2011-06-19

無政府状態に何をか言わんやだが、ちょっと一言

 先日の与謝野馨経済財政担当相の増税発言がこの間から、少し気になっていた(参照)。その部分を簡単に言うと、消費税を増税して財政再建し、政策目的として長期金利を上昇させない事が大事だという内容だった。後で内容を引用しながら気になる点について書くつもりだが、この発言が気になっている矢先に、朝日の暢気な社説「原発再稼働―自治体の不安に応えよ」が挙がり(参照)、この日のfinalventの日記をチェックすると、同記事にコメントがついていた(参照)。菅さん下ろしに躍起になる今の自民党の野党ブリでは、仮に政権が戻っても「無策」だということは見えているし、菅さんが降りれば協力するというが、誰が立っても民主党政治自体が変わることは無い。菅政権の立てた(崩壊したとは言え)政策変更ができるわけでもない。だから、人を選ぶよりも政策の中味を議論してほしいと願っているのは被災された方々ばかりではないと思うが、議論は政局のことばかりでうんざりしている。このようなテーマで書くのも本当は無意味で無駄な気がするが、「しらげ世代」のマンマで終わるのも進歩がないと奮い立って書くことにした。
 経済を専門的に学んだわけでもない私が、与謝野氏の提案である増税は如何なものかと、受け売りのようにここで書くのも気が引けるが、日経が指摘している実際の例として後で、諏訪の製造業などの具体例も書き添えることにした。
 まず、与謝野氏の発言で気になる点は二点ある。一点目は、消費税の増税と長期金利は直接関係あるのかという疑問と、先にも触れたように、デフレ時での増税では税収は見込めないので意味がないのではないかという点だ。この理由は今までも随分繰り返しここで書いてきたが、今年の1月7日「「マイナス金利政策」が年明けのプレゼント!ファイナンシャルタイムズやるなあ」(参照)で言い収めているところをみると、私もこの件では諦め気分が半年、停滞していたらしい。先に消費税の反対理由から触れてみたい。
 このエントリーは、デフレ時でも歳入が期待できる可能性について触れたが、残念ながら消費税の増税ではない。勿論、増税はいつかは必要だと思うが、民主党は、資産売却や埋蔵金の発掘、特別会計などのムダ使い、公務員人件費の見直しなどの削減努力もなく、自民党の作った予算案に新たなばらまき政策を乗せたに過ぎない。デフレを放置したまま名目経済成長率を上げなければ自然に社会保障が増加するだけだ。そういう無茶がまずあった。デフレでは、物価は低迷したままで消費者が購買意欲のない状態なので元々、税収は見込めない。悪循環がそのままスライドするため、赤字国債を出さないと歳出が補えない。赤字国債を増やしたくないからか、消費税を上げるという道理だと思うが、そのような税収自体が望めないと経済学者も指摘している。
 長期金利と消費税増税の関係について後先になったが、与謝野氏の発言をロイターが次のようにまとめている。

[東京 15日 ロイター] 与謝野担当相は消費税の引き上げについて、20日に政府案を取りまとめた後も野党との協議や国会審議、民主党の公約などとの兼ね合いなどがあるとして、実施は「13年の年央以降になると考えている」と指摘。その上で「経済が定常的な高度を保っていれば、消費税(引き上げ)をやらないと、デフレより日本の財政に対する国際的信認、マーケットの信認のほうが大事になる」として、財政健全化の側面からも税率の引き上げが必要だとあらためて訴えた。さらに、消費税引き上げには「長期金利を上昇させてはいけない、という大事な政策目的もある」と述べた。
民主党などからデフレ下で消費税を引き上げることに異論が出ていることに関しては、引き上げ時の経済・社会情勢は大事だとしたが「デフレの定義自体が決まっていない。消費税引き上げの時期とデフレを相関させること自体が相当ではない」と退けた。与謝野担当相はデフレの要因は「多次元方程式を論じるようなもの。簡単にこれが原因で日本がデフレです、とは言えない」として、日本経済の最大の問題は国際競争力を保てるかにある、と持論を展開した。

