2011-06-08

緊張状態が続く南シナ海の背景-アメリカは漁夫の利を得るんジャマイカ

 南シナ海の領有権問題について5月26日、「中国・ASEAN諸国の南シナ海領有権問題と日米の関わりについて」(参照)で触れたエントリーでは、日米の関わりという文脈で考えてみた。実際、日本は現在この件で直接的な関わりを持っているわけではないが、どこかにアメリカの抑止に期待する思いがあり、関係を見たが、昨日のTwitterでクリップした「比外相、南沙問題で中国を非難 「国際法順守を」(参照)かきっかけで、在沖米軍が東アジアにとって必ずしも抑止として歓迎されてはいないという点という背景が分かり、いろいろ気になる点を考えた。現在係争中の南シナ海領有権問題に対するアメリカの関わりや、アジア周辺国の状況を抑えておくことにした。
 まず、沖縄にアメリカ軍が駐留していることが東アジアの周辺国にとって必ずしも抑止となってこなかった、という背景について、これは、「抑止になってきた」という私の思い込みを覆すことになり、認識が一変した大きな収穫だった。沖縄の反基地感情が一気に噴出す発端と言っても過言ではないと思う少女レイプ事件は大きく報道されたが、結局、この事件の結末で屈辱的だったのは、実行犯を法律によって有罪にできなかったことである。この背景を取り上げている極東ブログの「普天間基地返還可能性の裏にあるもの」(参照)が詳しい。
 暴力に対する唯一の仕返しは、法律で争うことが最もスマートな方法だと信じる私も、地位協定が恨めしかったのを覚えている。簡単に言うと、日米間の取り決めで、異国における米軍人の犯した罪を日本の裁判にかけることはできない。身柄引き渡しが成立しなければ話は先に進まない。この事件によって後に地位協定が見直された事はある程度進展したかとは思うが、アメリカの理不尽な部分だ。他国の法律で自国民は裁かせない、というスタンスだ。この事件がきっかけで米軍基地撤廃のムードが高まったのは言うまでもないことだ。アメリカ軍駐留を望まない現地と、日本政府の国防政策が一致していないというギクシャクした関係に付け入る隣国もある。
 さて、問題はフィリピンのスービックで起きたレイプ事件だ。極東ブログ「スービック・レイプ・ケース」(参照)が非常に参考になったが、このケースも沖縄のレイプ事件と似ている。フィリピン軍との合同演習の際、フィリピンに訪問中であった沖縄駐留中の海兵隊員が起こした事件で、結局地位協定で起訴もできなかったという背景がある。これを機に、フィリピンが米軍を歓迎していないというのが背景にある。
 これを調べるきっかけとなった産経記事は、フィリピンの声明を次のように報じている。

フィリピンのデルロサリオ外相は7日、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島の領有権を主張する国は「国際法の順守が重要」と強調する声明を発表した。同諸島すべての領有権を訴える中国を事実上非難する内容で、反発が予想される。
中国が最近、南沙諸島周辺で、新たな構造物を設置するなどの動きに出ているため「国内外にフィリピン政府の立場を訴える」(外務省高官)狙いがある。
声明によると、フィリピンの抗議にもかかわらず、中国が1995年に進出した同諸島ミスチーフ礁を「自国領」とあらためて主張。2002年に中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が南沙問題などの平和的解決に向け署名した「南シナ海行動宣言」を根拠に、実効支配につながる新たな動きは「約束に違反する」と指弾した。

 これらのフィリピンの強気の発言は、在沖アメリカ軍が抑止になっているのではないか、という私の推測は外れだったのは言うまでもない。では、アメリカが関わる理由は?また、ASEAN諸国はこれから対中政策をどのように展開しようとしているのか、それが気になる。
 6月4日の毎日が伝えているところによると、中国の隣国であるベトナムが「防波堤」となって中国の進出を食い止める働きを担う意思決定をしたそうだ。長く苦しい戦争をしたベトナムとアメリカだが、対中政策では仲良くやろうと言うことらしい(参照)。

◇議会調査局報告「軍事面で役割」
毎日新聞が入手した報告書(今年2月作成)によると、オバマ米政権は中国に対する「戦略上の懸念」から、ベトナムとの関係を「次のレベル」に発展させるため関係強化を進めている。

◇比とも戦略的関係強化
米国はフィリピンに対し、中国寄りの姿勢を取っていた前大統領から昨年、政権交代したアキノ政権に積極的な軍事支援を開始している。米政府によると、米国の対外軍事融資額も09年2800万ドルから10年に2900万ドルへ増額した。
今年1月にフィリピンを訪問した米国のキャンベル国務次官補は、中国を念頭に、フィリピンとの間で、安全保障分野で戦略的に関係を強化することを表明。さらに5月には、南シナ海の警戒用に、米国沿岸警備隊を退役した大型巡視船をフィリピンに売却した。

 国際社会のリーダーであるアメリカの平和維持政策も一面、体裁よく見えるが、ASEAN諸国は、アメリカのお得意さんではないか。と、ちょっと驚く。日本のように同盟国に対しては絶大なる協力を感じるアメリカだが、そうでもなければ全く違うアメリカの多面性が発露するのだな、と思った。戦争が始まると中国がどこからともなくやってきて武器や核施設の建設を後押しするが、アメリカは堂々とやってきて平和維持作戦の名の基に軍備を助けているという構図になる。だが、ASEAN諸国にすれば、国防のためにアメリカは嫌だと選んでもいられない緊張した状況に陥っているようだ。
 こうしてみると、中国とアメリカの問題という構図に見えてる。実際、中国は「アジア安全保障会議」(英国際戦略研究所主催)で3日、アメリカに対して次のように述べたようだ(読売)。

中国からは過去最高ランクとなる梁光烈国防相が出席、米国のゲーツ国防長官と会談した。梁氏は、中国と周辺諸国の摩擦が激化する南シナ海の領土、領海問題で最大焦点となっている「米国の関与」を拒絶する姿勢を示したとみられる。

 翌日の4日、中国のサイバー攻撃を「戦争としてとらえる」という声明を出している(参照)。

米国がサイバー攻撃を受けた場合、「国防上の問題で、サイバー戦争としてとらえる」と話した。中国からのサイバー攻撃を念頭に置いた発言と見られる。長官は「どこの国から攻撃が行われているか、明確にするのが困難だが、対処していく」と述べた。

 このサイバー攻撃とは具体的に何を指しているかと調べてみると2日、GoogleがGメール攻撃を受けたことを発表していた(参照)。

【北京・工藤哲】インターネット検索サービス最大手の米グーグルの「Gメール」が中国からサイバー攻撃を受けたと発表した問題について、中国外務省の洪磊(こう・らい)副報道局長は2日、定例会見で「中国側を責めることは受け入れられない。法に基づいてインターネットを管理しており、むしろ中国はハッカー攻撃の被害者だ」と反論した。

 中国とアメリカの関係が浮き彫りになるが、南シナ海域の領有権問題で中国と衝突する可能性が一番強いのはベトナムではないかと思う。そのベトナムは、他の周辺国が及び腰となるのとは違って、ベトナム戦争でアメリカに勝利したという自負があると思う。もしかしたら、中国の侵入に対して勇敢に立ちはだかるのではないだろうか。ただし、現実問題として中国との経済関係を勘案すると、実利のない動きはしないのが賢いと思う。

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