2011-07-26

中国高速鉄道事故後、中国が最も恐れていることについて雑感

 中国の高速鉄道で23日、大変大きな追突事故が起きた。現時点での犠牲者は、少なくとも死者35名、負傷者210名と報じている。中国政府の発表によると、落雷の影響で非常停止していた新幹線に後続の新幹線が追突し、両者で合わせて6両の列車が大破した(新華通信)。高架橋から落下した先頭の車両は早々に重機によってその場で埋るなどの片付け作業を済ませ、事故後38時間経った時点で運転が再開された。この事故に関して当初、ここで取り上げるつもりはなかったが、昨日、温家宝首相の声明をテレビの画像で見た時、書かずにいられない気持ちに変わった。
 いくら中国とは言え、事故の様子は各メディアが報じるとおりで、概ね事実なのだと思う。この事故を最初に知った時、これほどまでの惨事になるとは思いもしなかった。6月末に開業を喜ぶ式典から一ヶ月もたっていない。また、上海から北京に向かっていた高速鉄道(中国版新幹線)が13日午前、出力喪失のため江蘇省内で走行不能になる事故が起きた。10日に山東省曲阜市内で雷雨で架線が故障し、12日には安徽省宿州市内で電力供給設備が故障して緊急停止していた事を知った(参照)。4日間で起きた3回のトラブルによって、運転や車両に対する点検や注意点は、さらに強化されるものと思っていたため、今回のような最悪の事態になったのは残念だ。日本とは違って、国土の広い中国で高速鉄道が走り抜ける姿は、さぞ豪快なのだろうと想像し、個人的には楽しみでもあった。
 日本の新幹線は高度成長期に開発され、未来の都市をいろいろと思い描いたものだった。故田中角栄元首相の「日本列島改造論」によって、新幹線が日本列島を縦断する計画が進められた。その後、バブルがはじけ、思いのほか経費がかかる新幹線の運行に危惧を抱く政治家の声も聞くようになった。また、旧国鉄も民営化したため、路線延長を断念する地方自治体も出現し始めた。いつの間にか、夢の高速列車新幹線は、喜ばれなくなってきたのも事実のようだ。このことをはじめに知ったのは、今年の2月24日、極東ブログの「新幹線など高速鉄道はどこの国でも重荷になるだけらしい」(参照)で、いずこも同じで緊縮財政の折、維持費の問題は夢を断ち切るのかと落胆した。早速私も影響を受け、田舎の交通手段などを取り上げて考えたものだった(参照)。リニアー新幹線誘致では積極性を見せた諏訪だったが、どうやらこの市を迂回して操業されることになりそうだ。つまり、新幹線が停車する市町村は、観光客の足が止まることで市の発展や繁栄に期待を持つのは当然だ。だから夢の新幹線となるのは道理だ。つまり、中国もそのスタートを切ったばかりであった。
 今回の事故の影響として、今後の中国にどのようなものを齎すのかいろいろ思った。沿線の拡大計画や他国への売り込み、市民の不安をどのように払拭するというのだろう。今回の一連の事故の原因究明と対策が必須となるのは当然で、何よりも安全走行しかないと思う。が、どうだろう。中国政府はその物的資料を土に埋めてしまった。そんなバカな事があってはならないと疑ったが、昨日の早朝の新聞で確かにそう報じていた。一斉に世界中のメディアが突き出したのも然りである。ファイナンシャルタイムズですら、「Crash threatens China’s high-speed ambitions」と、大きく取り上げ(参照)、日経が意訳をつけて「[FT]中国鉄道事故、高速網整備や輸出に打撃」と、報じた(参照)。事故車両に土を被せて葬ってももう遅い。中国の信用はがた落ちだ。操業前から急ピッチで進む計画に対し、安全性の欠如を懸念する声も多かっただけに、人々の関心はそれ見たことか中国といったところだろうか。
 だが、私は、このように中国をバッシングしたり叩いたり非難するのは第二の犠牲者を生む結果になると思っている。もうこれ以上中国を吊るし上げにするのは止めて欲しいと思っている。危機としてこれを思ったのは、温家宝氏の引きつったような形相と甲高い興奮気味の声をテレビで観たからだった。
 中国政府は、世界が中国をどう見るかなどには関心を持っていないと思う。あるのは、中国国民への体裁ではないだろうか。今月19日、ウイグル地区の警察が何者かに襲撃された。この事件の前に、警察が平和的な抗議活動に発砲したことがあり、それが原因ではないかと「世界ウイグル会議」で明らかになったようだ(参照)。今、中国で起こっているのはこういった政府への反発であり、風通しが多少良くなった中国に世界の風が入ってきていることで国民が一党独裁政治や軍のあり方などに不満を持つようになったようだ。中国の人々は、ようやく人としての生き方を模索するようになってきたところだと思う。それはそれで結構なことだし、エジプトのようなクーデターやさらには革命が起こることも良いではないかと思っているが、煽るような行為は避けるべきだと思う。
 昨夕のNHKニュースがその辺を微妙に伝えていた(参照)。

また中国の経済紙の記者は、インターネットのツイッターで、テレビや新聞などを管理する共産党宣伝部が、国内のメディアに対し、事故現場での取材をやめ、国営新華社通信の記事を使うよう指示する通知を出したとしています。中国政府は、事故への対応を巡り、国民の間に政府に対する不信の声が出始めていることから、批判の声が高まらないよう神経をとがらせています。

 人の道から逸脱しているようなちぐはぐな表面を見せる時は、裏面で何かを繕う必然のある時だとネット上の友人に教えてもらって以来、中国の内情を努めて見るようにしているが、中国政府はただの悪漢でもない。ただ、政府の言うとおりにしない市民を押さえるため、圧政はさらに強化され、結果、市民に死傷者が出るようになる。その良い例が天安門の事件で、当時の中国の姿を象徴したものだったと言える。あれから時が経ち、中国も変化してはきているが、エジプト軍のような寛容さは中国軍にはまだないように思う。

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