2011-06-25

「震災恐慌!~経済無策で恐慌がくる!」-これからの日本の「常態」を知る

 私の住む町、諏訪がここまで危機的な不景気を呈しているのは、地方都市だからだろうか。相変わらず各紙の社説は暢気な書きぶりで、それを目にすると、ここだけが特別なのかと思いたくなる。政治家はこの現実を長く放置し、無機能な政府となって自分達の政局のことに明け暮れている。また、メディアはこの現実を率直に伝えない。これらの阿呆ぶりに些か切れてこの間も、「無政府状態に何をか言わんやだが、ちょっと一言」(参照)に書いたばかりだが、どうやらこの状態に腹を据えろと言わんばかりのタイトルの本が出現したようだ。

cover
震災恐慌!
経済無策で恐慌がくる!
田中 秀臣・上念 司

 「震災恐慌!~経済無策で恐慌がくる!」(田中秀臣・上念司)(参照)。この書籍の案内人はいつもの極東ブログである(参照)。まだ、出版されたばかりのようだが、書評を読むに、出来るだけ早く読んだ方がよさそうな気がしたので早速注文した。そして、書評を読んで、本書を読んでもいないのになんとなく読んだ気になってしまった。理由は、引用されている短い部分に私の思っている殆どのことが網羅されているからだ。が、一点だけ、思いがけない案が提示されていた。その部分にも触れて考えてみたいと思った。
 「震災恐慌」とは、東日本震災後にやってくる経済恐慌のことをさしているらしい。それは、気づかないうちに慢性化した胃潰瘍か何かみたいにじんわりとやってくるような印象を受けた。その部分は、こんな風に紹介されている。

テーマである「震災恐慌」とは何か。
東北大震災が引き金となる経済恐慌である。が、1929年から始まった世界恐慌とは異なる。むしろ穏やかであるかもしれない。どのような風景となるのか。

田中 そこで一番怖いのは、震災で落ち込んだことではなく、マイナス成長が長年にわたって続いていくことです。すると、みんな疲れてくる。その中で、とくに被災地域を中心に、東北が見捨てられるような状況になってしまったら、やはり多くの国民は、政府に対する根深い不信感を抱くと思うよね。今は、寄付だってみんな一生懸命やっているけど……。
 最悪のシナリオは、金融緩和は行われず、消費税だけが増税され、震災復興はしょぼい予算の組み替えだけで、だらだら続きます。税金を払う側はとられ放題で不満がたまり、救済としてもらう側も「こんなにしょぼいのか」と不満がたまり、国民全体に不満がたまっていく可能性がある。しかも、経済はどんどん縮小し、失業率が上がっていく。
 失業がかなり深刻な状態になると、雇用調整助成金みたいなものがどんどん出されるようになり、民間企業に勤めているけれど、半分公務員みたいな人たちがどんどんふえていくことになる。
上念 つまり、今回の震災が、みんなが平等に貧しくなっていく始まりになりかねないわけです。穏やかな震災恐慌がずっと続いていく始まりであると……。

 ここで言われている「最悪のシナリオ」が、先に挙げた私の住む諏訪の実態なので、言われているとおりのことが既に起こり、その皺寄せと不満が気づかないうちに蔓延し始めていると実感している。これに対処する方法として、私は今まで二つしか考え及ばなかったが、次に上げる三点が本書では挙げられているという。これが注文を急いだ理由だ。

1つは、財源を復興増税という名目で、増税によってまかなう方法。
2つめは、政府が復興国債を発行して民間から資金を集める方法。
3つめは、復興国債を政府が発行して、それをそのまま日銀にお金を刷らせて、直接買い取らせ、それを財源としてまかなうという方法です。

 1番が最悪のシナリオであることは私も常々政府批判で取り上げ、その対極として3番を挙げていた。理由は簡単で、1番のダメな理由から原因を抽出して、好転させるために反対の方法を考えれば自ずと答えが出て来るのが3番だからだ。この数学的な方法で考え付かなかったのが2番だった。書評ではこう述べられている。

