IMFから借り入れを断ったエジプトの背景について雑感
政治を読むというのは、非常に難しいと感じている。ここでは割りと断定的に意見を書いているが、意見だからかけるのであって、本当のこと、真実はどこまでも分からないことだと実は自信のない私だと思っている。ただ、分からないからといって途中で投げ出したりはしたくない。それはもっと分からないところへ自分を放り出すことになるため、これはどこまでも自分でたどりつかなければ意味がないことだと思っている。
変な書き出しになったが、昨日、BBCが伝えるエジプト情勢について、私にとっては解読が難しいと思う記事に遭遇した。エジプトが特殊だというよりも、記事から何を読むかという点で、如何に自分自身が複眼的に情報を見ているかで見えるものが違ってくるという点だ。何度もこの記事を読み返してみて、現時点で見えていることから推測を書きとめておくことにした。
問題のBBC記事は以下で、要約すると、国債通貨基金(IMF)からの借金の条件は寛大としても、ムバラク時代、IMFに対する評判は悪く国民には人気がない借款であるため、借り入れを止めたと報じている(参照)。
25 June 2011 Last updated at 12:43
Egypt drops plans for IMF loan amid popular distrustEgypt has dropped plans to seek loans from the International Monetary Fund and World Bank, Finance Minister Samir Radwan has said.
The move comes after the planned deficit in the 2011-12 budget was revised down from 11% to 8.6% of GDP, Mr Radwan told Reuters news agency.
An adviser told AFP news agency the decision had been partly a response to the "pressure of public opinion".
Many of those who took part in Egypt's uprising denounced the role of the IMF.
It was seen as bolstering the rule of now-deposed President Hosni Mubarak while imposing harsh economic conditions that benefited the rich more than the poor, says the BBC's Arab affairs editor Sebastian Usher.
But the uprising led to a haemorrhaging of public finances, he says.
But Mr Radwan turned to the IMF in May, telling the BBC that the situation was "very difficult", and extra funds were needed to finance the demands of the people on the heels of the revolution.
He agreed a $3bn (£1.9bn) 12-month stand-by loan facility - an agreement which came on top of loan deals agreed with the World Bank and the African Development Bank.
Despite apparently lenient terms on which the IMF offered the loan, many Egyptians were unhappy, feeling it was a betrayal of the protest movement that had denounced the IMF as a tool of imperialism, our correspondent says.
Mr Radwan now says that following discussions with civic and business groups and the military council, the budget forecast has been revised down from a deficit of 170 billion Egyptian pounds ($28.5bn; £17.8bn) to 134 billion pounds, and loans are thus not needed at this stage.
Dilemma
He said Egypt would cover the greater part of the deficit from "local sources", as well as packages from Gulf Arab states such as Saudi Arabia and Qatar, which he said had provided $500m in the past week as a "gift".
The issue over the loan highlights the huge dilemma facing Egypt - and the rest of the Arab world, our correspondent says.
The protesters want a complete change from the lumbering, state-controlled economic systems that failed to provide jobs for tens of millions of young people.
But the unrest has paralysed business and decimated tourism. To remake Arab economies, many state jobs will have to go - and the private sector is too weak to provide replacement jobs.
