日本の庭先で中国とASEAN諸国が係争中について雑感
5月の下旬、中国とASEAN諸国が南シナ海の領有権問題で牽制し合い、中国は独自のオンラインマップ「天地図」に勝手にベトナム領海に自国の領海線を入れたとしてベトナムから抗議を受けていた(参照)。この地図に昨年気づいたベトナムは、それまでにも度々この海域で中国船との接触があったと報じていた。私がこの問題を始めて取り上げたのは5月26日で、その時点では、6月3日に予定されていたアジア安全保障会議でASEAN諸国の結束がさらに強くなり、中国との緊張が高まるという状態だった(参照)。
ここでの視点は、アメリカがどのように関わるかで、例えば、日本はアメリカと同盟国であるため、守られているという意味では、中国とASEAN諸国との問題には直接関係することはないと思っていた。が、尖閣諸島沖で日本の巡視船が中国漁船から接触された事件でもわかるとおり、中国の干渉は、特にベトナムやフィリピンに対しては執拗な態度だった。南シナ海で起こる問題は、明日は我が身という緊張感が日本にあっても然るべきだと思う。つまり、中国の動きにはには目を光らせておくべきだという警告のようなものは感じていた。
そして、昨日の朝のNHKニュースで、アメリカとフィリピンが中国を牽制する狙いで合同演習を行うと報じているのを耳にした。この時点では自分の知っている情報の範囲から想像して、さもありなん事と平常心で聞いた。が、昨日、この一連の係争の発端は2月、中国がベトナムの漁船に威嚇射撃をしたことだったと極東ブログの「2月25に中国艦艇がフィリピン漁船を威嚇射撃した事件をNHKは6月29日にわかりましたとさ」(参照)で知り、驚いた(参照)。と言うか、漁船が接触されて牽制された云々の話しじゃない、一歩間違えば、戦争へと発展する問題だと思った。また、半年近く前にそのようなことがあったというのを何故、今頃報じるのかという懐疑的な思惑もあり、冷や汗が出た。
国際的には6月の2日、フィリピンで2月25日に中国から弾丸を受けた事を報じていたそうだ。今更言っても始まらないが、でも言いたい。言わせてもらいたい。
6月14日のエントリーでベトナムが実弾演習を行ったことを報じる産経記事を引用し、中国とベトナムがさらに緊迫状態になったことを取り上げたが(参照)、この時点でも日本のメディアでは事の発端を伝えてはいなかった。私は、尖閣諸島で起きた漁船の接触事故と同じ手口だとばかり思っていたため、というか、そのようにしか報じていなかったため、ASEANの異様な緊張状態から、そこまで迫る中国の切実感は何から来ているのだろうかと、そちらにばかり気を取られてしまった。
そして、フィリピンが威嚇射撃を受けたことを最初に報じたのもNHKのようだ。極東ブログでは、その理由を模索したようだが、それは、私にとっても関心事であった。
しかし、この6月2日の記事からして、6月頭には確認されていたと見てよいのも確かである。当然、NHKも6月上旬には確認できたはずなのだが、なぜ6月末まで報道が遅れたのか、またなぜこのタイミングでの報道だったのか。奇っ怪。
この「なぜなぜ」の先に、事実と前後しながら報道を順追って調べられているが、少しずつアメリカとASEAN諸国との関係が親密になっていっている様子が窺える。が、6月23日毎日の社説は倒錯しきっていた(参照)。
とはいえ、「対中国」の柱が外交の強化でなければならないのは明らかだ。日中両国が掲げる「戦略的互恵関係」の前進を図るには、尖閣諸島沖衝突事件で損なわれた両国関係の立て直しを急ぎ、相互の政治的信頼の増進を基礎としたさまざまなレベルでの交流や協調行動の拡大が必要である。当面は防衛交流の再開やアジアの災害に対する協力の具体化などが挙げられる。また、日米関係だけでなく、中国との間で課題を抱える東南アジア諸国との連携を強化することも有益である。こうした重層的な対中外交戦略の構築こそが両国関係を前進させる基礎となる。
この文面から、今にも威嚇射撃されるかもしれないという緊張感は全く感じられない。両国関係の立て直しをするような暢気な場合ではなかったはずで、自衛隊をどう配備するのかなど、積極的にアメリカと話し合うべき時ではなかったかと思う。そこにメディアは何故視点を向けないのかが分からない。漁船には、操業中の注意を促すような手配が政府から出てもおかしくない。それがあったのかなかったのか、メディアがテーマにして報じるのはそういうことではないかと憤慨した記憶がある。
無政府状態とは言え、政府が守らなくて誰が市民を守るというのだろうか。この一連の報道を後から知り、ここにこうして生きていられるのは、ただの偶然の連続でしかないと思った。それで命がつながっているだけなのかと思うと、ぞっとしている。
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