嬉しい知らせかどうか微妙-パキスタンとインド両外相の会談について雑感
約二週間前、アメリカがパキスタンへの軍事支援の一部を凍結させる事を決定した背景などをここで触れて以来、パキスタン情勢について気になる動きは特になかった。気になっていたのは、アメリカ支援の一部凍結の一方で、中国がパキスタンを支援する声明を出していた点がまず一点。それと、2008年のパキスタン人グループによるムンバイの高級ホテル襲撃事件に続いて、今月再びムンバイで襲撃を受けたため、インド市民は、シン首相の外交姿勢を非難するに至っている。こういったパキスタンとインドの緊張状態に、両国と外交関係を持つ中国の動きなどがやはり気になっている点として挙がる。
幸いと言っては良くないのは承知だが、中国は、今はそれどころじゃない。先日の高速鉄道事故後の政府の対応に対して、被害に合った市民の怒りが湧き上がり、政府はその対応に追われているようだ。が、長期的な展望として、インドは、パキスタンに協力的な中国に対し、もしもパキスタンと戦争でも始まれば中国はどのような役割を果たすかと、難色を持っているようだ(参照)。
こういった様子をやや緊張気味で見ていたが、パキスタンの女性新外相カル氏(33)とインドのクリシュナ外相(79)が27日、一年ぶりに会談に臨んだことを報じていた(産経)。この記事は、パキスタンを腐しているのか応援しているのか、会談内容がどうであったかは二の次になっているようではある。若年の女性政治家起用とあって、私の関心もそっちへ向いた。記事にはこうある。
“お飾り”か、新風か パキスタン初の女性外相・33歳カル氏
パキスタン外交は実質、軍が掌握している状況だが、カル氏はパキスタン外交を国際社会にアピールするには十分な容姿と経歴を備えており、対外的には潜在性の高さをにじませている。初の女性外相に就任したカル氏は、パキスタン最大の東部パンジャブ州ムザファルガー地区出身で、同地区の州知事、州首相などを輩出してきた有力政治家の一員。名門のラホール経営大学を卒業後、米国の大学院でホテル経営学を学んだが、2003年の総選挙で当選したのをきっかけに政界入りした。
政権のカル氏登用の狙いははっきりしない。だが、パキスタンが男性優位社会で、女性の権利が守られないとの国際社会のイメージを変える狙いがあるとみられている。
この記事には画像がない。「十分な容姿と経歴」が外交の鍵だとしたら、その容姿を見せてくれなきゃ記事が中途半端じゃないかと思い、AFPから引っ張り出してきた。
ニューデリー(New Delhi)で会談の前に握手するインドのS・M・クリシュナ(S.M. Krishna)外相(左)とパキスタンのヒナ・ラッバーニ・カル(Hina Rabbani Khar)外相(2011年7月27日撮影)。(c)AFP/Prakash SINGH
パキスタン人に良くある目鼻立ちのはっきりした美人系であるが、「政権のカル氏の登用の狙いははっきりしない」とあるように、記事の「外交の鍵」という見方は、産経記者独自のものの見方のようだ。が、男性には、美しい人が起用されることは外交上のメリットと考える節があるのだろうか、未だに。まあ、ブスを目の前にするよりは美人の方が良いかもしれないが、だからと言って決まらないものが決まるというようなメリットなどあるだろうか。あると考える男性は、ちょっとおかしいじゃないかと思うが。ブスに対して失礼だワ、そもそも。
冗談はさておき、このカル氏、産経が評価するほどの政治家かどうかは分からないが、家柄は政治家一族らしい。つまり、世襲だと思う。美人で世襲と言えば、話題を読んだタイのシンラック新首相も政治家としての経験はない。新興国はこういう傾向にあるんですかね。または、記事にもある通り、「男性優位社会」というレッテルを払拭するためだとすると、本当にそういう見方が男性にはあるのだろうか。女の私からは、美貌を武器に政治活動ができるともまた、意図的にやろうとも思えないが、007じゃあるまいし。あ、最も私はお呼びじゃないので自分のことを当てはめてもどうかとは思う。
書いていて、やっぱり産経の記事には偏見があると思う。美しいと言って悪いわけではないが、それを何かに利用すると言う文脈で使うのは、言ってみればセクハラ的な要素を持った表現だと思う。これは頂けない。
さて、何が言いたいのか支離滅裂になってきた。パキスタン外交で気になるのは外相が誰であっても軍が全てを掌握している国であるため、今回の人事もその軍が動いているのはそうだと思う。そして、パキスタン軍統合情報局(ISI=Inter-Services Intelligence)が潜伏機関として情報の漏洩に務めている。アメリカからの支援凍結が決定的になったのも、ISIの情報漏洩によってアメリカに不利を齎したことが原因だったとされている(毎日)。こういった背景から、美人でセレブなお嬢様系の女性を外相に起用するという姑息な発想ならありうることかもと思う。会談内容はどうであったか、AFPが少し言及している(参照)。
クリシュナ外相は会談後、両国の関係は「正常な方向に」戻ったと述べ、今回の会談を評価。カル外相は「協力関係の新時代」と表現した。
会談後の共同声明では、テロ対策や貿易促進、和平のための対話継続における両国の包括的な取り組みの構想がうたわれたものの、こうした楽観的なムードを裏付ける実質的な合意はほとんどみられなかった。
パキスタンとインドが和やかなムードで会談ができたというのであれば、それに越したことはない。一年ぶりで再開できたことは良いきっかけであったと思うが、内容は、充実していたとは言いがたいようだ。
追記:Youtube「インド パキスタン 経済関係強化へ 米国支配脱却 歴史的出来事?【重要】」は、和訳のテロップが流れ、分かりやすい☞参照
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コメント
こんにちは、パキスタンとインド関係を深く取り上げるゴッドマはなにものなんだ?:)両国は4月に通商関係強化を図る調印しました。ムンバイ爆破直後に、両国はしっかり関係維持していくという
ちなみに私はムンバイ爆破については両方ともfalseflag 偽旗作戦ではないかと思います。パキスタンとインドをもたらしたい、パキスタンのアメリカへの隷属を続けたい方々が今回もこのような作業をされたのかなと見ています。そこで、そんなのにごまかされないもんねって、両国が意思表示をしたのではと思うのです。おっしゃるとおり、成果がでるというよりも、関係を維持していくってこと程度で、地味だけど、それでよしって思いました。インドとパキスタンはアジアの今後を見ていくうえで大切だと思います。それにしても、サンケイさんは相変わらずですね。
パキスタンはアメリカの裏の軍事複合体のおもちゃ状態でしたから、中国、インド、アフガン、(間接的にロシア)と関係を強くしながら、アメリカ隷属脱出!って見ています。日本も彼らのしたたかさから学べることは多いのではと思いました。:)love and peace
投稿: dandomina | 2011-07-29 06:44
dandominaさん、深い考察、参考になります。
隷属関係を長く続けているといろいろな知恵がつくと言うか、そのためか、パキスタンの表層の裏に複雑な動きがいつもあると思うのですが、なかなかその真相が掴めません。
ムンバイの爆撃事件も二度続いて起きているにもかかわらず、パキスタン側の反応はあまり聞かなかったようで、仰るとおりの筋書きなのかもしれませんね。注視してみます。
投稿: ゴッドマー | 2011-07-29 07:10