2011-07-20

物騒な事件が相次ぐアフガニスタン、それでも撤退するアメリカ

 今日のエントリーはちょっと悪乗りして、刑事コロンボ風に初めから犯人を明かしてから推察を入れる流れにしみようかなと思う。しかも、これが自分で導き出した結末まではないのでその分、人の道筋に気楽にのっかるという軽い気分で書いてみたい。それにも理由はあるが、後で分かると思う。and自己弁護を言っちゃうと、私レベルだからだが、二日間もPCに張り付いてアフメド・ワリ・カルザイ氏殺害の謎解き一点で向き合っていた。その成果も多少はあって極東ブログの話がすんなり読め、腹に落ちた。さて、その話しとは。
 アフメド・ワリ・カルザイ氏とは、アフガニスタンの現職大統領の弟である。12日、南カンダハルの自宅で護衛に射殺された。また。18日、アフガニスタンの首都カブール(Kabul)で17日、武装グループがハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領の側近、ジャン・モハマド・カーン(Jan Mohammad Khan)氏の自宅を襲撃し、同氏を殺害した。その場に居合わせた南部ウルズガン(Uruzgan)州のモハマド・ハシェム・ワタンワル(Mohammad Hashem Watanwal)議員も殺害されたとAFPが報じた(参照)。そして、間髪入れないタイミングで旧支配勢力タリバンが犯行声明を出している。普通ならこれで終わりであるが、実はこの犯行は、アメリカのCIAかオバマ政権がタリバンとの何らかの結びつきによる犯行ではないかというのが結論だ。
 これは、アフガニスタンから撤退する事を決めたオバマ政権が、その後のアフガニスタンの平和を願っての結果であるというのが真相ではないだろうか。でも、Untouchableなストーリーだ。ここを読む方も、ここから先の部分は、ちょっと探偵気分で一緒に考えて欲しい。
 オバマ政権、ないしはCIAと旧反政府勢力タリバンとの結びつきまでは流石にたどり着けなかった私だが、この殺害とアフガニスタンの権威移譲を祝う式典を報じるタイミングが18日であったため、いとも簡単にタリバンの犯行ではないかと騙された嫌いがあった。そして、タリバン以外の殺害者の可能性を疑う余地を与える間もなく、タリバンが犯行声明を出している。NHKニュースでこの式典の事を報じた時、今後のタリバン勢力を懸念する一言までもが付け加えられていた(参照)。

バーミヤン州は治安が比較的安定していますが、反政府武装勢力タリバンによるテロを警戒して、この日の式典は事前に公表されず控えめなものとなりました。

アフガニスタンでは、先週から、駐留する10万人のアメリカ軍の撤退も始まっており、2014年末までに戦闘任務を終えるとした国際部隊の「出口戦略」が本格化することになりますが、タリバンが各地で勢いを増すなか、現地の軍や警察が治安を維持することができるのか懸念する声も出ています。

 NHKがアメリカ政府と結託したと、そこまでのことは無いだろうと勿論思っているが、このニュースによって殺害の犯行は、タリバンによるものだとますます思い込む羽目となった。が、逆に、私がアメリカの動きがおかしいと思ったのはこの辺からだった。加えて、一連の殺害の犯行をタリバンがこれだけはっきり認めているにも関わらず、米政府は暢気に人事を動かしていることを知った。
 イギリスのBBC(参照)とファイナンシャルタイムズ(参照)がほぼ同時に18日午後3時ごろ報じ、日本では翌日19日、日経のワシントン支局から簡単な記事を出している(参照)。この記事を引いてきた。

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 【ワシントン=大石格】アフガニスタン駐留米軍のペトレアス司令官は18日、指揮権を後任のアレン司令官に引き継いだ。ペトレアス氏は中央情報局(CIA)長官に就任する。アレン氏は「(3万人増派の)勢いを維持したい」と述べ、反政府勢力タリバンの抑圧に努める考えを示した。
 米軍司令官は北大西洋条約機構(NATO)加盟国などを束ねる国際治安支援部隊(ISAF)司令官を兼ねる。増派後2代の司令官を務めたマクリスタル、ペトレアス両氏はイラク戦争で英軍との共同作戦の経験がある。アレン氏は米軍以外を指揮するのは初めてで、円滑な意思疎通ができるかどうかが焦点となる。

