2011-06-26

アメリカ軍のリビア介入の首がつながった件

 今朝、日が変わって直ぐにピックアップした読売の「米のリビア作戦「認めず」…米下院が決議」(参照)の記事によると、オバマ氏の暴走にちょっとブレーキがかかったようで安堵した。オバマ大統領はこれまでの経過で、リビアの介入に関してアメリカ議会を無視してきた。中には「これじゃ独裁」という表現をする人もいて、私ははらはらしながら見ていたという状態だった。が、民主主義議会の醍醐味というとオーバーかもしれないが、日本の国会や政治とは大違いなのだとつくづく思った。その辺の話もあるが、まずはオバマ大統領が何をしてきたか、ここを順追って簡単に書きとめておきたい。
 まず、オバマ大統領が何故独走しているかだが、戦争をしない日本にはないルールがアメリカにはある。初めの頃、私もこの法律の内容をしらなかったが、いよいよオバマ氏が下院から訴えられるという直前、ニュースで知った次第だ。「戦争権限法」(参照)と呼ばれ、大統領の暴走に唯一ストップをかけられる法律で、ベトナム戦争の反省から生まれた法律とある。オバマ氏はリビア介入時、この法律の次の部分に抵触した。

 「事前の議会への説明の努力、事後48時間以内の議会への報告の義務、60日以内の議会からの承認の必要などを定めている。」

 この期限にさらに30日間、大統領には軍が引き上げるまでの猶予が与えられるが、この90日のリミットが6月19日の日曜だった(BBC)。リビアから軍を引き上げないオバマ氏に対し、議会は当然これを批判し、訴えが起きた。その後下院で議決され、その結果を今朝ピックアップした読売記事では次のように報じている。

【ワシントン=黒瀬悦成】米下院本会議は24日、北大西洋条約機構(NATO)が主導する対リビア軍事作戦への米軍の限定的関与を認める決議案を反対295、賛成123の反対多数で否決した。

下院で多数を占める共和党の議員に加え、民主党の70人も反対し、オバマ大統領が議会の承認なしに軍事行動への参加を決めたことへの明確な異議を議会が申し立てる結果となった。決議に法的拘束力はなく、米軍の作戦に直接の影響はない。
(2011年6月25日23時10分  読売新聞)

 何ともおかしな結果が出たものだと戸惑った。「NATOが主導する」とあると、アメリカは関係ねぇじゃん。と言われそうな話で、実際この話しを人にしたら、アメリカは介入していないんでしょう?と聞かれて泡を食った。嗚呼、オバマさんの信用度ってすごいな。ノーベル平和賞ももらっているし、誰も率先して戦争する人とは思っていないみたいだ、と分かった。ご本人もリビア介入は、民間人保護が目的であると終始言ってきたことだ。が、実態はと言えば、NATOが勝手に動くわけもないし、アメリカはNATOに任せたいと言って来ただけである。そして、そのNATOが先日も飛行場を爆撃してくれた(参照)。これが戦争でなくて何だ!と怒りを指先からキーボードに走らせてもどうにもならない。オバマ大統領には非常に残念な思いが湧き上がり、がっかりしていた。ここで苦しい詭弁を聞く羽目になったのは勿論だ。しかも、落ち着いて考えれば、今回の下院本会議では「米軍の限定的関与を認めない」と決議された。アメリカ議会は捩れているため、下院では共和党が多く占めていることにプラスして70票も民主党の反対票が加わったということだ。これが意味するのは何か?先を越されて午前中にエントリーされてしまった極東ブログ「オバマ大統領によるリビア米軍介入を米国下院が否定」(参照)にしっかり書いてあった。

 いずれにせよ、オバマ大統領の与党である民主党ですら4割が反対票を投じたことから、米国民がいかに大統領の権限というものを恐れている実態がよくわかる事例ともなった。

 票を読むというのは勝った負けただけじゃない。日本と違ってアメリカは民主的な議会の基盤の元に国民の声がこうしてちゃんと反映される国なのだ。ついでに言うと、日本は選挙は公平で、方法も民主的だ。違うのは誰が政権についても官僚の操り人魚にやってしまうので、国民におべっかを使った民主党も、国民を平気で裏切ることになる。鳩山さんがそのことをわかっていなかったのと、アメリカとの同盟国である日本というか、抑止の問題を分かっていなかったのが悔やまれる。今頃まただが。
 冒頭で「安堵」といった理由はこれだ。アメリカの議会制度が正常にあるうちは、誰が大統領になってもそれほど民意とかけ離れたことは起こらないという安心感がまた、持てた。
 さて、もう人踏ん張りな話しがある。
 これだけ戦争はしていないと言及してきたオバマ氏にお墨付きの軍費が出たことだ。

 一方、下院本会議は24日、米軍のリビアでの作戦への支出を禁ずる共和党議員提出の法案を反対多数で否決した。リビアへの介入自体は必要と見なす共和党議員が多数反対に回ったためで、議会では大統領が主張する作戦の重要性について一定の理解が得られていることも浮き彫りになった。

 こういう正反対の決議がなされるとは思わなかったが、出てしまった。つまり、オバマさんは、戦争はしていないといいながらNATOのせいにしてやってきた。これからは、米政府から軍費をもらって戦争ではないと言いながら公然と戦争を続行するということになりそう。これは「アフガン戦争2.0」である。この意味は、ここからオバマ氏の詭弁がさらにヴァージョンアップしないと立場がなくなる。ただ、このような並ならぬ努力の先の目的がよく見えない。また、アメリカ経済はQE2による好転ということもあるが、まだ厳しい状態を引きずっているのも確かだ。
 ああ最後に、オバマ氏についても何か言っとくかな、と、思ったけど、先を越された極東ブログの表現が気に入ったので、引用させてもらうことにした。

 オバマ政権の言い分が正しければ、戦争権限法が連想される議会決議もありえなかったが、そこまで議会を無視できず、オバマ大統領は詭弁の縁から詭弁にずり落ちた。

|

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アメリカ軍のリビア介入の首がつながった件: