税案がまとまれば、公債の発行に伴う返済を増税によって賄うという見通しがつくことになる。復興財源が決議されれば、菅さんの目標達成ともなる。菅さんが首相として何がなんでもやり通そうと思っているのは復興であり(これに嘘や誤魔化しはないと信じていたいが)、官僚と菅さんの利害がこのように一致しているから「脱原発依存」によって、求心力を得ようとしているのではないだろうか。原爆の慰霊祭は、このための格好の日ではなかったかと思う。
 こう見ると菅さんは、悪い人じゃない。願いは国民のためにとは思うが、政治家として民主的かというとそうではないと思う。官僚と談合し、結託の挙句が今の状態だとしたら独裁的だとしか思えない。逆に言えば、官僚の圧力が軽減されれば、菅さんのような人は国民にとっては民主的な政治ができる人でもあるかもしれない。より、国民の話に耳を傾ける人として、リーダーの素養はあるジャマイカ。
 ダメ押しでもないが、昨日の広島の式典後の菅さんのインタビューを毎日が伝えていた(参照)。

 菅直人首相は6日、広島市内での記者会見で、核抑止力について「核廃絶を実現すれば、核抑止力そのものがないことになる。そのような世界を目指すことがわが国の方針だ」と述べ、当面の必要性について言及を避けた。
 昨年8月、広島市の平和宣言に「核の傘」からの離脱が盛り込まれた際、首相はその直後の会見で「核抑止力はわが国にとって引き続き必要だ」と語り、地元の反発を受けていた。
 また、首相は退陣の条件となっている赤字国債発行に必要な特例公債法案に関し、「この国会会期中に、野党の理解をいただいて成立させていただきたい」と語った。【高橋恵子】

 昨年と今年で核抑止が180度ひっくり返ったが、この発言ものっぴきならない発言だ。原発やアメリカとの同盟問題は、国家の政策の根幹であるにもかかわらず、こんなに軽はずみに発言してはマズイ。が、後ろ盾が官僚なら話は分かる。
 もう一つ。菅さんが首相の椅子に座り続ける意思表明として読売から(参照)。

 菅首相が9月5日に東京で開幕する国際会議「日印グローバル・パートナーシップ・サミット2011」に出席し、基調講演を行う意向を示していることが分かった。
政府関係者が6日、明らかにした。
 同会議への出席は、首相が8月31日までの今国会の会期中に退陣せず、「9月以降の続投を模索するための布石ではないか」との見方が政府内で出ている。

 この記事で、国会会期中に復興財源の問題が解決するかどうかの点、この一点だけが取り合えず気になった。

|

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日本、この国がおかしいことについて雑感: