2011-08-12

ロンドンの暴動から労働問題について雑感

 英国での暴動は10日、発生から5日目で沈静化の兆しが見え始めていると報じている(参照)。当初、この事件は、麻薬取り引きの関係者として警察からマークされていた29歳の男性を射殺したことに端を発している。それが一夜明けた途端、大きな暴動となり、ロンドン北部のトットナム市内のビルから煙が上がり、警棒と盾を持った警官と若い覆面集団が衝突をする光景に変わっていた。トットナムに行ったことはないが、昔住んだロンドンの古い町並みが思い出され、放火された挙句、レンガの建造物が破壊されている場面をみるのは辛かった。そして、何が原因で、どのような人達が暴徒化してしまったのか、それをつきとめたい気持ちでニュースを注視していた。
 イギリスの大衆紙と言われている「THE SUN」のWebニュースを見てみた。大きな画像や映像が紙面に展開され、放火された街の店主の自主的なお尋ね者捜索活動などを伝えていた(参照)。民間だけに、この店か、報じた「THE SUN」が二次的な被害に合うのじゃないかと懸念した程だが、それにしても何故、犯人捜査のような真似を一般市民がするのかという疑問はあった。それこそ警察の仕事じゃないのか、と思った。そして、この疑問が事件の紐解きに後で関係してくるとは思わなかった。
 また、この暴徒化した騒動に首謀者がいるのか、いるとしたら、当初の殺害された男性との関係はあるのかなど、疑問な点が多くあった。日本のニュースは、それらに関して殆ど触れた記事がなく、それも不思議だった。あれほどの事件の原因や背景が分からない日が続き、もどかしさを感じていた。
 当初の印象では、2005年に起きたパリ郊外の暴動と背景がとても似ている点だった。その後、これに確信が持てた記事は「Daily Mail」というイギリスの新聞のWeb版からだった(参照)。警官による射殺にたいして家族が抗議した事は単なるきっかけで、暴動となったのは、ギャングなどの便乗によるもののようだ。記事にも書かれているが、暴徒化する要素が潜在しているようだ。それを阻止するだけの力が警察になかったため、各地に飛び火したようだ。しかも、移民を受け入れた国家にしか起こらない問題もあり、その点で、このような問題はイギリスだけの問題でもないと感じた。
 記事からは、イギリスの緊縮財政による市民生活への圧迫と、これに重ねて学費などの値上げに対する学生達の反発、移民や労働者階層に蔓延する失業や治安の悪化なども潜在しているとある。日本ではあまり聞かない人種問題もあるようだ。画像を見てもわかるとおり、10代の子どもや女性なども含んでいる。こういった素地があり、これが暴動につながったということは、人々の不満が一気に噴出して便乗したものだと見る以外なかった。合法的なデモによって訴えるといったこととは違い、表面化しないジレンマでもあったかもしれない。因みにイギリスガーディアン紙は、暴動と貧困との関係性を模索するためのマップを作成して公開している(参照)。
 昨日の極東ブログ、「ロンドン暴動について」(参照)の考察は、正に暴動そのものについてであった。それまでずっとクリップ記事をフォローしていたこともあり、この暴動の本質を早くから見抜ぬかれていたのだと結果的に思った。そして、パリやイギリスに起きた暴動は、他国で起こる可能性も多いにあるのではないかという背景が確認できた。
 そこで、日本ではどうだろう。このような暴動は起こるだろうか、と考えてみた。政府の脳死状態が長く続いている日本であるにも関わらず、反政府運動やデモ、暴動のようなものは今のところ起きていない。その気配もないが、これからも起きないと言えるだろうか。読んでいてそんな疑問がわいた部分がある。

 ところが、今回の暴徒たちがスマートフォンを駆使できたように、食うに困る貧困ではない。職がないというのは大きな問題ではあるが、職の配分を均質にするには、基本的に異文化を社会に融合することが前提になる(同化せよというのではない)。
 それがうまくいってはいない。かくして、そもそもそれが必要となる社会に舵を切った英国ならではの問題でもあるとようやく言える。
 逆説的なのだが、オスロ事件の容疑者が賛美したように、日本のように異文化を社会に融合するニーズをそもそも少なくしている国家では、問題化しづらい。

