竹島の領有権を主張する事の意味について雑感
昨日、韓国の東亜日報の社説「日本政府と政界は軽はずみな行動を慎むべきだ」をTwitterで知った(参照)。こう言ってはなんだが率直な印象として、感情を剥き出しにした筆致で、新聞社説というよりは、ブロガーが個人的な思いのたけを自分のブログにぶちまけているのなら話は別、と括れるような内容である。が、それが韓国が持つ日本に対する率直な感情なのだろうと解釈した。繊細な問題であるし、100年以上も前から解決できずに物別れになっている竹島問題であるため、日本の民主党の手に負えるものではないと私は思っている。7月16日、「竹島上空を飛行した韓国に対する日本政府の対応について雑感」(参照)では、私としては初めて日韓問題に触れて書いた。個人的には、この問題を大きく捉えるのは難しく、何か事あるごとに書き留める程度の書き方になるかもしれない。それでも少しずつ韓国を理解して行きたいと考え、この度の動きも押さえておくことにした。
社説の背景となっているのは、自民党の視察団が8月1日から4日で予定している韓国の鬱陵島(ウルルンド)訪問計画である。これに強く反対する韓国は、この計画の発端になっているとする日本の竹島の領有権の主張が背景にある。大韓航空のエアバスA380の就航を記念する飛行が竹島上空で行なわれたことに対して松本外相がメールで関係省庁に、大韓航空機の公的利用を一ヶ月間禁止する通達をした。これに抗議した韓国政府の態度に対して牽制する意味でも、韓国が建設中の独島博物館を視察しようと計画した。これが、今回の韓国の感情を一気に噴出させた原因となっている。
先の東亜日報社説の一部を引用することにする。
日本の自民党議員4人の鬱陵島(ウルルンド)訪問計画は、日本の「国の品格」と日本人の良心を改めて考えさせる。彼らは、来月2日に鬱陵島を訪れ、独島(ドクト、日本名・竹島)博物館を視察する計画だという。日本の議員がどれほど韓国を見下し、鬱陵島までやって来て独島が自分の土地だと言い張ることができるのだろうか。
日本外務省は18日から1ヵ月間、すべての職員に大韓航空の利用禁止令を下した。先月16日の大韓航空A380の独島上空テスト飛行に対する抗議の意思表示ということだ。外務省が話にもならないけちをつけ、今度は野党議員が常識以下の行動に出たのだ。日本の裁判所は21日、日本の弁護士も「最悪の判決」と酷評する判決を下した。東京地方裁判所は、日本の植民地支配期に強制徴用で生き残った韓国人を死亡したと処理し、戦犯と合祀した過ちの是正を求める訴訟で、「死亡者の名前が載っている霊璽簿は神の領域なので、いかなる表記も修正することはできない」という靖国神社側の手を取った。
冒頭からいきなり靖国問題に入っている。これを読んで、日本の野党の視察団が訪韓することに、これ程までに怒る必要がどこにあるだろうかと、韓国の過剰な反応に正直驚いたが、本気なのだとも感じた。それだけに、自民党の視察団がどれ程の意味を持って視察に挑もうとしているのか知りたくなった。
少し長いが、Youtubeで外務省の官僚と自民党の数名による「領土に関する特命委員会2011・07・15」で、8月1日からの視察に向けた協議の様子を聞いた。
外務省のメンバーが繰り返し「こちらは領土問題を話し合いたい。韓国は、靖国問題で反省がない。その一点張りでそこから話しが進まない。」と説明している。これに対し、野党議員(新藤氏)は口調を荒げて「竹島が日本の領土であることを主張しなければならない」と、この発言も協議というよりは、両者の主張を出し合っているだけで、具体的に踏み込んで議論するという内容ではないと感じた。印象として、野党メンバーには意気込みはある。が、韓国が燃え盛る火事現場だと仮定すると、その中へ防具無しで飛び込むような状況になるのではないかという印象を持った。外交のことは分からないが、この委員会にないのは政府の代表団という位置づけで、日本の政治家が訪韓することに感情論を持ち込む韓国政府に対して、政府同士の対等な立場で話しができないのが問題点ではないだろうか。その難しさを外務省の担当官が何度も説明を試みているが、この会合では野党メンバーの心に届いたとは思えない。