リバタリアンの私としては、もう少し希望的に見るなら、本書では十分議論が尽くされていない二番目のシナリオ「政府が復興国債を発行して民間から資金を集める」がよいのではないかとも思う。そのためには、この間に考えつづけたことの一つであるが、日本国民が日本の復興を信じようとする緩和なナショナリズムが必要なのではないだろうか。

 1のダメから3の180度対極の最良へ数学的に結びつける前に考慮すべき点は、日本人の持つ心ではないかなと思った。先の田中氏の語りの引用にもふんだんに触れられているように、意欲や気力、助け合おうとする心は見捨てたものではない。世界からもこの友愛の心は絶賛を受けた。無意識に心が動いて、そばで苦しむ人に寄り添ってきた私達の心が底力と言うべきか、何かそのようなものにしっかり支えられて来ていることを忘れていた。
 本書で十分議論されてきていないのであれば、そこがやりがいと言うか、その実際を実行に移して行く事かもしれないと思った。まあ、まずは読んでからということだが、このまま放置すれば1番で進むしかないが、2番なら私達からアクションを起こすことも可能ではないかという気がしてきた。3番は、とてもじゃないが踏み出すような政府でも日銀でもないと思う。が、これも超党派議連によって、日銀に復興国債の全額買入を求める声明を決議したそうだ (ロイター)。考えられなかった3番が可能性を秘めたということで、なんだか嬉しかった。
 余談だが、昨日の各紙でアメリカの量的緩和の第2弾(QE2)の結果を報じていた。私もそろそろどんな塩梅かと気になっていた矢先だった。思ったよりも良い結果に導いたというバーナンキ氏の声明があったようだ(日経)。が、日経のこれを報じる内容がなんとなくずれていると言うか、日経ともあろう者がどうしてこういう結び方になるのか不思議だった。叩いてばかりで御免ね、だけど。どうしても気になるので書いちゃいます。

「デフレ懸念の解消に成功した」。バーナンキ議長は同日の記者会見で、QE2の成果をアピールした。議長がQE2を示唆した昨年8月末以降、米国の株価は約2割上昇した。これが個人消費を刺激し、企業収益の改善を通じて雇用の拡大にも波及したのは確かだろう。
 だがQE2の副作用は看過できない。大量の資金供給が国際商品の高騰や新興国のインフレを誘発したのは事実である。エネルギーや食料の世界的な値上がりは、米国にも景気減速と物価上昇をもたらした。
 震災後の景気低迷に苦しむ日本も人ごとではない。生産網の復旧を輸出の拡大につなげるというシナリオを描けなくなる。政府・日銀も状況を注視しなければならない。

 なんとなくふむふむと読み過ごしてしまうようなごもっともらしさが漂うが、なんとなく変だなと最後のくだりを考え直してみるに、「生産網の復旧を輸出の拡大につなげるというシナリオ」とはいけしゃあしゃあと言ったものだと思った。天下のトヨタでさえ、もはや国内生産の限界だと言及しているし(参照)、諏訪のエプソンなども既にその動きを始めている。これらの日本のトップメーカーが工場を閉鎖すると、連鎖反応で中小企業も倒産する。すると、街に失業者が五万と溢れることになる。また、大企業からの税金が市町村に入らなくなるため、市町村自体が貧乏になる。この状態に既に突入していると言うのに、日経は輸出を拡大して外貨で潤えると本気で思っているらしい。しかも、このトヨタのことを報じたのは同じ日経で、先週だった。FRBがQE2を施したのは、デフレをインフレ傾向にするために他ならないのだから、デフレの日本は人事にしないでQE2に見習うと言うなら話は分かる。輸出から稼ぎ出すシナリオを描けない理由として、デフレで円高のままでは価格的に競合できない上、国内生産の限界という現状(震災の二次的な影響で、部品などの調達が不備。また、消費電力の削減により生産性が落ちている。)では輸出に向けた拡大構想など無理だという理路が先にある。
 著者の田中氏の指摘から、書評では、このような実態が「常態」になるという事だと紹介されている。であれば、率直な見識として現実を早く知り、受け入れてからが始まりだと思った。

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