2011-07-29

夕顔の話でも-夕顔と鯖の旨煮

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 夕顔というとせいぜい花のことか、源氏物語に登場する「常夏(ナデシコの古名)の女」の事を思い出すくらいだろうか。これで源氏物語がでる人は読書好きで、日本史にも詳しい人かもしれない。まさかに、あの干瓢(カンピョウ)がそれだと私は、思わなかった。干瓢料理と言えば、巻き寿司には欠かしたくないあの細長い煮物が多いかな。因みに、すし屋さんのレシピまでここにはあるよ☞参照。あの甘く醤油煮したものが、からからに乾燥した白い紐からできていることを知らない人だって多いはずである。自分で料理しなくても出来合いで済ませることも多くなった近頃では、こういうことは珍しくないし、知らないからと言って恥でもない。だが、ここ諏訪で、夕顔が干瓢の原料だということを知らないのは、恥ずかしいことかもしれない。それくらい干瓢がこの土地と密接な関係にあると思っても良いと思う。

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 夕顔がこの諏訪に多い理由は、寒天や高野豆腐、塩丸いかなどと並んで保存食文化の流れだと思う。周知の通り、長野県には海がない。代わりに山ばかりである。夏場に収穫した野菜などを乾燥させたり塩漬けにして保存し、野菜の少ない冬用に何とか蓄えようと、このような文化が盛んになったのだと思う。それが、今でも続いているのは、手製は他と比べようもないほど美味しいのが理由ではないだろうか。野菜の自然の味が、素朴な味付けで生き返ってくるようで、気持ちも満たされるのが嬉しい。また、どんなに不恰好なできばえの野菜でも、自分で耕した土が育てた野菜は可愛いものである。

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 偉そうな言い方をしているが、これもここ数年、自分で野菜を育てるようになって初めて実感が持てたというものでお恥ずかしい限り。
 さて、あの細長い干瓢を作るからには、実が沢山ないとできないわけで、どれ程の大きさを想像されるだろうか。聞いて驚くなかれ、今まで見た中で一番大きなのは長さが80cmくらいであった。太さは、大人の大きな手を三つ広げて囲む位、と言えば想像つくだろうか。これが、ごろごろと畑に転がっている風景は、壮観な眺めであることは言うまでもない。
 作り方は、2~3cmの輪切りにして、種の入っている綿のようなふわふわした部分まで、包丁でりんごの皮むき要領で薄切りするだけである。これがかなり長く続くのは、あの干瓢を想像してもらえば分かるとおりである。これを日陰で乾燥させれば出来上がる。手製の干瓢が食べられることはかなりの幸せ者で、自家製を食べてみたいと話すと、ご近所から直くに届くのでありがたいものだ。
 それで、まだ話しがある。夕顔とは干瓢にするだけのものとばかり思い込んでしまったのも恥ずかしいお話しで、実は、いろいろな料理で味わえる。ここでは、スープ(参照)や炒め物(参照)、蒸し物(参照)料理などで紹介してきた。夏場の瓜なので、水を沢山含んでいるため火が通りやすく、ツルンとした喉越しには感激する。夕顔と似て、冬瓜もその喉越しが楽しめるが、収穫時期は夕顔よりもやや遅い。真夏の冷たいスープは、夕顔でも楽しめる。

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 今日は、揚げ焼きの鯖と一緒に煮込んだ料理にしてみた。当初はここでレシピを紹介するつもりはなかったが、作りながらおいしそうになってきたため、黙っては入られなくなったのがこのエントリーを書くに当たっての経緯である。だから、美味しい。

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 鯖の切り身に片栗粉をまぶして香ばしく揚げ焼きにし、炒めた夕顔と一緒に煮込んだ料理でだけだが、味のポイントは、鯖のコクのある出汁と夕顔の甘みで、これだけで十分味が引き出せる。オクラを加えて最後に軽く醤油で香り付けする程度で出来上がる。時間があれば冷めてから冷蔵庫で冷やすと、なんだかビールや冷酒のおつまみにもなると思った。酢を加えて煮込んであるので、嫌味のないさっぱり感がとてもよかった。是非、お試しあれ。

材料

  • 夕顔・・300g(皮をむいて種を出して150g)
  • オクラ・・6本
  • 生鯖・・三枚下ろしの半身
  • 塩・・小さじ1
  • 片栗粉・・大さじ2
  • 水・酒・酢・・各半カップ
  • 醤油・・大さじ1
  • 生生姜・・みじん切り大さじ2
  • 鷹の爪・・1本
  • 細葱・・適宜

作り方

  1. 夕顔の皮の緑色の部分を剥いて中心の種の入っている綿の部分も取り除き、3cmほどに切って水にさらす。
  2. 鷹の爪の種を抜きとり、生姜をみじん切りにする。
  3. 鯖の骨を抜いて2cm幅のそぎ切りにし、片栗粉をまぶして余分な粉を叩き落とす。
  4. フライパンに大目の油を引いて中火で3の鯖の皮目を下に並べ、両面を香ばしく焼く。
  5. 4のフライパンの油を払って大さじ1ほどの油を引き、1の夕顔の水気を切って鷹の爪と一緒に炒める。
  6. 油が回ったところで水、酒、酢を加えて蓋をし、夕顔が透き通るまで約5分煮込んで火を一端消して余熱で火を通す。
  7. 夕顔がすっかり透き通ったら夕顔の上に3の鯖を並べて生姜のみじん切りと醤油を加えてさらに5分煮込む。
  8. 片栗粉が余っていたら水で少量の水で溶いて加え、とろみ付けにする。
  9. 味が馴染んだところで鍋を振って上下を軽く返して器に盛り付け、細葱を刻んで一振りする♪

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