2011-06-11

G8の支援金が、失敗に終わった「アラブの春」に齎す次の社会について雑感(その2)

10egyptarticlelargeBar employees sought out customers recently in Sharm el Sheik, Egypt.(エジプトのシャルムエルシェイクでは、飲み屋の従業員が客をし探し求めている。

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フェイスブック 若き天才の野望
デビッド・カークパトリック

 ニューヨークタイムズ・デビッド・カークパトリック氏のエジプトに関するコラム「Egypt’s Economy Slows to a Crawl; Revolt Is Tested」(参照)をTwitterでクリップした。この記事に感化されて、フランスG8サミット以後の関係国の情報などをを少し集めてみた。その前に今日のタイトルとは関係ないが、デビッド・カークパトリックという人物のことに少し触れておきたい。彼は「The Facebook Effect」の著者で、今年1月、日本語版「フェイスブック 若き天才の野望」が出版された。メディアとの接触を好まないことで有名なFacebookの創設者マーク・ザッカーバーグ氏に、数年間にわたり密着取材した米国人ジャーナリストだ。彼のことを知った理由にこの本がベストセラーになったということもあるが、中東の民主化運動の関連記事をニューヨークタイムズに続けて書いているので興味深く読んでいた。視点の当て方から、観察眼の鋭さを感じるジャーナリストの一人として気を置いている。
 さて、手間がないので訳文も書けないが、エジプトの争乱の重要ポイントに近づいてきたような印象を与える記事だと思った。昨日に続くが、エジプトの争乱が注目に値する意味は、中東全体に起こっている民主化運動の今後を読む視点が見えてくるような気がする点と、実際にG8の仲間として日本もその支援的な立場である以上、関心事であることは大きな理由だ。昨日も書いたことだが、私の中では、G8がどこまでエジプト経済の回復を考えているのかさえよく分かっていない。これまで分かった部分は、「支援」からはちょっと遠い。「支援」の名の下に実は火の粉が飛んでこないようにガードを固めているだけではないかと猜疑的なものも感じている。表からも裏からもよく見て、世界が注目する諸問題を私なりに見つめようと思っている。
 カークパトリック氏は、エジプトの経済立て直しが革命の意味を物語ると言わんとしているような印象だ。彼が指摘しているエジプト経済は私が見ているのと大した変わりはないが、記事でオヤと思ったのは、観光で支えてきた10%のうち40%が稼動不可能な状態である点だ。しかも、それを支える労働者は、エジプトスラム街の住人が多いという点だろうか。住人の声を集めているようだ。

“People are angry,” said Hassan Mahmoud, a resident of a slum near Cairo.He expected a better life after the revolution, he said, but instead he was laid off from his $10-a-day job in a souvenir factory.“People in the neighborhood are talking about going back to the streets for another revolution — a hunger revolution,” he said.
人々は怒っていると、カイロに近いスラムに住むハッサン・ムハメド氏は話している。革命後はましな暮らしに期待していたが、代わりに、みやげ物製造工場で10$の日雇いから解雇されてしまった。街に戻るのは「飢餓の革命」というもう一つの革命に戻っているようだと話していた。

 カイロはエジプトの経済全体を支えている都市だが、ここで仕事を失った人々は何もすることがない。革命は、製造業などに携わる人々が望んだことでもなかったが、それなりの期待をしていたようだ。ただ、それと引き換えに飢えとの戦いになるとも思わなかったのではないだろうか。世界で大きく報道されたエジプトの革命だったが、この革命を起こしているのは学歴の高い比較的裕福な家庭の若い世代が多く、その影になっていたスラムの住人や製造工場で働く人々ではなかったともいえると思う。これらの産業が成長するかしないかがエジプトの経済の立て直しに大きく関与する以上、革命の意味をここで問われるというのは説得力ある話だと思った。こんな状態のエジプトにどんな風を吹かすというのか。
 先ほどネットに挙がった日経記事が興味深い(参照)。G8のメンバーと債務国である北欧諸国宛てにアメリカから御触れが出た。

