2011-05-10

ウィキーリークスで公開された外務省官僚高見沢氏の発言と沖縄基地移転問題-何故朝日がリーク情報を好むのか

 昨日、2009年10月15日の在日アメリカ大使館発公電の訳が挙がった(参照)。内容は、キャンベル国務次官補が率いる国務省・国防総省代表団が長島昭久防衛副大臣及び外務省・防衛省担当員と10月12日、在沖米軍再編と普天間飛行場移設案の背景となる経緯について協働した時の報告文書でウィキーリークスの漏洩情報だ。一昨日に続き、官僚の働きぶりに関して取り上げることにした。が、今回は、朝日記事の扱いでは一部を削除していることも最初から分かっているため、その辺の謎も深く考えながら読んでみた。そして、段々頭に血が上り始めるのを自覚しながら、心が冷静になれと呼びかけているうちにさっさと書くとことにした。
 普天間飛行場の返還と移設問題で当時、「県外移設」を打ち出していた民主党とアメリカ側との会談の楽屋裏で、外務省官僚高見沢氏がアメリカに、「妥協すべきではない」という助言をしていたことがリークされた。この助言は、滑走路や施設面でのアメリカ側の要求と日本側の移転要求理由との突合せをして歩み寄る段階だったが、ここまでは極普通の展開であり、リーク情報の価値というものは見出せなかった。話の展開が変わったのは、北沢防衛大臣と長島防衛副大臣が臨席しない昼食会においてだった。つまり、非公式な食事の場で話の展開がガラッと変わった。
 これを知って驚いた。こんな言葉で表現してよいものかと思うが、日本の官僚がアメリカに日本を売ったと解釈した。ここは、原文に何か間違えはないか、まさかに訳が間違ってはいないかと何度も読み返した。
以下からその部分は始まる。

2. (S) Takamizawa stressed in a lunch meeting subsequent to the briefing (excluding Nagashima and others) that the U.S. delegation ought not to take Nagashima's assessement of current realignment plans at face value and cautioned against premature demonstration of flexibility in adjusting the realignment package to be more palatable to the DPJ Government.
説明会後の(長島らは参加してない)昼食会のことだが、高見沢は、現行の再配置案に対する長島の評価を額面通りに受け取らないようにと強調し、また民主党政府にとってもっと口当たりのいい再配置案に調整するような柔軟性を早まって示さないようも警告した。

 英語の言い回しなのでアレな感じがするが、率直に言うと米側が早期に妥協するなという意味だ。これは、官僚が鳩山政権の県外模索を阻むための助言だと思う。ということは、防衛省は県外移設に反対なのか、普天間飛行場自体の返還に反対なのかのどちらかということになる。
 この先を読むと、朝日がまた例の如く文章を削除したらしく、英文との突合せでその部分を補って訳がつけられている。
 話は有事の際の滑走路の必要性について議論されたのち、メア氏が補足的に発言している部分が削除されている。

EAP/J Maher observed that the runways at Ie and Shimoji would not be sufficient on their own, but would require the full complement of support facilities, including for refueling and maintenance, to be useable by U.S. forces. Japanese discussion of contingency air fields often overlooks this requirement, he added. Naha Consul General Greene noted that, as Japan worked through its National Defense Program Guidelines (NDPG), it would be important for both sides to de-conflict expectations on Shimoji options.
メア東アジア・太平洋・日本部長は、伊江島と下地島の滑走路だけでは十分とはいえず、米軍が使用可能とするためには、燃料補給と保守管理を含め、万全体制の支援設備が必要になるだろうと見ていた。日本人による有事飛行場についての議論はしばしばこの要求が見落とされるとも加えた。那覇在グリーン総領事は、日本は防衛計画大綱策定中であり、日米双方とも下地島という選択肢を争点にしないことが重要であると述べた。

