増税は反対だが、支払うべき税金についてチト勉強した
日本医師会常任理事の今村聡氏のインタビュー記事「控除対象外消費税放置に懸念、日医・今村氏- 「このままでは医療崩壊が加速」」( 2011年08月06日 10:00 キャリアブレイン )について考えてみた。
日本医師会に加担する意図など何らないが、このところの関心事でもある震災復興問題でネックになっている財源の確保が与野党で煮詰まらないでいる。国債を発行すればその債務の返済に当てる財源をどうするかという問題で、増税案と、これに反対する意見が出ている。この時期の増税はナンセンスだと言い続けてきた私だけに気になっているが、医療現場でも増税に問題があることを知った。消費税増税がその経営自体を困難に陥れる例として、具体的な数字が上がっているのを見て少し驚いた。それ程私が無知だったということだと思ったが、増税が齎す悪循環に無関心ではいられなくなった。そして、何でも反対するものでもないと、過去の税への考え方を見直すことになった。
まず、何が問題なのか、記事にはこうある。
消費税は代表的な間接税で、最終消費者が負担するため、物を売る事業者は原則、負担しません。ところが、社会保険診療報酬の消費税は非課税なので、患者さんは消費税を支払わない。一方で、医療機関は設備投資や医療機器・医薬品購入などの際、消費税を支払います。もし課税の仕組みであれば、その仕入れに掛かった税額が控除されますが、診療報酬は消費税非課税なので控除されない。このため、医療機関が払いっ放しとなり、税負担が莫大な金額に上っているのです。
私の、増税に反対する理由は、日本が長引くデフレから脱却できていないことと、円高が進んでいる現在、輸出産業が全く動いていないことなどから、国民の消費意欲が減退してお金が回らなくなるなどの理由が上がる。そして、最終的に消費者が消費税を支払うので、消費税率アップは消費者の生活を直撃する。先の記事で、それと同じことが医療現場にも言えるという点に気づかされた。
医者で診察を受けて窓口で支払う流れの中で、今まで自分が医療費に消費税を支払っているともいないとも、そういう意識すらなかった。個人的には、あまり医者にかからないというのも理由で、医者に縁がない方が良いとは思っている。が、今まで支払っていなかったのかと思った瞬間、保険点数や診療報酬の値上げって以前していたよなあ。あれで採算ベースに乗っていたのじゃなかったのか、などとぼんやり思っていたが、この記事では数字まで提示していて実態がつかめた。
日医の調査によると、医療機関全体で診療報酬の2.2%に相当する控除対象外消費税が発生しています。具体的な例を見ると、私大病院(計82病院)の1病院当たりの負担額は、09年度には3億9200万円(診療報酬の2.6%に相当)に上っています。これだけあれば、年収300万円のメディカルクラークを130人、年収1000万円の医師を40人雇える。それほど大きな税負担と言えます。
「控除対象外消費税」というものがあるらしい。普通、物の売り買いには一律に5%の消費税が発生するが、社会保険診療は非課税であるため、医者が薬品や医療機器を購入する際の消費税はそっくり持ち出しになるということだ。物を売る行為や買う行為全てに消費税がかかっているわけではないということはここでわかった。つまり、このまま売り上げから持ち出しになると、経営が行き詰まると言うのは数字で分かった。医師会に分かりやすい図があったので参照されたい。
で、消費税が10%になったら、病院の薬品や器材に対する支払税は倍になるため、入ってくる方を配慮して欲しいという訴えが理解できた。
次に、問題の解決に当たって、いくつか案が出されている。
まず、社会保険診療に消費税を課税する仕組みに変えるべきです。それにより、医療機関では仕入れ税額を控除できるようになります。医療機関は支払った税額を返還してもらえるため、払いっ放しにはなりません。
ふむふむ、ここは納得。患者がかかった医療費にも消費税を乗せよと。医者にかかったということは、買い物をしたのと同じ感覚で消費税を支払い、医療機関は、仕入れで発生した消費税を申請して還付を受ける。これで歳入から消費税を持ち出さなくて済むようになる。
次に、課税に伴う患者さんの負担増を避けるため、税率を0%、つまり「ゼロ税率」にすべきです。ゼロ税率と非課税は、患者さんの負担は全く同じですが、医療機関から見れば消費税の負担を控除できるかできないかという、天と地ほどの差があります。