かくして日程の通り訪韓する方向で昨日きたところ、韓国から20日、正式に声明が出されたようだ(参照)。
【ソウル=黒田勝弘】領土問題関連の自民党議員団が来月初め、竹島(韓国名・独島)に近い韓国の鬱陵(ウルルン)島を訪問する計画を明らかにしたのに対して、韓国では「上陸阻止」論などマスコミや政治主導でまた世論がわいている。
特に強硬論を主張しているのは李明博大統領の側近の1人である閣僚の李在五・特任相(無任所相)。インターネットを通じ「独島を日本領と主張するための訪問なら韓国領土に対する主権侵害であり、絶対に許せない。あらゆる組織を動員し国民の名で鬱陵島上陸を阻止する」と“扇動”している。
そして、日本では民主党逢沢一郎国対委員長が、国会運営中につき訪韓は避けて欲しいと述べている(参照)。が、同時期に小池百合子氏のクエート訪問を許可しているため、訪韓に関しては特別に意味があって中止を要請していると思われる。
日が変わって先ほど産経が報じていることによると、自民党石原幹事長から中止の要請があったようだ(参照)。
石原氏は27日、鬱陵島訪問を計画した特命委の新藤義孝委員長代理らと党本部で約40分間会談。「韓国の状況は非常に厳しく、身の安全が保たれるか非常に心配だ」などと懸念を表明。さらに国会日程や政局が微妙な時期であることなども挙げ、視察を中止するよう求めた。これに対し、新藤氏らは「韓国を刺激しに行くわけではない。(視察を中止すれば)自民党の外交姿勢が問われる」と反発し、結論は先送りとなった。
視察を予定しているのは新藤氏、平沢勝栄、稲田朋美両衆院議員、佐藤正久参院議員の4人。佐藤氏はすでに参院から海外渡航の了承を得ており、一人でも視察する意向を示している。
後から引っ込みがつかなくなったという事だろうか。意気込んでいただけに中止となると体裁は悪いかもしれないが、韓国を本気で怒らせたら戦争になりかねない、という懸念も抱かないのだろうか。一人でも行くと話している佐藤氏の勇ましい姿は、元陸上自衛官であったからだろうか。
率直と書いて、ここではこの率直という言葉が何度も出てきて、これは自分でもはっきり言いたいのだと自己分析しても始まらないが、率直に言って、子どもの喧嘩レベルだ。これを言うと、子どもに失礼じゃないかと石が飛んできそうで困ったな。理性的な判断を仰ぎたいとしか言いようがない。血走って、勢いでやるのは祭りだけにしておくれと言いたい。あなた一人の興奮で戦争に巻き込まれるのは嫌ですと言いたい。
では、私はどう思っているか。私は、竹島を日本の領土とするためには、韓国と戦争して勝つ以外に道はないと思っている。では、戦争してまで竹島を日本の領土にしたいかと言われたら、そこまでして欲しいとは思っていない。その覚悟が日本の政治家にはあるだろうか。韓国は、中国や北朝鮮に挟まれて厳しい条件で国を守ってきている。北朝鮮の砲弾を受けた時も、応戦している。またそこで国民に、力不足を批判されて軍拡を意識している。負けん気の強い韓国と戦争をするような日本の姿を想像したこともないが、勝てるとも思わない。アメリカは、尖閣諸島とは違って竹島に関しては抑止のスタンスを取らないと思う。そういう覚悟があって乗り込むというのなら、仕方がない。市民から選ばれた政治家のすることであると、承服しないわけには行かない。
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