2011-07-15

8日の抗議集会から一週間のエジプト情勢について雑感

 先週の8日、エジプトで起きた最高軍事評議会のこれまでの対応に対する抗議の集会から一週間になる。当時の状況は「8日のデモにまつわるエジプト情勢について雑感」(参照)でまとめてみたが、軍の対応も出てきているので状況を把握しておくことにした。
 市民の抗議に対応する措置として、BBCが報じているエジプト政府の対応が意外だった(参照)。

Egypt to sack 700 police over killing of protesters
Protesters have again struck camp in Tahrir Square following Friday's massive rally
Continue reading the main storyAlmost 700 senior police officers in Egypt are being removed from their jobs over the killing of protesters during the revolution earlier this year.
Interior Minister Mansour Essawy said 505 generals and 164 officers would end their service on 1 August.
The move comes as protests continue in Cairo's Tahrir Square, calling for the speedy trials of police officers and corrupt Mubarak-era officials.
The military also confirmed that polls set for September would be delayed.
"It has been decided to hold [parliamentary elections] in October or November," an official from Egypt's interim ruling military council told the Mena state news agency on Wednesday.
Many of Egypt's new political parties have called for the vote to be delayed so that they can compete against better organised and more powerful opposition groups, notably the Muslim Brotherhood.
On Tuesday, the military said it would draft guidelines for selecting the 100-member assembly that will write a new Egyptian constitution. That could make it more difficult for any Islamist-led legislature to choose the body and thereby give the charter an Islamist slant, analysts say.

 市民の抗議を受け、エジプトの内務大臣は、505名の警察幹部と164名の幹部役員を8月1日に解雇する方針を固め、9月に予定されていた議会選挙を10月か11月に先送りすると発表した。これについて、選挙が予定通り9月に行われると、圧倒多数を有するムスリム同胞団の勝利となる事を懸念するエジプトの若手運動家らの要望を受けられた形となった。
 また、Twitterでのクリップ、時事通信社の「改革停滞、国民に不信感=首都の広場で抗議再開―エジプト」でも次のように報じていた(参照)。

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改革の加速を要求する勢力は、首都カイロのタハリール広場で泊まり込みの抗議を再開した。国際海運の大動脈、スエズ運河の出入り口に位置する東部のスエズでも、デモ隊殺害に関与した警官の保釈をめぐりデモが激化。デモ主催者は「(行動を)エスカレートさせる」と宣言した。
こうした動きの背景には、旧政権要人やデモ隊殺害に関与した警官の訴追が進んでいないことや、9月の人民議会(国会)選挙を遅らせて新憲法の制定を先行させるべきだとの声に軍評議会が応えていないことへの不満がある。
軍評議会は、シャラフ首相に1週間以内に内閣改造を行うよう指示。旧政権寄りとされる閣僚が更迭される見通しだ。
 ただ、軍評議会のファンガリ少将は12日に国営テレビを通じて演説し、「抗議行動の際の逸脱行為や国家機関への妨害行為には断固対処する」と警告。民政移行に向けた国家のかじ取りを譲る用意はないと表明した。(了)[時事通信社]

 まず、警察の幹部や役員の解雇の数や旧政権よりの閣僚を更迭したり、内閣改造を模索したりと、とにかくエジプト市民の怒りを静めるために至れり尽くせりという対応だ。束となって抗議する市民の訴えを聞き入れた形となり、これを「第二の革命宣言」だと勝利を喜ぶ市民もいるようだが、最近、これが滑稽に見えてきた。
 時事通信社の誤訳でなかったら、この軍の声明もおかしなことを言っていると思った。エジプトは軍政であり、それを譲る気はないと言うのならともかく、「民政移行に向けた国家の舵取り」と、わざわざ表現する辺りは、市民感情に配慮するあまり言葉を間違えたのじゃないか。一方、エジプト市民もなんとなく矛盾している。
 ムバラクという独裁者を排除することには成功したが、エジプトの軍評議会は国家の最高議会という位置づけのため、この旧態に革新的な改革を求めるのは不可能なことだと思う。「改革」を起こしたくても起きないのが現実だと思う。と今は断言できるが、2月の争乱直後は、エジプトの国が変わるのではないかと錯覚したこともあった。
 若手の運動家らが、革新を求めて軍評議会を相手取って対立的な行動を取れば、無駄な血を流すこととなり、議会や大統領、憲法改正を遅らせてしまうことになるだけだと思う。矛盾点は、エジプトの革命家や若手運動家らは当初、これを訴えてきたにも関わらず、ここで早期の選挙に反対したため、10月か11月に遅延した。つまり、ムスリム同胞団を置いて、自分らの要求を通せということではないかと思う。それは、軍政に対してないものねだりに過ぎないことだが、これが通ると現状で正気でそう思っているとしたら、若気の至りではにだろうか。私は、エジプト軍政に保守的な立場でもなんでもないが、この見方は常識的だと思ってきた。これが間違った見方だとしたら、この先に起こるのは、軍打倒の動きかもしれない。そうなれば、再び多くの血を流し、治安は悪化し、国の経済も破綻してしまうのではないか、と、よからぬ方向へ妄想してしまう。
 ムスリム同胞団はどういう動きをするだろうか。ムスリム原理主義というイデオロギーを持つ大きな集団となれば何が起こるかと、しばらくエジプト情勢からは目が離せない。
 また、日本のメディアで一番新しい情報では昨日、エジプトの内閣改造を一週間以内に行うと報じている(参照)。

 首相は内閣改造を「革命の目的を実現するためだ」と説明。イサウィ内相に対し、15日までに民衆蜂起の弾圧に関与した幹部を内務省内から排除するよう指示したと述べた。司法当局にも容疑者の訴追を加速するよう求めたという。さらに、一部の県知事を7月中に置き換える意向も示した。
改革停滞、国民に不信感=首都の広場で抗議再開―エジプト

 どうにも変わりようのないエジプト軍政ではあっても、内相の声明の「革命の目的を実現するため」と言う言葉遣いからも、市民感情に対して相当の配慮をしていることがうかがえる。

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