国際通貨基金(IMF)から借り入れをする事になった経緯は、先月フランスで行われたG8のメインテーマであった中東問題解決の一環で、長引く反政府運動で衰退した経済を立て直すことが優先されるという結論が出た。そこで、IMFを通して30億ドルの融資が決定していた。この決定に至っては、エジプトからの要望によるものでもあったことから、BBCが伝えている「融資を取りやめた」という変更の理由を私なりに探した。次に、そこからエジプト情勢を読むのに取り掛かった。
記事にも書いてある通り、2012年までの赤字に対するGDP比が8.6%までなら何とかなると判断しているようだが、それはちょっと難しいと思った。その理由に、雇用問題を抱えている点からまず仕事がない。長引く反政府運動の末、町は観光客を呼び込める状態ではないため、外貨獲得(観光などから)は当分の間無理ではなかという点。そのため、国債も下落すれば経済が上向きになる要素がないとすると、エジプト経済は危機的な状態になるのではないかと懸念したからだ。借り入れのを断念する根拠に乏しいと思った。
私のここまでの見方を仮定としてこの先を考えるのは少し無謀かもしれないが、ギリシャのように財政が破綻すれば中東全体への影響はどうなるのかなど、不安定になる要素ともなりうると思った。軍か政府もか、国民の感情を鎮圧しながらさらに復興計画を推進するというのは如何なものかと思った次第だ。
それと、エジプト国民はIMFの存在を知っているとは到底思えないというのが一点ある。日本でもそうだと思うが、ニュースを聴いて名前は知っているという程度の認識はあっても、それがどういう機関で、関わりをもつとどうなるかまでのことを知って反対しているのかという疑念がある。そのため、実際、IMFの借り入れを拒んでいるのは誰か?という疑問は払拭できないでいる。だが、エジプト政府が急に路線を変えるだけの強い意見力を持つのは、今のところ軍しか考え付かない。
また、これからのエジプトを、IMFとの関わりという文脈でみるのに対比しやすいのはギリシャの例だと思う。ギリシャの金融危機では、EUとIMFの厳しい条件を飲んで国民全体を敵に回してしまった。現在、引き締めの厳しさに喘ぐ国民が、あちらこちらで反政府デモを繰り広げている。BBCのコメンテイターには、破産宣告した国としてユーロ圏から出た方が良いという意見も見る(参照)。借りるからには利息と元金を返して行くのは当たり前だが、経済を立て直す政策ありきであり、それを国民が納得した上で選択していれば、今のようには反政府運動が広がるはずはないと普通は思う。これとエジプトが同じかどうかは分からないが、借り入れた資金が、歳入を生み出すために使われなければ元金は返して行けなくなるのは目に見えている。そこを加味して、2012年までの赤字に対して8.6%を下回る程度に抑える政策を打ち出したというなら、それは喜ばしく、素晴らしいことだと思う。
当初、私は、IMFの借り入れによる経済引き締政策を実行しようとするエジプト政府に対し、国民が「No」を突きつけたからだと読み、エジプト市民の反政府パワーがヴァージョンアップしたのかと思った。エジプト政府は、一般国民に過度の締め付けをしたのでは政治が持たない、ということは既に学習済みではあると思ったのも理由だ。それと同時に感情的なものを振り返ると、初めにエジプトは借金をしないで建て直しをすべきだと思い、借り入れが決まるとそれが今は良い方法と思い、借り入れを止めたと聞くと大丈夫かなと心配な気持ちになる。という自分の思い方に支配された感は残った。おい、またこれですかい、みたいに思った。
国民全体と言うと語弊があるが、反対の強いIMFを断り、自ら緊縮財政に立ち向かって復興を決意したというのであれば、それこそ誰かが誰かに不平不満を言うでもないと思う。これは立派な一人立ちとして、エールを贈ると言うものではないだろうか。
今更だが、この記事はそれを伝えているのだろうか。
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コメント
こんにちは。エジプトがIMFからの借り入れ拒否についてほとんど記事になっていないなか、こちらら一番詳しいと思いました。これはとっても大きなニュースかもしれないと感じています。国際銀行家によるギリシャ、リビアの資産略奪二直面して、中東諸国はエジプト救済に動いたという見方もありえるかもしれません。IMF (INTERNATIONAL MAFIA FUND?)は低利化貸し出しの条件に民営化も含まれているようです。
http://www.ipsnews.net/news.asp?idnews=56304
ギリシャはユーロ内での返済は不可能ですから、狙いはギリシャ資産の民営化による買い叩きのみでしょう。
リビアについては、国際銀行家によるリビア政府系ファンドの負債踏み倒しやリビア政府100%出資の国立銀行の西側資本によるのっとりという側面が全く報じられていません。
http://bit.ly/irgRlG
よろしければ日本語の字幕をつけていますので、YOUTUBEビデオをご覧になってください。LOVE AND PEACE :)
投稿: dandomina | 2011-07-05 07:36
dandominaさん、コメントとインフォメーションありがとうございます。早速、拝見させていただきました。登録して、今後も見させていただきたく思います。よろしくお願いいたします。
投稿: ゴッドマー | 2011-07-05 08:01
こんにちは、登録してくださったのですか。うれしいです。ゴッドマザーのような複眼思考はとっても大切だと思いました。(既存マスコミは通信社のニュースの配信のみすくらいで片目も開いていない?)私もエジプトとギリシャ(とリビア)の関連性を見て見たいのです。
UAEアラブ首長国連邦がエジプトに三億ドルの援助パッケージのニュースがありました。http://reut.rs/jOiS4s もちろんキチンと経済を運営しなくてはなりませんが、きわめて恣意的なIMF、格付け会社に振り回されない仕組みができるとすると画期的なことかもしれません。Love and peace
投稿: dandomina | 2011-07-06 05:17
dandomineさん、ありがとうございます。昨日、同じ記事をTwttterで見つけて驚いていたところでした。最初、何故IMFを断ってUAEなら良いのか?と不思議でした。が、アラブ諸国間でこのような仕組みができて運営できれば画期的なことですね。何故どうして?というよりもまずは進む方向性から見たほうが良いかもしれません。dandomineさんもTwitterで見つけましたので、私のリストに入れさせてもらいました。TLをいつも眺めているわけではないので、Youtubeの更新情報など拝見させていただきたいと思います。
投稿: ゴッドマー | 2011-07-06 06:08