 オバマ米政権が日本や欧州諸国にエジプトへの公的な債務の免除を要請し始めたことが明らかになった。中東・北アフリカの民主化と安定化で鍵を握るエジプトの再建を後押しするため、先進各国に応分の負担を求める。日本政府は大幅な負担増に直結する債務免除に慎重な半面、新規融資など一定の金融支援は避けられないとの判断から検討を急ぐ。
 関係者によると、5月末までに米国のガイトナー財務長官とクリントン国務長官が連名で主要8カ国(G8)と債権国である北欧諸国に書簡を送り、債務問題を巡る救済策を訴えた。米政府は内政の混乱で対外債務の支払い能力が大幅に低下したエジプトの情勢を考慮し、一律の債務免除に照準を定めている。負担軽減で浮いた資金を、国内の雇用促進やインフラ投資に振り向けさせるよう主張している。

 きたな、という感じがした。昨日、思いっきり「元金返済アンド支払利息の発生」を伴う銀行融資はエジプトには返済不可能ではないかと書いたが、早くも「債務免除」の措置を取ることになりそうだ。誰も考えたことのないような話だが、革命で壊した瓦礫は使えなくなった札束だと思うしかない話だ。そして、債務のトップは40億ドルの日本だそうだ。

エジプト中央銀行によれば昨年6月末時点の対外債務(民間債務含む)残高は337億ドル(約2兆7000億円)、うち日本の債権残高は40億ドルで国別トップ。日本の財務省によればエジプト向け円借款は昨年3月末時点で約3000億円。

 今までの借りは棚上げするか、長期返済に組みなおす方向を日本は検討しているらしいが、会社で言えば、これは会社更生法で債権者の債務が棚上げされたようなものだ。そして、これと前後するが、6日、CNNが伝えているところによると、国際通貨基金がエジプトに30億ドルの融資を決めた(参照)。

 カイロ(CNN) 国際通貨基金(IMF)は5日、ムバラク政権崩壊後のエジプトに30億ドル(約2400億円)を融資することで暫定合意に達したと発表した。7月にIMF理事会の承認を得て正式決定する見通し。
 発表によると、5年間にわたる融資で、金利1.5%。
 観光業に大きく依存するエジプト経済は、今年1月からの反政府デモで深刻な打撃を受けた結果7%縮小し、今月まで1年間の成長率は2%にとどまるとみられる。IMFは4月、同国の今後1年間の成長率を1%、失業率を9%前後とする見通しを発表した。同国は5月、経済回復に最大120億ドルの融資が必要になるとして、IMFの支援を要請していた。
 政変後の暫定統治を担う軍最高評議会が示した870億ドル規模の予算案は、インフラ事業や職業訓練プログラムに94億ドル、教育、住宅に25億ドルを充て、今後5年間で環境に配慮した「グリーン住宅」100万棟の建設を目指す内容。また物価上昇などを受け、食料、燃料への補助金を9%拡大するとしている。

 対外債務の337億ドルに比べれば、IMFの30億ドルというのはかなり少ない額であり、エジプト政府が要請している融資希望の120億ドルの四分の一にしか過ぎない。オバマ氏の出してきた支援策である債務免除は、貸付額を大きくするよりもまだましだという考えだろうか。それにしても、アメリカは何故こんなに急いでエジプト支援をするのか。急がれているその理由が気になる。
 また、インフラ整備は政府の政策で行うのは勿論だが、食料や燃料への補助金が9%拡大されるというのは、日本のばら撒き政策のような捉え方でよいのだろうか。だとすると、とんでもなく軍がエジプト国民に貢献することになり、この管掌によって管理されることになる(普通の先進国ではそういう認識だと思う)。軍による管理社会の到来か?が、アメリカはあくまでも民主化の後押し政策と言いたいらしい。
 また、「別の独裁政権が生まれるしかないだろう」的に昨日書いたが、現状から考えて、エジプトが自力で這い上がれるとは思えないし極、少数のエジプト市民が起こした争乱は、既にかなりの代償払っているが、“They just want to be able to survive.”と、後は生き長らえるだけで充分だといっているそうだ。ここにカネを注ぎ込んだ国際社会は、見返りに何を求めているのだろうか。アメリカに関していて言えば、中東の反米感情を沈静化させることは、意図しなくてもそうなると思う。日経が見るように、中国の台頭をけん制する意味もあるだろうか。

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