スーダン・アビエイ地域の帰属問題に微妙に絡む中国
「スーダン南北が合意」という見出しに釣られて31日、47ニュースが報じた合意の内容を真に受けてよいものかどうか半信半疑だった(参照)。というのも、微妙な部分として南北の国境付近にあるアビエイ地方の帰属問題が解決の方向に向かうのかどうかが焦点で、この問題が南スーダンの独立問題そのものと言っても良いと思う。石油の産出が多い土地だけに利権問題が絡んでいるのは言うまでもないが、民族的な分離を求める独立問題にこの土地の住民が望むように南に帰属できるというものでもないようだ。そして、Twitterで捉えた昨日のNHK記事によると、問題のアビエイ地区に触れて大変微妙な報じ方をしていた(参照)。両紙共に、31日のアフリカ連合(AU)の発表を元に報じているということは内容から分かるが、アビエイに関して、どう解釈したらよいか迷った。記事を比較してみたいと思う。
まず、47ニュースから。
【ナイロビ共同】アフリカ連合(AU)は5月31日、対立が続くスーダンの南北当局が南北境界に沿って非武装地帯をつくることで合意したと発表した。1月の住民投票で南部が7月に分離独立することが決まったが、北部軍が5月、境界に位置する係争地の油田地帯アビエイ地区を武力で制圧、南北の緊張が高まり、AUが仲介していた。
非武装地帯では共同でパトロールを行うとしているが、設置時期など詳細は明らかになっておらず、緊張緩和につながるかは不明。AUによると合意は30日で、南北間の治安安定のため、双方の防衛担当相や軍トップらからなる共同機関を設置することも決まった。
アビエイが北スーダンによって侵攻されたことは5月22日47ニュース記事(参照)で知り、問題が難しくなってきたことを感じた。途中情報として25日、「スーダン「Bashir, you step aside?」バジル大統領が退陣の意向?」(参照)でも、いくつか記事をクリップしたところだった。
話の流れとしては、北部がアビエイを侵攻して住民が南部に避難し、実質北部が制圧した状況だった。ここで、AUの仲介で話し合いが行われて合意したと聞けば、北部が引いたことを意味するのではないかと解釈していた。が、一日置いたNHKでは次のような微妙なニュアンスだった(参照)。
アフリカのスーダンでは、来月に迫った南部の独立を前に、北部のスーダン政府と南部の自治政府が、南北の境界に沿って非武装地帯を設置することで合意しました。
スーダンでは、北部のアラブ系の政府と南部のアフリカ系の反政府勢力との間で20年以上続いた内戦が終わり、住民投票の結果、来月、南部が独立することになっています。こうしたなか、南北間の仲介にあたっているAU=アフリカ連合は、先月31日、北部の政府と南部の自治政府の代表者が東アフリカのエチオピアで会合を持ち、およそ2000キロにわたる南北の境界に沿って非武装地帯を設けることで合意したことを発表しました。合意によりますと、非武装地帯では南北が共同でパトロールを行うほか、双方の防衛担当相らが率いる共同機関を設置し、南北の安定した関係維持を図っていくということです。スーダンでは、南北の境界付近にあり帰属が決まっていない油田地帯のアビエイ地方を、先月、北部の政府軍が占拠したため、南北間の新たな火種となっていますが、今回の合意はこの問題には触れておらず、引き続き緊張した状況が続きそうです。
アビエイは、北部によって占拠されたままで「新たな火種」として緊張状態にあるという事だと思う。解決に向かって欲しいという気持ちの力関係からか、47ニュースを信じたくなるが、アビエイが北部に占拠されたという事実から見ると、信憑性はNHKにあるのだろうと思った。
NHKニュースが微妙だと思う理由に、アビエイ地方に触れずに合意したという点だ。そうであれば、その話し合いや合意はあまりにも中途半端に感じる。この土地が係争地であり問題の焦点でもあるため、この土地に関して合意するためのAUの仲介ではなかったのだろうか。そこを外した合意などというものは空のようなものだと思う。ニュースの通りだとすると、はっきり言ってAUは阿呆としか言いようがない。また、逆にNHKニュースの信憑性を疑うなら、合意の中味がはっきり掴めてないニュースを流してくれるなよと言いたくなる。事実関係が明らかにされていないため、このNHKニュースの後、黙るしかなかった。
また、この記事がクリップされたのは極東ブログのfinalvent氏によるもので、彼はこの記事からスーダンをどのように読んでいるかと気になっていた。昨夜、エントリーが挙がっていた(参照) 「スーダンのアビエイ地方が予想通り紛争化」のタイトルの通りなのだとまず思う。ニュースの信憑性はいろいろ言っても結局のところ分からないが、北部スーダンがアビエイを占拠していることに変わりないのであれば、いくら他の場所が共同で非武装地帯としてパトロールすると合意されても、問題の地は北に属しているのと同じことになる。あれかな、公平に投票で決めるのではなく、早い者勝ちみたいなものでこのまま決まってしまうのかな、などと馬鹿なことを言いたくなる。変な話、北がこの土地を治めてしまえば他が手を出しにくくなるというのはあると思う。その一つとして、中国の北部支援のことがある。極東ブログで触れていてハッとしたが、このことがすっかり抜けていた。
国連やアメリカが一歩引いているように映っていたのは、何だったのか。極東ブログが引用しているワシントンポストを深読みすれば、中国の支援を「貢献」として尊重すべき点だったのかもしれない。貢献と言っても私の扱いは、括弧つきである。誤解なきよう先にお断りを入れるが、中国叩きが目的で書いているのではない。あくまでも中国の動きとして客観視しているだけだ。変な石は投げないで、このことは理解していただきたい。利権の文脈で言うなら中国にとってスーダンは資源産出国であり、外交で言うなら武器輸出国だ。その中国にバジル大統領を動かすことが出来るかは分からないが、南北スーダンが和解するための後見人的な立場だという自覚が中国にあるだろうか。国際社会が中国に期待することと、中国がスーダンを支援している目的が違っても、中国に利益が齎されることであれば外交として動く国かもしれない。
そもそも、アビエイが南部に属して独立してしまうと、北部から調達している石油が南部に7割方移る事になる。中国は資源確保のためこのところ、モンゴルでも問題の種になっているようだと知ったが、必死で資源を集めているという印象を受けた。
スーダンの話しが中国の話になってきてしまったが、今後も中国の動きがきになる。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント