2011-06-14

中国が執拗に南シナ海領有権を主張する背景について雑感

 南シナ海に浮かぶ島々の領有権を主張する中国と、ベトナム・フィリピンなどとの緊張がますます高まっているようだ。この騒ぎが目立ち始めた5月下旬、「中国・ASEAN諸国の南シナ海領有権問題と日米の関わりについて」(参照)でも触れたが、尖閣諸島の領有権を主張して嫌がらせを受けた日本でもあり、まんざら他人事ではないしと記事を拾ったが、領有権を主張する中国の目的は分からず、その後も注視していた。その後、アメリカがベトナムやフィリピンに協力的な姿勢を示した状況も出てきたため「緊張状態が続く南シナ海の背景-アメリカは漁夫の利を得るんジャマイカ」(参照)でそのことに触れたが、依然、中国のこの一連の主張の理由やその背景が具体的につかめないままだった。中国の台頭振りを見ていれば資源確保だとは大方の察しはつくが、具体的にそれを報じる記事に乏しく、なんとなく書き損なってしまった。小刻みに続くことになるが、これまでにわかってきた状況を備忘的に抑えておくことにした。
 昨夜の産経記事「南シナ海領有権争い 中国の狙いは資源独占」(参照)は、資源に言及した具体的な内容だと思った。

【北京=川越一】中国が周辺諸国と南沙諸島などの領有権を争う南シナ海で13日、ベトナム海軍が実弾演習を強行したことで、中国がさらに、ベトナムに対する妨害行為をエスカレートさせる可能性がある。
ベトナムが、中国漁船による探査船への妨害行為について中国に強く抗議した9日、中国外務省の洪磊報道官は「ベトナムは中国の南沙諸島で違法に石油・天然ガスの探査を行い、中国漁船を追い払うなど、中国の主権と海洋権益を著しく侵犯した」との談話を発表し、一歩も引かない姿勢を鮮明にした。

 中国のこの談話の内容が本当であれば、「石油・天然ガス」に対して敏感になっているということが窺える。
 また、ベトナム海軍の実弾演習を強行した背景として、市民の大きな反発が国内で起きているようだ。一昨日のNHKニュースが少しこれに触れて報じている(参照

 ベトナムと中国は、南シナ海の南沙諸島や西沙諸島の領有権を巡って対立が続いていますが、先月末からの2週間では、ベトナムの漁船や国営石油会社の探査船の活動が中国の船に妨害される事件が相次ぎ、中国との緊張が高まっています。こうした事態を受けて、ベトナムの首都ハノイの中国大使館の前には、12日午前、市民らおよそ150人が集まって抗議デモを行い、南沙諸島と西沙諸島はベトナムの領土だと訴えるとともに、「中国は口では平和と言うが、実際の行動は暴力だ」などと書かれたプラカードを掲げ、中国の対応を非難しました。このほか、南部のホーチミンでもおよそ300人が抗議デモを行いました。

 中国政府は、こうしたベトナムの抗議などに対して一歩も引く様子がない。

 中国の国際情報紙、環球時報(英語版)は、ベトナムの実弾演習を「中国に公然と反抗するための軍事力の誇示」と非難。中国が威嚇発砲など“力ずく”の対抗措置をとることも考えられる。

 こういった状況から、実戦が始まるのではないかという懸念を持ったが、その理由に、先の資源確保が相当に緊迫状態だという点がある。今頃になって結びつくのだが、中国内モンゴルで地元政府に抗議するデモが起きている(参照)。このデモの背景は、モンゴル遊牧民の事故死がきっかけで地元政府への抗議デモが起きたとしているが、内モンゴルでこのような抗議デモは珍しいことだと思っていた。この時点では、何に対する「講義」かが不明で、私もそこは読めなかったが、デモの鎮静化を伝える記事で概要が見えてきた。時事ドットコムは、環球時報の社説を引いて次のように伝えている(参照

【北京時事】中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は31日、内モンゴル自治区で少数民族のモンゴル族住民らによる抗議デモが起きたことに関し、「事態は沈静化に向かっている」と伝える社説を掲載した。漢族住民との民族対立ではないと強調している。
自治区内では先週末以降、大規模なデモによる混乱は伝えられていない。しかし、治安当局は警戒を緩めていない。
デモは、地元政府の進める鉱山開発が草原破壊を招き、恩恵も少ないことへの積年の不満が背景にある。社説も「モンゴル族住民の一部が、鉱山採掘の影響をはじめ工業化の波を前に不安を抱いていることは理解できる」と認めた。

