2011-06-30

ギリシャが財政再建法案を可決したことにまつわる雑感

 昨夜、深刻な財政状態にあるギリシャでは、EUからの支援の前提条件とされるこれまで以上の緊縮財政を盛り込んだ五ヵ年財政再建法案が審議され、賛成155・反対138で可決された。これまでのギリシャの様子を伝えるメディアから、ともすると否決されるのではないかという見方もあった。支援側の都合で言うならこれは、極端な話、否決されてEUに対して債務不履行(デフォルト)に陥ると、連鎖的に欧州各国の金融危機と日本も含む世界全体の金融危機にもつながることが懸念されていた。破綻国に手を差し伸べたばかりに共倒れとなるかどうかの瀬戸際だったようだが、可決されたからと言って安心できる状態でもないようだ。現状を把握するために、備忘的に書きとめておくことにした。
 この法案の可決の緊急性と重大性がかかっていたのは、まず、来月中旬に国債の償還日を迎えるに当たり、投資家に払い戻す資金がないことが挙げられる。これに関して、次のように朝日は伝えている(6月29日 朝日)。

 総額1100億ユーロ(12兆6千億円)の支援を実施中のEUと国際通貨基金(IMF)が、可決を前提に5回目の入金として来月振り込む120億ユーロ(1兆3千億円)を充てる予定にしているため、法案が否決されれば、債務不履行(デフォルト)に陥る危険性が高い。ギリシャ国債を保有する欧州の金融機関が損失を被り、そこに投資する米国の投資信託などを通じて影響が広がる可能性がある。市場では「最悪の場合、第2のリーマン・ショックになる」との見方もある。

 これだけの借金を抱えて緊縮財政は当然であるし、よほどの覚悟もいると思うが、以前から気になっていたのはギリシャの国民の強い反発で、この不満は政府の政策に対するものが大きいようだ。が、どんなに反対しても、UEの支援なしに危機を乗り越えられるものではないとしたら腹を括るしかないとしか言えない。逆に、同じ財政危機を持つエジプトはIMFの支援を望んだにもかかわらず、先日急遽キャンセルした。国情が違うと言えばそうだが、支援なしでどう切り抜けるのか不思議な事態が起きた。日本ではあまりこの件を報じないが、関係がないわけではない。中東や中欧で国が破綻すると、その影響は全ての国に波及してくることになる。
 エジプトは、国民から反対されたことを理由にしたのもだったが、支援なしで財政再建するのはかなり難しそうだ。7月以降から組まれた来年度予算から40億ドルの削減をするか、IMFから30億ドル借りるかのどちらかしか国家存続の選択肢はないという試算をロイターが報じていた(Reuters)。
 この削減は、赤字に対するGDP比を8.6%までにキープすればバランスできると財相は発表したが、純経済的にはそれは可能なのかもしれないが、実際面ではかなり厳しい数字だ。エジプトがIMFから支援を受けると、今のギリシャのように緊縮財政を迫られるのは当然だが、国民の反発をコントロールできる範囲にとどめる必要から借り入れをキャンセルしたのではないだろうか。この決定は、借り入れを要望していた政府の決定ではなく、軍の決定ではないかと思っている。エジプトの軍なら、国民の反発をコントロールして緊縮財政を強いることが出来るという判断をしたということなのだろうか。数字ではそうも思えずいろいろ憶測もあるが、エジプトが不安定になるだけで中東全体にその影響が波及するのは避けたい。
 逆にギリシャ国民は、「われわれはEUの支援など望んでいない」「こんな危機を招いた政府が悪い」「これ以上の痛みには耐えられない」と反政府運動が激化しているようだが、借りたものを返すために節約をするのはあたりまでの話だと言ってしまえばそれまでだが、ギリシャの首相もどこかと似て経済音痴だと言われる節もあるようだ。Newsweekはそこまで言っても委員ですかと思ったが、具体的な根拠がはっきりしない(参照)。

「統治も辞任もしない首相」ギリシャにも

ギリシャのパパンドレウ首相は、父親も祖父もかつて首相を務めたという政界のサラブレッド。だが、ギリシャ政界に半世紀以上に渡って君臨してきた名門パパンドレウ家は今、「退場」の瀬戸際に追い込まれている。
7月までに融資が下りなければ、ギリシャはデフォルトに陥る。それなのに、パパンドレウ首相の父親が1974年に創設した与党・全ギリシャ社会主義運動の国会議員の中にも、緊縮財政法案に反対する者がいる。

「手に負えない状態だ」と、政治科学を専門とするエール大学のギリシャ人教授、スタティス・カリャバスは言う。「債務危機は非常に深刻で、そもそも交渉の余地などなかった。政府は過去30年間に行うべきだった経済改革を1年間で実行しなければならなかった」

 ギリシャの今の事態に対して、首相が無策だから首相には向かないという評価の程は分かった。が、ギリシャで選出された首相であるし、資質を問うのであれば、自分の首をかけても引き続き関連法案を可決に導くしか方法は無いと思う。
 首相の資質の話になったところで日本の国会のことにもついでに触れると、日本の与党も、菅さんが辞任を表明してから首相下ろしに熱が入ってきているようだ。これほど見苦しい限りの醜態はないと思っている。在任中である以上、職務を全うするで何故一致できないのだろうか。使うエネルギーと使い道が違うのじゃないだろうか。
 昨日、ここで団塊世代の元朝日記者と読売記者の話しを持ち出したが、同じ世代でもいろいろだと思った。建設的な考え方に至るには、十分な失敗を学生運動という儚い運動で経験したのではないだろうか。今、国会で大騒ぎして、国政を妨げ、自らの職場を壊している姿は、学生だったころのあの姿がそのまま年寄りになっただけにしか映らない。本当に成長のない人達だと諦めるしかないのだろうか。嘆かわしいことだ。

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