ゼロ課税にするというのは患者への配慮で、何らかの形で患者側に還付を受けられるような仕組みの提案だ。「非課税」にすると税務署での扱いは還付の対象にしないため、「ゼロ課税」という言葉を用いると言う説明だ。
ここで最初、サラッと読んでしまったが、「患者の負担は全く同じ」と言うのは、ゼロ課税にするので後で戻ってくるから同じだと言う意味だと思う。さて、その財源は?増税分から賄うというのであるなら、増税10%は名目であって、患者に還付することを前提に勘案すれば、医療消費税は実質どれくらいになるだろうか。まあ、10%の税収にならない事にはなる。これはあくまでも病院が損しないで患者負担も増えないという仮定で考えているだけだが、そんなに都合よく増税案がまとまるだろうかと言う気が、今からしてきた。嫌な予感。
そして、最後の案。
「ゼロ税率」の適用が難しければ、国が主張する診療報酬への上乗せ分1.53%と同じ規模の軽減税率を適用する。または、普通税率で課税する一方で、患者さんや保険者の負担分を何らかの方法で還付する仕組みをつくる方法も考えられます。
今までの調査で発覚した凹み分をどこか他で減税するという案と、10%増税後に患者の負担分を国が還付するということらしい。突っ込みを入れるつもりでもないが、なんとなくこのロジックがしっくりこない。そもそも、医療費に消費税がかかっていない点が問題のキモかもしれない。
ちょっと調べたら、参議院の請願に力強くあった「消費税の増税反対、医療・介護施設へのゼロ税率を求めることに関する請願」(参照)。
この一〇年間、国民の収入が減り続ける中、定率減税の廃止、社会保険料・介護保険料の値上げ、医療費の窓口負担の増加などにより国民生活は一層苦しくなっている。消費税は所得の少ない人ほど負担割合が大きくなる最悪の税金であり、貧困世帯が増加するような状況で、追い打ちを掛けるように消費税が増税されれば、国民生活は破壊されてしまう。また消費税増税は医療現場にも大きな影響をもたらす。国の医療費抑制政策の結果、医療機関の経営は悪化の一途をたどり七割が赤字である。その要因の一つが、年間数千万円から数億円に及ぶ消費税負担である。保険診療は非課税で、薬剤・医療材料・医療機器など全ての仕入れに消費税が掛かり、医療機関が最終消費者として負担している。消費税増税は医療・介護を破壊する。今政府に求められているのは、直ちに減税し家計を応援し、国民の暮らしや社会保障を充実させ、命を守ることである。
ついては、次の事項について実現を図られたい。一、国民の生活と医療・福祉を破壊する消費税増税をやめること。
二、食料品など暮らしに関わる消費税を減税すること。
三、医療・介護施設への消費税はゼロ税率を適用すること。
ということは、野党が民意をくんでくれていると解釈したが、医療費にかかる消費税は、毎度のご飯を食べるのと同じで、自分のかかった分は支払ったら良いものだと、私は思う。高速道路料金と同じである。高速道路を維持管理するための経費を消費税で賄うというのであれば、きちんと支払いたい。除外を考慮するとしたら上記にもある通り、老人や子ども、障害を持つ人、生活が困難人などで、健常で働いている人は自分の医療費にかかる税金くらいは払うと言うものじゃないだろうか。非課税が、医療側の経営を苦しめているとしたら、そんな理不尽なことはないと思う。「消費税は上げない」とか、「医療費の消費税はゼロ」とか、吹聴するかのように選挙公約にうたうものではないと思うし、そんなことを求めるのもおかしい。
医療側として患者に、「患者が負担すべきだ」などとインタビューでは言いにくいと思うが、何でも「国」と言うのもおかしい。変だと思う。「国」とは、「自分」のことであり、「国の負担」は市民の税金で、役人に預けているくらいの感覚をそろそろ私達は持つべきではないだろか。今頃では遅いが。
増税にはこの不況下では反対だが、払うべきところへ支払うのを怠れば、歪も出て来るということが分かった。税金は小さく、政府も小さくするのが民間との間に不正が起こらないことにもつながるのは今までも言ってきたとおりだが、民主党が言ってきた方向へも向いていないと思う。
もう一つ付け加えると、税金を納めるのが嫌になる理由は、預けたお金が正しく使われずに役人を遊ばせ、豪華な職員宿舎の建設などに使ったりした経緯があるからで、信頼関係が崩壊したのも大きな理由だと思う。でも、必要な部分に税金が使われるのであれば、それを猛反対するような国民性でもない。
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