 太字部分は消えていた部分であるが、消して隠蔽したかったことは何だろうか。滑走路の必要充分条件を満たすための話をそれまで伝えていなかったことが明るみになると、何の都合が悪かったのだろうか。子どもじみているので違うかもしれないが、単純に、自社でこの内容を報じてこなかったことへのバッシングを恐れたのだろうか。
 私の記憶だと、有事の際、燃料補給と保守管理を含めた万全体制を行うのは、鹿児島県の徳之島案が浮上した時が初めてだった。徳之島に飛行場を置くと例えば台湾有事では出動に時間がかかる上、燃料が不足してしまうこと等を知った。そして、疑問だったのは、何故そのような初歩的なことも加味せずに徳之島を候補に入れたのかだった。鳩山さんいよいよ阿呆になった、くらいに思っていたことだった。
次の文書工作部分は、タイトルのとおりである。

MOD and MOFA Read-out on the Presentation
米側プレゼンテーションに対する防衛相と外務省の腹の内
12. (S) In a private read-out over lunch immediately following the FRF presentation, MOD DG Takamizawa cautioned the U.S. side not to take excessive comfort in Nagashima's assessment of current realignment plans. The Vice-Minster had been much tougher in his questions on FRF during internal MOD sessions, and he was aware that A/S Campbell had spoken about realignment the previous evening with State Minister for Okinawa Seiji Maehara (a proponent of Kadena consolidation).
普天間移設施設についてのプレゼンテーション直後の昼食会でなされた腹の内の探りだが、高見沢防衛政策局長は、現行の再編計画に対する長島の評価で安堵しすぎないよう米側に警告した。長島副大臣は、防衛省内の議論では普天間移設施設に根強い疑念を持ちづけているし、キャンベル国務次官補が前夜、前原誠司沖縄担当相(嘉手納統合案の提案者)と再編について語ったことも知っている。
Takamizawa added that the U.S. Government should also refrain from demonstrating flexibility too soon in the course of crafting an adjusted realignment package palatable to the DPJ Government. On environmental issues, for example, perceptions of U.S. Government flexibility could invite local demands for the U.S. side to permit greater access to bases and to shoulder mitigation costs for environmental damage.
米国政府は、民主党政府にとってもっと口当たりのいい再配置案に調整するような手順を拙速に示すのを控えるようにとも高見沢は述べた。環境問題では、例えば、米国政府が柔軟性を理解することで、基地へ立ち入り権を沖縄県側がより拡張することになり、環境破壊緩和の負担要求をするようになりかねない。

 高見沢氏はアメリカに、民主党に対して甘い顔をすると無理難題を言ってくるから気をつけろと言っているようだが、他でもこの程度の事はリークされている。何故、朝日はここを削除したかだが、朝日は米軍基地と公共事業による環境破壊問題についてこれまでもあまり取り上げていない。その元の理由を推測するに、戦後民主主義を掲げてきた朝日にとって、政府が落ちるのは許せないという主張や、閣僚との確執に対抗して官僚が交渉の不利となるようアメリカの片棒を担いでいるのが許せなったからではないだろうか。リークすることで逆に官僚を悪者にし、自らの利益となるよう企てたのかもしれない。一連のリーク情報も、政府官僚が市民に叩かれることを目的としている嫌いもあると思う。また、それに乗せられて、私も官僚を叩くという罠にまんまとかかるところだったな、などと立ち止まる必要もあった。ただ、朝日に品格も品位もないのは、リーク情報に手を加えるようなセコイ事をするところで、良くありがちな小心者の安っぽさではないだろうか。これに引っ掛かりそうになった私の血は、頭に上ってしまうところだった。
 一昨日ここで取り上げた斎木昭隆氏(参照)に続いて高見沢氏も同様、これが日本のエリートの実態ですかというもの。ただ気になるのは、彼らの目的だ。これほど薄汚く立ち回り、品位もないと罵られてもこの役目に徹する価値があるとしたら、それは私腹を肥やすためなのか、日本の存続のためだろうか、わからない。こうして何もなかったように日本が没することもなくそれなりに健在していることは、その賜物なのだろうか。
 リーク情報にあるような密約、売国、個人情的漏洩などを致した官僚の数々の働きによる成果といったらよいのか、現実に何かに役立ったのだろうか。というより、民主党が画策する基地問題はこれからどう展開するのか全く見えない。とりあえず、鳩山さんは退陣したし、普天間飛行場移転は辺野古移設で合意している。
 昨日の沖縄タイムスによると、北沢防衛相は7日、仲井真弘多知事と会談を持ったようだ。これによると、会談では同飛行場の県外移設を求める仲井真知事と、名護市辺野古への移設を決めた日米合意の履行を主張する北沢氏との間で議論がかみ合わず平行線だったようだが、次のような条件が提示された(参照)。

普天間飛行場の移設と米軍再編がパッケージとする見解を強調した上で、「日米合意が進まないと嘉手納以南の基地の返還、(海兵隊の)グアムへの移動という大きな枠組みの動きが止まってしまう」と述べ、あらためて辺野古移設を推進する考えを示した。

 交換条件のように出された課題だが、この条件を満たすためには辺野古案に沿うしかないように思える。日本の官僚が命がけで阻止したとおり、仲井真知事の県外移設の可能性などは無いに等しい。蒸し返しても同じ結果になるだろう。ところが、移設先を米軍嘉手納基地への統合はどうかという考えも出て来たようだ。実は、現地の土地勘をもつ人なら大概嘉手納統合案にうなずくというものらしい。朝日記事にはこうある(参照)。

 訪米中の国民新党・下地幹郎幹事長らの国会議員団は6日、ワシントンで記者会見し、ジョーンズ前米大統領補佐官(国家安全保障担当)と5日に会談した際に、ジョーンズ氏が沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設先として、同県名護市辺野古ではなく、米軍嘉手納基地への統合を支持した、と述べた。
 下地氏によるとジョーンズ氏は、日米両政府が合意している辺野古への移設について「初めて合意した時から、実現する姿を想像できなかった」と発言。嘉手納基地への統合案が「今も最良と思っている」との持論を披露し、米国防長官が6月末に交代する時が「この問題を前進させる大変よい機会だと思う」と語ったという。

 ゲーツ国務長官の退任が6月に迫っているが、今年の2月に次のように話している(参照)。

 ゲーツ国防長官は「移設問題の解決なしに、部隊が沖縄を離れることはないし、土地が日本・沖縄に返還されることもない」「私としては、今春の遅い時期までには、満足できる解決ができるよう望んでいる」と16日のアメリカの議会の公聴会でこう語り、この春までに普天間問題にかたをつけたいとの考えを示しました。
 これに対して仲井真知事は、名護市が基地建設に反対していることをあげ春までに解決するのは困難との立場を強調。普天間問題の解決が嘉手納以南の基地返還の前提条件になっていることに対しては不快感を示したということです。

 在任中に沖縄問題に片をつけたいという意向は達成できないようだが、退任後すぐさま話しが一転するとも思っていもいないことだろう。この件には関心を持っておきたい。
 また、話しが散漫になるのだが、訪米中に国民新党・下地幹郎幹事長はキャンベル国務次官補との会談で「3年以内に(代替施設の)着工できなければ普天間はそのまま残ると明確なサインを出した方がいいと述べた。」とある(参照)。一議員としての訪米であるため、キャンベル氏も「議員の率直なメッセージに感謝する」と応えたようだ。このような動きは、移転問題に進展がみられないことからの苛立ちからだろうか。だが、いずれにせよ、日本の官僚は移転を望んではない。だとすると、議員の苦労や政府の模索は、沖縄の要望に答える方向ではない。官僚が望んでいるのは、普天間基地はどこへも移さないということだろうか。
 官僚が決めたレールの上しか走れない電車であるのに、政府と沖縄がそれぞれの好きなところへ行くのだと運転席を取りっこしているだけのように映る。

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コメント

妥協するな!だから沖縄県内の基地でさらに飛行回数が増えたり、海外基地の戦闘の飛来が増えたり、容疑者引き渡しを拒否したりと、嫌がらせ行為は数々は官僚も関わっているのかな?なんて思ってしまう!前々から怪しいと思う事が多々。
尊敬されるべき人々の裏切り行為は本当に残念!

投稿: ウッキー | 2011-05-11 05:57

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