 モンゴルの壮大な土地が資源をふんだんに有していることは昔から注目されているが、中国国土は中国政府の所有であるし、住民がとやかく言えるものはない。それが理由で不満だけが鬱積し、何かの弾みやきっかけで一気に噴出すのではないかと思う。
 モンゴルと言えば、ロシアを相手に紛争戦を繰り広げる中、日本の商機がやってきたと日経が報じている(参照)。

 モンゴルの豊富な埋蔵資源を巡り、中国、ロシア、日本の企業が激しい争奪戦を繰り広げている。中国企業の買い占めによる“経済支配”を避けたいモンゴルは、鉱山開発プロジェクトに日本の大手商社を加えることで抑止力の役目を期待する。日本勢もレアアースの確保や鉄鋼用石炭の「脱豪州依存」を図るうえでモンゴルを最重要拠点と位置付ける。綱引きの結果次第で“脇役”の日本勢に思わぬ商機が訪れる可能性もある。

 ここに日本が「抑止力」として歓待されるとは思わなかっただけに驚いた。そもそも、ロシアの進出が目覚しく、「ロシア大統領 モンゴルとの経済貿易協力を協議」(参照)記事がTwitterで話題になっていた。「モンゴルは気をつけとかないとロシアに資源しゃぶりつくされるよ」と冗談とも言えないような話をしてた。そこに中国もだろと、突っ込みを入れたのは私だったが、中国内モンゴルの資源問題が既に浮上していたからだ。
 このように、中国が資源を求めて彷徨う姿は先月から急激になってきている。だからベトナムには一歩も引かない理由とも限らない。前にも触れたことだが、ベトナム戦争でアメリカに勝利した自信の程は今も変わらないだろうか。というのは、ベトナム戦争の直後に中国と一戦交えて勝利した経緯がある。日本ではこの戦争は、「中越戦争」と呼ばれている。簡単に言うと、中国とカンボジアが友好国であった当時、ベトナムが侵攻してカンボジアを占領したが、同時にポルポト政権が行っていた虐殺行為をやめさせるとこにもなった。中国は、友好国であるカンボジアに酷いことをしてくれたと、ベトナムにお灸をすえるため「懲罰」として侵攻を開始したが、ベトナム戦争直後のベトナムは戦力も戦闘意欲も衰えることなく、一ヶ月ほどで勝利して終わった。
 その後も中国とベトナムは小さな衝突を繰り返してきているが、現在の中国は、資源確保の目的でベトナムの主張する領有権を実力行使で奪い取ろうと躍起になっているのかもしれない。火種は十分あり、実戦が始まってもおかしくない現状ともいえるのではないだろうか。
 また、8・9日の両日、計11隻の中国海軍艦艇が次々に沖縄本島と宮古島の間を通過したことを北沢防衛相が報じたが(参照)、この直後に中国国防部から、「今月行う予定の定期訓練」だと説明があったようだ(参照)。
 このような争いから連想するのは、日本の尖閣諸島沖問題だが、政権交代した直後に中国がその感触を確かめたのかと思ったりもしたが。当時、中国でも民主化のデモなどが起こり、国内が不安定だったため、政府は、中国国民にその権力を誇示する必要があったと思われる。そのために、日本政府の「柳腰政府」が利用され、中国漁師を英雄に仕立て上げるシナリオが用意されたとも言えた。それに上手く乗せられた日本政府は、まず海保のビデオを公開することを躊躇い、国民から反発を受けた。これが、民主政権がぼろぼろになる始まりまでもあった。
 「sengoku38」(=仙谷さんパー)のハンドルネームでYoutubeにビデオが暴露されたり(極東ブログ参照)、その調査上で政府の隠蔽や馬淵氏の大嘘発覚、仙谷元官房長官の失言による国語力、前原元外相の勇み足、G20での胡錦濤国家主席との会談ではメモを棒読みする菅総理の小さな肩。これらが更なる不安材料となるのは御免だと思ったが、外交で実質的に進めているのは政府ではなく、担当の外交官僚であるのかもしれない。自民党時代はどうか分からないが、少なくとも政権交代後の民主党の舞台裏をWikileaksで知る限り、無政府状態だったことがはっきりした。官僚がどのように動くかなどはあまり掴めないが、気を置くことにしようと思う。

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