 タリバンが騒ぎ始めているにも関わらず米軍が撤退を始めれば、ますますアフガニスタンは目が離せなくなると言うのが一般的な見方で、私はこの人事が疎ましいとさえ思った。米軍の指揮に当たった経験しかない上官にNATOの面倒まで見させて大丈夫かよと思った。だから、この人事をタリバンがあざ笑うかのように、アフガニスタン政府の要人の殺害をやってのけたと言うものだろうと、アメリカの脇の甘さくらいに思っていた。
 アメリカは一体何を考えているんだろうかと、次第に疑心暗鬼になってきたが、何一つ確信が持てない状態だった。また、ぺトレアス氏がCIA長官に就任するというのが分け分からん状態に陥る一つだった。実は、これが紐解きの時のコツだと以前、教えてもらった。つまり、表向きの不整合は、裏に別の理路があることを意味していることが多い。正当性や整合性が見えない理由だと思った。
 軍人をCIAの長官に配置する意味は、アメリカ政府がタリバンと背後でとつながるための情報機関である必要としか言えないが、これは、今後のアフガニスタン情勢を円満にする意図的な意味があるため、不慣れなアレン氏の就任はあまり問題ではないのだろうと思った。実際の指揮はCIA長官であるぺトレアス氏であるか、二人がタイアップするということで問題はないと見た。
 さて、私にとってはこんな野蛮な方法でと言いたいが、これはアメリカの今出来る知恵の頂点かもしれないと思った。まだ陰謀論の域を超えているわけでもないが、極東ブログの得意技である裏読み「アフメド・ワリ・カルザイ氏殺害を巡って」(参照)が助けになった。
 ポイントは、カルザイ大統領は、アフガニスタンでは人気がない。だか、親米派で、アメリカにとっては都合は良い。アメリカ軍がいなくなれば、国外逃亡を考えざるを得ないと思っていてもおかしくない人物である。これらをオバマ政権は利用して、彼がアフガニスタンに居座れるようにするための動機とした。
 第二に、殺害された弟は異母兄弟でカルザイ大統領とは実はあまり近しくない。麻薬の密輸などに手を染め、何かとトラブルの恐れのある目の上のたんこぶでもあった。そのため、彼の死を痛むよりも、むしろ抹殺の方が何かと都合が良かった。というのはアメリカにとっても同様の利益で、軍を撤退させた後カルザイ氏には棘の道よりも花道を用意したことになる。不甲斐ないカルザイ大統領にどうやって今後のアフガニスタンを任せるか、頭をもたげた結果、搾り出した知恵ではないだろうか。
 どうだろうか。私の腹にはこれで落ちた。そして、最後にリビアに触れて、まるで次の謎解きを予告するかのように思えた。

 いずれにせよ、西側諸国はアフガニスタンを民主化するというより、タリバンと共存していくという選択しかないし、NATOが壊滅するよりはましではないかという合理的な選択とみるなら、さすがに切れ者だなあ、オバマ米大統領とも思える。
 そして、この方式は、たぶん、リビアにも適用するのだろう。

 このリビアだが、昨日、ロイター記事を引いた産経がこんな事を報じていた(参照)。

米、カダフィ政権側と会談 早期退陣を直接要求(2011.7.19 10:31)
 ロイター通信などによると、米政府当局者は18日までに、リビアのカダフィ政権の代表者とチュニジアで会談し「最高指導者カダフィ大佐が退陣することが、前に進むための唯一の道だ」と指摘、早期の退陣を直接要求した。
 米国は15日、リビア情勢をめぐる連絡調整グループの外相級会合で、リビア反体制派「国民評議会」を「正統な統治機関」として承認すると表明。これを受けてカダフィ政権側と会談したが、米国務省当局者は「退陣を迫るメッセージを伝えるためだけに行われた」と述べ、交渉は一切していないとした。(共同)

 これが目に止まった理由は、カッダフィー政権側と国連側であるアメリカとの対話が直に行われている点と、こんなに大きな出来事であるにもかかわらず、なぜ報道がここまでこじまりしているのかというアンバランスだった。「メッセージを伝えるだけ」というコメントはわざとらにも見えるし、何か裏取り引きのようなものでもあるのではないかと思えた記事だった。
 アフガニスタンのカルザイ大統領の事例で「リビアにも適用」してみると、カッダフィーが格好良く退陣できるため、誰を生け贄にするか、とそっちへ気が行ってしまうが、どうだろうか。
 今後を注視して行きたい。

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