2011-05-15

ウィキーリークスで2010年2月2月4日の公電による日米防衛に関する実務者会議の様子

 引き続きウィキーリークスで明かされた2010年2月4日、日米実務者レベルの会議内容についての公電の訳が極東ブログで挙がった(参照)。
 今回の話し合いの焦点は、「日米安保条約50周年記念構想、4年毎国防計画見直し(QDR)及び核戦略見直し(NPR)、思いやり予算などの接受国支援(HNS)、米軍再編/普天間移設施設、二国新間交流及び次期主力戦闘機導入計画」とはっきりしていて、ざっと読んだところ無駄のない実りある内容だと思った。
 会議での日本の官僚は、アメリカの提案を国民に説明する責任を踏まえて話を進めていて、危なげない印象を受けた。それより気になったのは、アメリカ側の方が日本の国民感情に警戒心を強めている嫌いがあり、これは、一重に政府の問題なのだと思った。そして、この点に一番違和感があり、私自身、当時書いたことを再読してみたり、遡って新聞を読んでみたりした。実務的な話しがかなりすっきり進んでいるのとは裏腹に、国民の苛立ちや怒りの矛先は辺野古移設を懸念して嘉手納統合に拘る岡田外相バッシングといったムードだった。鳩山氏の「県外移設」に希望的観測を持つ沖縄県民や、県外移設に賛成的な人達の不安を煽ったことも相俟ったのかもしれない。やつれた岡田氏の写真も見たが、頬はコケて目の周りにクマを作り、げんなり顔になっていた。
 また、新政権の閣僚は、政権交代前の自民党と官僚の癒着体質を批判してきた立場であったため、政府高官とはけん制し合ったり腹の探り合いから始まっていたのは然りだと思う。その流れから、日米同盟問題の要とも言うべき抑止や核問題を理解しない新政府が、ここ一番でつんぼ桟敷の目に合い、重要課題は全て実務者である外務省と防衛省の官僚が話を進めていたのだと納得した。まあ、その皺寄せと言っては何だが、国民と政府の間でクッションのような位置にあった岡田氏は、衝撃を吸収するような軟質のクッションではなく、かといって跳ね返すのとも違う低反発な吸収型スポンジであったかもしれない。一人でよく頑張りましたね、と声をかけたくなったほどだ。
 さてと、一番言いたいことを言ってしまうと書く気力も抜けた感じがするが、そうも言っていられない。一連のリーク情報によって、今後アメリカとどう向き合うかがすっきり見えてきた気がする。これからは政治家を信じるとか政治家に任せると逃げずに、アメリカとどう付き合って行くのかを自分の問題にしたいと思った。その点に絞って拾ってみることにしょうと思う。

 キャンベル国務次官補は、普天間移設施設(FRF)が絡む同盟の変更期間にあっては、接受国支援問題は政治的に慎重にするように指摘した。

 「接受国支援」とは、それまで「思いやり予算」と呼ばれてきた在日米駐留関係支援金で、呼称の変更は、前原氏が外相の英語の直訳的な呼び方が相応しいという意見で変更された。これを対象国のアメリカの高官から指摘されたというのは、日本の国民性をよく分かっているということだろうか。アメリカに守ってもらうために日本に基地を置いてもらっている、という言い方をすれば良いのだろうか、表現に困るところだ。何故かと言うと、基地の存在自体に反対する日本人がいる中、抑止自体を考え直さなければこの予算に理解が得られないという難問だからだ。ひいては、防衛問題だからだ。基地に反対するということは、抑止を無用とすることだとすれば、防衛は自国でやります、とそこからどうするか議論しなければならなくなる深い問題だと思う。

在日米軍再編についてだが、米国政府との相談前に普天間移設施設の各種代替案を日本国民に伝えるのは差し控えるよう、キャンベル国務次官補は日本側に勧めた。グレグソン米国防次官補は、普天間移設施設の決定を政治問題にすることで、特に岩国基地などその他の再編計画に悪影響を及ぼしていると懸念を表した。

 政治家がダメなことを熟知した上での発言だったと思う。ただでさえ鳩山案あり、岡田案あり、小沢案ありと、先方にはこの会談前に各氏の腹のうちがその側近からインフォームされているため、既に学習済みであったのだと思う。因みに、鳩山氏の側近は松野氏(参照)、小沢氏は山岡氏(参照)、岡田氏は側近ではなく外務省官僚斎木氏が絶賛したが、政府内では経験の浅い閣僚と見なされていた(参照)。皆さん、自分の尊敬する師匠のためにアメリカに取り入ろうと苦労されたようだが、アメリカも自国の利益になる部分を聞き分けていたと思われる。上手がいるものだ。

4年毎国防計画見直しと大陸弾道ミサイル防衛見直し
グレグソン米国防次官補は、米国が東北アジアで米軍力を削減するのではなく、むしろ太平洋全域で既存同盟国の軍事力を拡張しているのだと強調した。米国はグアムとアジア周辺の日本自衛隊(JSDF)の軍事力と作戦の増強を奨励する。

要点は、核兵器削減に向けた米国の意欲であり、同時に米国とその同盟国・友好国を脅かす紛争の可能性を低減するための、強化抑止と拡大抑止である。

核戦略見直しは米国の戦略的な抑止力への投資を促すものになる。

非核兵器による攻撃能力と大陸弾道ミサイル防衛が地域抑止に重要な役割を持つことから、米国はこの地域において継続的かつ追加的な協力を求めることになる。クリントン長官とゲーツ長官に寄せた岡田克也外務大臣の書簡で、米国は、この件について日本の国益を理解しており、日本との対話継続を心待ちにしているとバサラは述べた。

 この部分は、アメリカの同盟に対する姿勢と核問題に関する方針を述べている部分で、非常に重大は発言だと思った、と同時に、この重大な内容が周知でなかったことがベースにあり、防衛問題に関して国民があまりにも無知であったと思う。結果、政府不信につながったのではないかと思った。当時を振り返ると、政府は別の部分にエネルギーを注いでいたかに思う。
 私はこの頃、ブログにこう書いている。

「どちらがどうだと言いたいわけではないですが、沖縄で反対する県民の声というのも、それがあっての移設問題なので充分検討される必要はあるとは思いますが、米軍が日本に駐留する意味が何か、そのためにどこに基地を置いたらよいかと候補を絞れば、自ずとその場所が見えてきそうなものですし、その候補地住民は、条件を出して歩み寄るというような解決はできないものなのかと思います。」(参照

 何かが足りないと思ってこんなことを書いた記憶があるが、よくよく考えたら、民主党内が同盟に関してばらばらな意見を持っていたし、連立の社民党などはお呼びではなかったわけだ。これに関しては民主党はいつでも切ると強気な発言をしながらも、議席数不足に話しが及ぶと助平根性を隠せなかったわけだ。それ故、国民に統一見解を示す道理もなかったというものだ。勿論、私はここまで無知な政府とは思わなかった。キリッ。

拡張防衛対話
民主党政権になった時点では、拡大抑止に関連する戦略課題を理解していなかった岡田外務大臣だが、今ではこの問題について二国間対話を始めようとせっつきだしたと外務省・梅本北米局長は米国側に報告した。外務省としては、公式議論の開始に向けて、2月15日の第一週に一団を米国に派遣したがっている。キャンベル国務次官補は、解決される必要のある3点の個別問題を強調した。

 ここで初めて岡田氏だけが問題意識を持ったと、こんなことまで言われている。相手にしてみれば同盟のパートナーである政府がこのザマで、頼れるのは官僚だけだと思っていたに違いない。このアメリカの余裕は、先に、官僚が「早期の妥協はしないように」と念押ししたことの効果でもあると思う。先日は、「官僚が日本を売った」と書いてしまったが、ごめん。この場を借りて謝るが、そう思ったのは事実だ。また、斎木氏もどうせコメントするなら、「一切発言していない」などとリーク情報を否定して繕う必要はなかったと思う。まあ「政府が無能だから」ともい得ないかぁ。
 この話はさておき、オバマ氏がノーベル平和賞を受賞した際の演説から、核兵器削減問題と抑止拡大の話はともすると矛盾していると疑ってはいなかっただろうか。これに関しても話題になっている。

(1) 拡大抑止、(2) 核兵器履歴(日本では「秘密条約」として知られている)、(3) 核兵器搭載の確認・否認を要さない空港・港湾の利用

彼はまた、日本の国民はオバマ米大統領のプラハでの演説に強い期待を寄せていると指摘し、従って核兵器削減と抑止力強化の矛盾を調整する必要があると述べた。さらに日本の防衛上、米国の核兵器への依存を減らすと、米国と日本の通常兵力への依存が高まることになることも日本の国民に理解させる必要があるとも梅本局長は述べた。双方とも、基準となる条件の作成と、できるだけ早期の拡大抑止についての対話の開始に同意した。

 ここが私にも良く理解できなかった点だったが、誤解もしてなかった。
基地の場所が沖縄であることの意味と並行して、アメリカの原子力空母や核保有ということ自体が東アジアでは抑止力であるにもかかわらず、保有量を削減されてしまえば抑止力も低減するのが道理である。その言葉通り、「米国と日本の通常兵力への依存が高まる」点について、この時点で合意されていたわけだ。が、政府から何の説明もなかった私たちは知らなかった。当たり前だ。政府が説明できるほど理解している段階ではなかった○| ̄|_

安保50周年記念:達成
拡大抑止の対話、地域安全評価及びサイバー攻撃防衛の協力を含め、双方の活動を提案した上で、いったい何をもって日本政府は日米安保条約50周年記念の達成とするのだろうかとキャンベル国務次官補は問いかけた。梅本局長は、日米安保条約50年記念計画の対話が現在開始され、一連の対話を経て、21世紀に向けた同盟の節目となる共同宣言で頂点に達するプロセスをもって岡田外務大臣は達成と見ると語った。

 Good question,Mr.Campbell.と言いたいところだ。が、未だに「共同宣言で頂点」に達したとは言い難いものがある。
 沖縄の住民との合意が取れていない日本と、アメリカ下院議員から辺野古移設は現実的な案ではないとした上で、アメリカの経費削減に物言いをつけられている米政府だからだ。これは日本にもよくある、野党が与党の予算に異議申し立てをすることでより世論に政治力をアピールするかという政争の面と、実際、アメリカの財政も厳しいという実情もあると思う。

普天間移設施設
キャンベル国務次官補は、日本側が米国政府と相談の前に一方的に普天間移設施設の選択案を国民に提示することがあれば、米国側は強く反応するだろうと指摘した。梅本局長は、米軍再編手順は普天間移設施設に限定されるものではないと指摘し、双方は米軍再編の他の部分も前進させるよう促した。グレグソン米国防次官補は、普天間問題が手順を逸脱している間に、普天間移設施設の政治問題化が、特に岩国基地など他の再編問題に悪影響を及ぼしていると応答した。

 この会談が大変切れ味のよいものだという印象を受けた理由に、このような梅本氏の発言が随所に見られたからだろうか。アメリカと対話しながら、将来を見据えて話を進めようとしている点で秀でていると感じた。
 13年間かけて練り上げてきた自民党時代のアメリカとのせっかくの合意を、民主党のおかげで、無駄に時間を使って膠着させたに過ぎなかったという点がはっきりとしたことは確かだ。この政権も長くはないと思うだけに、現野党が前民主党とちっとも変わらないようにしか見えないのが困りものだ。

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