2011-07-17

イスラエルを支持するアメリカ基盤で中東和平を唱えることの矛盾について雑感

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 アラブ連盟は、パレスチナ暫定自治区が9月の国連総会で独立国として加盟する方針に対して協議した結果、全面的に支持する考えを明らかにした(NHK)。アラブ連盟とは21の国から成り立っており、ここがパレスチナを後押しするということは、イスラエルを支持するアメリカ・オバマ大統領にとっては嫌な展開であることは間違いない。アラブ諸国やイスラムとの和平政策がますますやりにくくなる筈のオバマ氏からは今のところ何も聞こえてこないが、今年5月の中東和平に関する演説が微妙に読みにくかった(参照)。その時点での私の考えは、国連総会という国際会議の場で採択する運びとなれば世界は文字通り二分されてしまう。そうなる前に、アッバス氏に提出を諦めてもらうということをオバマ氏は暗に目論んだと見ていた。そのために、1967国境案に基いてパレスチナの要求をいくつかのもうということらしいというのが協議の肝だったのではないだろうか。これは、今までとなんら変わりないことだが、具体化できるかどうかが鍵であったし、何が違うかと言えば、国連総会の場を外すことだ。そのための最低不可欠な要求をのめば(この場合、イスラエルが)採択する案自体が消滅することになる。話し合いがまとまらずとも、時間の引き伸ばしにはなるとは思った。ところが、事態はオバマ氏の願った通りには動いていないようだ。現在の状況把握として、ニュースを拾って少し整理してみようと思う。
 今回のパレスチナ暫定自治区の独立と国連加盟そのものは実現不可能であると見られている。決議案として総会に提出する前に、国連安保理の常任理事国から承認され勧告を受けなければならないが、アメリカはイスラエルの唯一の同盟国であるため、拒否権を行使するはずなので全員一致を見ることはない。それでも、なおかつパレスチナが独立に向けて各国を訪問しながら賛同を得ようと動いている事を先のNHKでは次のように伝えている。

パレスチナ 国連加盟で米をけん制
パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は、12日、ヨルダン川西岸のラマラで、記者団の取材に対し「あくまで和平交渉の再開が最優先だ」と述べ、イスラエルが交渉の場に戻るよう、アメリカの働きかけの努力が必要だという考えを示しました。そのうえで、アッバス議長は「アメリカがパレスチナ側の立場に賛同し、国連で拒否権を行使しないことを望む」と述べ、アメリカに対し、和平交渉を再開に導けない場合はパレスチナの国連加盟を妨げないようけん制しました。

 国連の発足や組織は、常任理事国には都合よくできているので、加盟を求めるパレスチナもそれを承知の上での外交だとは思う。現在、パレスチナの特使が来日中で、昨夜遅くにNHKが報じているインタビューで、日本政府に支持を求める外交の目的もはっきりしている(参照)。

 日本を訪れているパレスチナ暫定自治政府のシュタイエ特使が、NHKのインタビューに応じ、「20年も和平交渉を続けてきたが進展は見られず、もはや限界だ」と述べ、交渉に失望感を示し国連への加盟に向け各国に働きかけていく姿勢を強調しました。日本政府はいまのところ、交渉を重視し、一方的な国連加盟には慎重な立場を取っていますが、シュタイエ特使は「G8・主要8か国の1つの日本がわれわれの立場を支持してくれれば、これ以上イスラエルによる占領は許されないという強いメッセージを送ることができる」と述べ、日本の支持に期待を示しました。国連への加盟には安全保障理事会の勧告が必要で、アメリカが拒否権を行使する構えを見せていることから、パレスチナの加盟は難しいとみられていますが、シュタイエ特使は「目標が達成されるまで挑戦し続ける」として、外交努力を続ける考えを示しました。

 アメリカから何も聞こえてこないのは、拒否権を使うことがはっきりしているため、今直ぐに対応することもないかもしれないが、パレスチナを支持する国が多くなればそれだけオバマ氏の今後の中東和平政策がやりにくくなる。これに向け、何か動きなどはないかと調べているうちに、イランのラジオ局のネットユースで7月7日付けの小さな記事を見つけた(Irib)。

 フランス通信によりますと、アメリカ国務省のヌーランド報道官が、「アメリカ政府は国連でのパレスチナ国家の正式承認に向けた努力をよい考えだとは見ていない」と述べました。
 ヌーランド報道官の発言の一方で、6日水曜、パレスチナ自治政府の上級交渉担当者とアメリカのデイヴィット・ヘール中東和平担当特使、およびデニス・ロス元中東特使と会談しました。
 一方、アメリカ下院のイスラエルの利益の主な支持者である共和党のエリック・カンター下院院内総務は、敵対的な口調で、「パレスチナとイスラエルの問題は唯一協議によって解決することができる。この問題を国際的な注目を引き付けるための道具に使うことで、協議を軽視すべきではない」と語っています。

 フランス通信の直訳だろうか。かなり私情を含んだ記事だと思うが、「協議によって解決できる」というアメリカ側の意見は、イスラエルに言うべきことじゃないかとこの際思う。これまでの経緯から、イスラエルが協議のテーブルにつかない張本人で、そのイスラエルにアメリカが交渉できない理由に在米のユダヤロビー*1の存在は大きいと思う。
 アラブ連盟の後押しに始まりパレスチナが活発に独立に向けた外交を進める中、アメリカの拒否権によって独立自体は実現できなくとも、賛成国を相手にオバマ氏の和平問題に対する姿勢を表明しないわけには行かない状況にはなると思う。イスラエルとパレスチナ暫定自治区を前に平和とそのための協議の必要性を公言しながら、土壇場になればイスラエルの肩を持ち、パレスチナには歩み寄れとは。これは二枚舌と言われても仕方がないかもしれないが、その罵倒で帳消しにする問題ではない。

*1)ユダヤロビー:米国には約530万人のユダヤ系市民がおり、活発な政治活動で知られる。その数は、米国の人口の2%以下に過ぎないが、その組織率と投票率の高さ、大統領選挙の際に重要なニューヨークやイリノイなどの州への人口の集中、マスコミ、大学など言論界での発言力の大きさなどの要因が合わさって、政治的に無視できない力を有している。伝統的にユダヤ人の大半が民主党支持で、民主党の大統領には特にユダヤ人の影響力が強い。しかし、近年になって共和党支持のユダヤ人も増えてきた。その諸組織は、ユダヤ・ロビーとして知られている。ユダヤ・ロビーは、その力をイスラエルのために行使してきた。       
( 高橋和夫         放送大学助教授 )

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