 「長期金利を上昇させてはいけないという大事な政策目的もある」と言うのは、国債が800兆円もあれば、年利1%上がるだけで年間80兆円もの支払い利息が発生する。ということは、国の借金が増加する。また、市民への直接的な弊害もある。例えば、銀行の貸出金利が高くなるため、借り入れや住宅ローンなどが敬遠されてしまい消費が減退する。企業の借り入れなども同様になる。すると、株価が暴落する。だから、長期金利が上がらないようにするというのは納得できる。が、与謝野氏の言う消費税増税との関係が私にはわからない。もしかして、増税による税収アップを図り、それで赤字国債を埋めるというのであろうか。まさかに、そんな馬鹿げたことを考えるとは思えない。繰り返しになるが、デフレで増税しても税収は上がらないというデータも出ている。少し前の高橋洋一さんのコラムで、スウェーデンの例と日本を比較している(参照)。グラフで、歳出が右上がりで税収が右下がりに推移するのがワニの口をが開いた状態に似ているため、「ワニの口」と呼ばれているという説明が面白くて覚えていた。
 これは与謝野氏ご本人に聞かないことにはその意味は分からない。
 さて長くなったが、諏訪の実生活の中で見たり感じていたりしている部分を日経記事「製造業追い込む電力不足を放置するな」(参照)に沿って備忘的に書いておこうと思う。

電力不足が東電、東北電力や中部電管内以外にも波及する影響は産業界で大きい。東日本での生産減を西日本での増産で補う予定の企業は計画の抜本的見直しを強いられる。
円高や高い法人税率に電力不足が加わり、国内生産を維持してきた企業が海外へ積極的に生産移管し始める可能性がある。トヨタ自動車からは「日本でものづくりを続ける限界を超えている」との声が出ている。
国際協力銀行によると、日本企業の海外生産比率は2000年度の23%から10年度は31.8%に高まった。第一生命経済研究所の試算では海外生産比率が1%上がると製造業の就業者数が28万人減る。海外生産移転が加速すれば雇用不安が広がる。
原発は電力供給の3割を占め、休止中の火力発電所の再稼働や太陽光などの自然エネルギーでは補いきれない。当面の電力不足の拡大を防ぐには原発を再稼働させるしかない。

 トヨタの話の通りで、諏訪の大手(世界で通用している企業)が地元の中小企業に手配する仕事が徐々に減ってきている。新機種立ち上げの計画は海外に既に移管され始めていて、現実問題、人は解雇されている。既に長いデフレの影響で景気は低迷し、製造量も減っているため人件費の高い日本での製造はコストに限界がある。
 また、東京電力管内の地方製造業者からの部品などが予定通り入荷しないため、製造計画全体に支障をきたしている。その結果非常に効率の悪い循環が起こっているため、製造コストが維持しにくくなっている。これが、海外展開に切り替える親会社が増える原因と思われる。
 このまま原発が稼動しなくなるのかどうかの問題ではなく、日経が結論付けているように、日本の製造業を守るためには原発をこれ以上止められない状況まできている。その危機感が政府にあるなら「原発反対」の声が市民から今上がっていることにどう対応するのだろう。はっきり言って、事故で被災された方への保証問題もまだ進んでいない状態で、直ぐに稼動を採決するのは無理ではないかと感じている。それだけ政府に対して不信感もある。ましてや、先の与謝野氏の「日本はデフレとは言えない」という暢気な発言は聞き捨てならない。
 また、冒頭の朝日社説に至っては、そんな話は二ヶ月前に言ってくれと思うような内容だ。筆致からすると煽り記事のつもりだろうか。現実問題はもっと深刻に進んでいてで、原発の二次三次災害が地方には及んでいる。
 日本の大手社説があまりにも現実感のない話しをするのに加えて、日本の経済の中枢が頓珍漢に見えて黙っていられなかった。

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