先日、菅首相は国会で、自らの政治資金管理団体「草志会」が、北朝鮮拉致事件の容疑者が関係する政治団体に献金していた問題が取り上げられ、菅首相の歯切れの悪い答弁に批判が出ていた。この問題について、山谷えり子氏から領収書の存在を明確にするべきだとして、質問が何度か繰り返し行なわれた。私は、たまたまこの時間にこの様子をラジオのFM波を通して聴いていた。つまらない問題を取り上げるものだと当初思っていたが、菅首相が献金を受けているのではなく、献金した側であることは不思議だった。そもそもそういうことはあまり聞かない話である。しかも、その献金と拉致問題の何に関係があるのか、それさえも不透明だと思っていた。何が論点なのかよく分からないながらも、何か裏で動いているとしたらそれは何かと、気がかりではあった。未だに何もわかっていない状態だが、昨日、妙な記事を見つけたこもあって備忘的にまとめて置くことにした。
国会で質問された領収証の件から、当時の菅首相の対応はこうだった(時事2011/07/21-15:57 )。
「団体が(拉致事件と)関係あることを知らなかった。(政治団体と)連携活動をしていたことについて大変申し訳なく思う」と陳謝した。同時に「そうしたことがあるのであれば、政治的な付き合いは控えたい」と語った。自民党の山谷えり子氏への答弁。
参考人として出席した拉致被害者家族会の増元照明事務局長は、横田めぐみさんの母早紀江さんが「何を信じていいのか分からない」と嘆いたことを紹介。拉致事件解決に首相がリーダーシップを発揮するよう訴えた。
首相は7日の同委員会で、拉致事件の容疑者の親族が所属する政治団体に関連する神奈川県内の政治団体に対し、「草志会」が2007~09年に合計6250万円を献金していたことを認め、「当時、党役職者としての職務を果たすため、ローカルパーティーとの連携・支援のため寄付した」と説明していた。
寄付を認め、返金されたと答弁したため、その領収証の提示を求められていたのが私がラジオで聞いた部分だ。この一連のやり取りから、首相の拉致問題関与が個人的な人気取りであると推論され、野党から批判が出ている。また、それだけではなく、これはスキャンダルだと取り上げられているようだ。ここでやっと、献金の意味が分かったかに思ったが、これはあくまでもメディアが報じている政局の文脈に過ぎず、真相は明らかではない。また、菅首相は意図的ではないと答弁している。この事実関係を追ったところで北朝鮮側は、拉致問題は終わっていると一貫した態度であるし、これでは問題に切り込む糸口がないと思っていたが、昨日の産経「裏切り行為」自民から批判噴出 菅首相訪朝模索と中井氏の極秘接触」(参照)で、具体的な動きがあった事を伝えている。
菅直人首相の北朝鮮訪問を念頭に中井洽元拉致問題担当相が北朝鮮の宋日昊・日朝国交正常化交渉担当大使と21、22両日に中国で極秘に接触していた問題について26日、自民党外交部会で批判が噴出した。
小野寺五典部会長は同日の外交部会で「日朝の直接会談を首相の命を受けた人がやっているということは外交上、大変な裏切り行為だ」と指摘。北朝鮮問題解決のため南北会談の優先を確認した日米韓外相会談と同時期に首相側が「非公式なルートでの接触」を行ったことを問題視し、国会などで首相や中井氏を追及していく考えを示した。
一方、外務省は中井氏の行動について「事前に承知していなかったし、一切関与していない」と説明。その上で「いますぐ日朝対話を調整していることはない」と述べ、日朝の直接交渉よりも南北対話を優先する考えを強調した。
この記事から、何が裏切り行為か全く見えなかった点と、菅首相と北朝鮮問題を結びつける動機としてみてよいのか、それが政治家としての人気取り行動としてみてよいのか全く分からない。ただ、そうだとして野党が騒いでいるというのは理解できる。ここで一点目の疑問である裏切り行為が何であるか、絞ってみた。
野党の批判は、日米韓外相会談で南北の話し合いが優先させているにもかかわらず、菅首相が中井議員を使いにやり、菅首相と朝鮮の直接会談を取り付ける段取りをしているのがその元になっているらしい。この背景となる、日米韓外相会談の目的と会談内容を調べると、毎日の「日米韓外相会談:北朝鮮非核化へ具体的行動促す」(参照)が分かりやすい。
【ヌサドゥア犬飼直幸】松本剛明外相、クリントン米国務長官、韓国の金星煥(キムソンファン)外交通商相は23日午後、バリで日米韓外相会談を開き、22日の南北対話を歓迎しながら今後も継続・前進すべきプロセスだと強調した。一方、6カ国協議再開に向けて、北朝鮮にウラン濃縮計画への対処など非核化に向けた具体的行動を促すことで一致し、共同声明として発表した。
声明では、北朝鮮の挑発行為には結束して対応する姿勢を示す一方、中国やロシアとの協力を一層進めることも一致したと記述。拉致問題解決のため北朝鮮に行動を取るよう要求した。
会談で松本外相は「南北対話の進展後、米朝、日朝対話を経て6カ国協議の再開につなげるという流れを我々は支持する」と強調し、南北対話の進展次第で日朝協議も検討する考えを示した。
この会談は、六カ国協議再開に向けた北朝鮮の非核化を目標とする日米韓の合意の確認であると思う。南北朝の対話に期待するというのは確かにここで確認されているようだが、これと菅さんの動機が全く整合しない。野党の批判は、菅首相が北朝鮮との拉致問題に個人的にアプローチしようとする件に寄っている。六カ国協議を目的とした外相の動きに何ら関係ねーと、私はここで判断した。
では、だから問題が残るのが困りもの。菅さんのうっかりミスは良くあるが、拉致を実行した犯人の家族だという人物との関係で、菅さんの資金団体である「草志会」が献金した理由と、北朝鮮との直の関わりの真相が見えてこない。ご本人は否定しているが、何かが動いているようでもある。
昨夜遅く産経は、枝野氏の発言と菅首相の答弁を次のように伝えている(2011.7.26 22:44参照)。
「首相の外国人献金の返金領収書 「発言は控えたい」枝野氏」
枝野幸男官房長官は26日の記者会見で、菅直人首相の資金管理団体が在日韓国人から違法献金を受けた問題をめぐり、首相が返金時の領収書の国会提出を拒んでいることについて「国会の参議院予算委員会の理事会で議論されている。行政府が何か申し上げるとお叱りを受けるので、発言は控えたい」と述べた。
首相は21日の参院予算委で、領収書の国会提出に関し「予算委理事会で議論してほしい」と答弁。理事会で結論は出ていない。
野党が疑念を抱く理由とは違う理由があるなら、一連で問われている献金がどういった目的であったかはっきり釈明すべきで、この点が払拭されないまま推論が起こり、別の疑惑へと話しが広がっているようだ。予算委員会で議論する問題というよりは、菅さんが率直に答弁すればよい話ではないだろうか。そして、全ては菅下ろしへつながって行っているように見える。蛇足だが、文責もはっきりしない、割りと若い層に読まれているニュースサイトかとおぼしきところに「“売国菅”裏切りの訪朝画策「全真相」…これじゃ世界の笑いもの」(2011.07.26ZakZak)のような推論の上に理屈をつけて菅叩きをしているような記事もあって、何をどう読めばよいのか困惑した。
以上のように記事を読んだだけに過ぎず、菅さんの献金問題は全く見えてこない。
昨夜遅く、極東ブログの「菅直人首相の資金管理団体は、なぜ特定の政治団体に献金していたのか」(参照)でも取り上げていて、こちらは、献金目的を別の視点で見ているようだ。結論は出ていないもようだが北朝鮮との問題は切り分けて、公職選挙法違反の文脈で考察されている。献金先は、選挙ブローカーではないかとするNewsweekの推論を辿っているようだ。この話は、菅首相と献金先とのつながりがストレートに見えてくるし、政治家が献金する側に立つケースとして見過ごせない問題でもあると思う。
全体として、北朝鮮との関係も不透明であるし、辞任前にすっきりとさせてもらいたい問題だと思う。
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