 現状では移民を受け入れていない日本に、パリやイギリスに潜在するような問題はないと言えるが、これからはどうだろう。「融合するニーズ」は、高齢化社会が進み、働き手の減少傾向を思うとないとも言えない。移民を受け入れる事を自分の問題として考えた時、一人格として日本人と同じように認め、社会的に差別するようなことでもなければ上手く融合できるような気もする。
 イギリスやフランスの移民受け入れは、労働者不足を解消するため、かつての植民地から労働力として受け入れようというものであったため、職を均質にする点は前提ではなかったこともある。これが今も解決できていないのではないかと思う一つの原因に、教育や職業に対する偏見から、そのハードルを取り除いた雇用関係が構築できない問題もあると思う。それはいつの話だという事ではなく、こういった問題が解決できる見込みがあれば、人々の将来不安も解消されて行くだろうと思う。
 以前、日系ブラジル人を会社で雇い入れた経験からだが、当時の社会保険制度に(これは現行の制度であり、改革されていない)理不尽さを感じた。日系であれば、日本に入国して就労することには何ら問題はない。会社は、雇用関係が成立すると、社会保険事務所に登録して雇用保険の加入手続きをするが、彼らにも年金保料を納める義務があると言い出した。日本で就労するなら日本の法律に従ってもらうというのである。ところが、日系ブラジル人であっても、日本に定住するわけではない。日本人として帰化するつもりでもない彼らは、単に、ブラジルでは仕事がないから日本に仕事を求めてやっていて来ているだけだった。つまり、その彼らが年金保険料を支払っても、年金を受給できるわけではない。それが分かりきっているというのに徴収する、という制度に呆れた。では、帰国時、申請すれば還付されるのかと聞けば、そんな法律はないと言われた。そんな馬鹿な話、自分が外国でそういう待遇を受けたらどう思うかと窓口に聞くと、おかしな制度ですよね、と個人的には同意した。
 こういったことがきちんと整備されてもいないのに、彼らは「税金」と言われれば支払うしかない。が、制度の矛盾を後で知ればきっと腹立たしく思うに違いないと思った。勿論、私はこの交渉をした内容と、それが不発に終わったことも本人には告げた。
 このような法制度を整備してから外国人労働者を受け入れると言うものではないだろうか、かなり当たり前のことだと思うが。
 日本の移民受け入れについての可能性として将来的に考えた時、直ぐに浮かぶのは、労働量力不足の問題ではないだろうか。すでに高齢化社会ではあるが、この先30年は今の若手が社会の働き手となって支えて行く側になる。どう考えても支えきれるとは思えない。今よりも福祉に頼る老人が増える日本を想像すると、移民問題を労働力に置き換えて考えてゆく傾向になるのではないだろうか。その時に、日本人と同格な待遇を社会的に用意すれば問題はないと言えるだろうか。さし当たっての問題でもないが、よい問題提起となった。

 追記:今朝のクリップ記事で、ロンド警察の警官を増やすべきだという意見が野党から早速出ているという情報をもらった(参照)。

 こうした現実を受け、議会では警官の数を2015年までに1万1000人以上削減する政府方針に反対する声が相次いだ。最大野党・労働党のミリバンド党首は「警官削減を再考すべきだ」と首相に迫った。野党だけではない。

 キャメロン首相に近い与党・保守党のボリス・ジョンソン・ロンドン市長も9日、市内で略奪があった地域を視察後、「削減はやめるべきだ」と首相に反旗を翻した。連立相手の第2与党・自由民主党もこれに同調する姿勢を見せている。

 問題提起として既に考えていたいたことと結びついただけに過ぎないが、極東ブログの引用部分「そもそもそれが必要となる社会に舵を切った英国」でも言われているように、英国が決定した移民の受け入れを例に取ると、その人々が英国民と同様に社会生活ができるような社会に改革することが政治家に求められていると思う。政治力不足の問題と、警官の数の問題は違う。警官を増やしても政治が変わらなければ何も解決しないと思う。また、警官の数を増やして問題がなくなるという考え方を持てば、自ら敵を作り、それに備える政府の姿勢にしかならない。そこで議論も終わる。脳死状態の政府になるのは時間の問題となってしまう。

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