新聞から事実を読むのが難しい件
原発のストレステストの話題が多く、ニュースでもよく耳にする。そう思いながら詳しく知ろうとメディアに目を通すと、何が問題なのか分からなくなった。昨日の朝日社説からこの疑問は始まったが、先ほど更新された朝日の8日付けの社説も同じ流れになっていて、さらに海江田万里経済産業相の辞任の話しにまで内容が構成されている。何故事態がこのような流れになるのか、残念な思いもあるが、そういう話なの?という疑問もある。これを払拭しておきたく、少し整理しておこうと思う。
福島第一原発の事故を受けて全国の原発は定期点検に入っているが、6月18日、海江田氏は定期点検中の原発の再稼動を求める方針を表明し、菅首相も翌日の19日、「全ての原子炉を止めることは、あまりにも経済に対する影響が大きい」としていた(参照)。ところが菅首相のいつもの思いつきで、先にEUが始めているストレステスト(安全検査)を導入するよう指示した。このため、海江田氏が話を進めていた九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働の可能性が頓挫した。一旦は再稼動を承認した玄海町長だが、これを撤回した経緯を次のように報じている(参照)。
町役場で記者会見した岸本町長は撤回の理由について「いったん原発の『安全宣言』をしてから再度安全確認をする政府の判断はおかしい」と語り、政府が原発の事故・災害への耐久性を調べるストレステスト(耐性調査)の実施を表明したことに強く反発した。
岸本町長は改めて再稼働への賛否を判断する時期について「ストレステストの結果を確認してからになる」と述べた。
経済産業省が佐賀県民向けに開いた説明会を巡り、九電社員が子会社社員らに対し、一般市民を装って再稼働賛成の意見メールを送るよう依頼していた問題にも触れ「まさにヒューマンエラーそのもの。(九電との)信頼関係に亀裂が入った」と発言。同意撤回の判断にも影響したことを認めた。
玄海2、3号機を巡っては、6月末に経産相が佐賀県を訪問し、原発の安全性を保証した上で再稼働を要請。これを受け、岸本町長は7月4日に九電に再稼働の了承を伝えていた。
突然ではあるが、菅さん(=政府)の決定が新たに出たという事だ。順番が悪いと言えば、海江田さんの決定後にこのようなテストをするという点だと思うが、安全性の点で念には念を入れるという意味では、普通は喜ぶべきこと。ストレステスト後に再稼動の是非を決定するという岸本町長の決定は、道理であると思う。また、九電子会社社員らにメールの偽装工作を依頼したという件は、九電社長が責任を取って辞任する考えを明らかにしている(参照)。
菅さんの思いつきで多少のもたつきが出るにせよ、この流れはその突然の指示に対応した適切な対処であると思うが、何が問題なのだろうか。世の中で騒がしくなる。菅さんがそもそもの原因だと叩くメディアもある。すると、話は政局へと関心が寄ってしまう。挙句の果て「信頼される安全の担保をどう得るかだ」という昨日の朝日社説のような文脈にすり返わってしまう(参照)。
昨日、「finalventの日記」でコメントを読んで、初めてストレステストの解釈を元に戻すことができた。以下のNHKの引用がその部分である。
ストレステストは、あくまで住民の安心感につなげるためだとしています。また国の原子力安全委員会は、6日、原子力安全・保安院に対し、これまで各地の原発で実施された安全対策の効果をストレステストで調べる計画を1週間程度で報告するよう求めました。こうした動きに対し、佐賀県の古川知事は、6日夜のNHKのニュース番組で、「なぜこの時期に国が新たな対策を打ち出したのか理解できない」と述べて、国への不信感を示したほか、愛媛県の中村知事は「ストレステストがどういう位置づけなのか、情報がないので何とも言いようがない」と述べるなど、各地で戸惑いの声が上がっていて、全国の3分の2の原発が停止しているなかで国の対応が厳しく問われています。
ここで国の対応はどうなるのかと、その後のニュースを探して出てきたのは、海江田さんの辞任表明だった(参照)。
海江田万里経済産業相は7日、経産省内で記者団に対し、九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働を巡る混乱について「政治家は責任をどこかで取らないといけない」と述べ、所管大臣としての責任を取り、一連の対応を終えた後で辞任する考えを示唆した。菅直人首相は原発再稼働の前提として、ストレステスト(耐性試験)による安全確認を実施する考えで、海江田氏の発言は首相方針に対する不満を示したものとみられる。
海江田氏の責任とは何だろう。各県知事が不快感を露にしたことで、迷惑をかけたということだろうか。そうではないだろう。海江田氏の責任はご本人も「一連の対応」と話しているように、各地の原発が一日も速く安全に再稼動できるようになることではないだろうか。菅さんの思いつき政治にはトホホ感があるのは誰も承知していることで、やってらんねぇという思いもあるかもしれない。が、私が文句も言わずに黙っているのは、原発が安全に稼動してくれることを望んでいるからだ。この夏、熱中症の心配なくクーラーをつけて涼しく過ごせうようにして欲しいし、職場の電気が止まることなく、安心して仕事の計画を立てられる事だったりする。ストレスチェックの挙句、その原発に問題があり、最悪の事態を想定すると稼動はできないと言う結論を出すのであれば、それも甘んじて受け入れようと言うしかない。
だから、頑張れなんだよ。辞めたら普通のおっさんで、政治家になった意味がそれでゼロになる。歯を食いしばって頑張って仕事をしてこそナンボの世界だと思う。変な部分に責任を感じて辞めるとか、その発言も無用。悪いと言えば菅さんだが、国民は、菅さんからも原発からも逃げられない。だから、「頑張れ」としか言えない。
ほれ、見てごらんと、言わんばかりの朝日の社説が今朝も出ている。しかもこのタイトル「経産相辞意―「内閣崩壊」の異常さ」(参照)原発のストレステストの話しを政局へと導いてしまうあたりはとても頂けない。
新聞読みの軌道修正みたいな内容になったが、何が問われて何を問題に考えたらよいか、少し整理できた。
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