2011-05-29

欧州の南北に広がる経済格差を背景に主要国は迷走を始めた?

Stevebellg8summit001

  • Steve Bell
    • The Guardian,のコメントFriday 27 May 2011:French president Nicolas Sarkozy hosts the heads of the world's wealthiest nations in Deauville, France, for the G8 summitフランスの大統領ニコラ・サルコジは、ドーヴィル(フランス)のG8サミットで世界の最も裕福な国の指導者を接待します。

 ドーヴィル(フランス)で行われていた主要8カ国首脳会議(G8サミット)が27日、閉幕した。地震、津波、原発事故問題を抱える日本が世界に向けて何を発信するのか、それを問われた首脳会議であったと思ったが、なんとなく世界のメディアから菅さんはスルーされているような印象を持った。菅さんの出発に当たって、ファイナンシャルタイムズが独占インタビューした記事に訳をつけたJBpressが紹介しているが(参照)、その後は特にこれといって報じるものはなかった。むしろ、中東や北アフリカの民主化運動「アラブの春」への支持を採択したことに少し驚いた。
 ロイターが報じた記事によると、エジプトとチュニジアの独裁政権に変わる新政権の立て直しを後押しするため、総額で200億ドル(1兆7000億円)が「ドービル・パートナーシップ」として融資されることになったそうだ(参照)金額として、これで充分かどうか分からないが、日本の復興予算が今年度は約4兆円で、予算の全体では10兆円を超えると予想されている。まあ、単純に比較するわけにもいかないか。ただ、日本も大変だが、欧州諸国も財政的にはかなり緊縮財政が続いている。隣国の支援も外交的には必要あっての事とは思うが、足元に広がる火の手はどうなるのかと思った。
 5月12日のNewsweekの「南北格差拡大でヨーロッパ分裂の危機」(参照)では、欧州の南北が経済格差によって分離する危機が迫っていることを取り上げていた。この記事を読んでいたということもあるが、現実問題として、自国の経済状態が不安定になれば他国を救っている場合じゃない、という国民の不満が政権を揺るがすことになる。ドイツの風当たりは相当に厳しくなっているようだと感じる。この辺りのことを知るために、もう少し情報を集めてみることにした。
 ユーロ圏の足を引っ張ると表現するのはあまり好ましくないが、どうにもならないのがギリシャやアイルランドの経済で、ユーロからの融資を返済するどころか、財政危機の立て直しが遅れて巨額の財政赤字を抱えているため、ヨーロッパの債券市場で人気が落ち、国債がどんどん値下がりしている(NHK)。

 23日のヨーロッパの債券市場は、ギリシャの財政問題を背景に巨額の財政赤字に苦しむ国の国債が売られ、このうちギリシャとアイルランドは、10年ものの国債がいずれもユーロ導入以来の最安値まで値下がりしました。また、自力の財政再建が果たせるかどうかが注目されているスペインやイタリアの国債も大幅に値下がりしたほか、外国為替市場ではユーロもドルに対して下落しました。市場関係者は「ギリシャへの懸念に加えて、先週末、イタリア国債の格付けの中期的な見通しが引き下げられたことなども加わって、ユーロ圏の財政問題に対する厳しい見方が強まっている」と話しています。

 この記事でも分かるが、欧州の南の国々の代表として、ギリシャ、イタリア、スペインがどーんと上がっている。因みにスペインでは、25歳以下の失業率は45%に達しており、若年労働者の不満は爆発寸前だと毎日が報じている(参照)が、この数字は尋常ではない。これらの国が北の比較的裕福な国の足を引っ張っているという不満を先のNewsweekが次のように書いている。

「放漫国家」への財政支援に対する嫌悪感と移民の押し付け合いがユーロ圏の結束を揺さぶっている
「ギリシャとポルトガルを助けたいなら、『ユーロ圏から出て行け』と言うしかない」と、独メルケル政権と連立を組む保守派のキリスト教社会同盟(CSU)のペーター・ガウヴァイラー議員は言う。

オランダの極右政治家ヘールト・ウィルダースも昨年、こんな発言をしている。「(ギリシャは)卒業パーティーが終わったらすぐに引退生活に入るような国だ。彼らがスブラキ(ギリシャの肉料理)を食べ、(蒸留酒の)ウーゾを飲んでいる間に我々は働いている。ギリシャ人にやる金は1セントもない。スペイン人とポルトガル人も同じだ」
反EUの極右政党が各国で躍進
ユーロ加盟国で相次ぐ財政危機は、支援金の大半を負担する財政健全国のEU懐疑派に大きな恩恵をもたらしている。オランダでは、ヴィルダス率いる極右政党「自由党」が昨年の国政選挙で得票数を3倍近くに伸ばした。過半数に満たない中道右派の政権党は、自由党の協力がなければ政権を運営できない状態だ。

先月、総選挙が行われたフィンランドでも、対ポルトガル支援への反対を含む反ユーロ政策を掲げる民族主義政党「真正フィン人党」が突然、第3党に躍進。「パーティーはおしまいだ」と、同党のティモ・ソイニ党首は言う。「なぜフィンランド人が外国人を助ける必要があるんだ? フィンランドから搾取するのは許さない」
ファンランド議会でEUへの拒否権発動に必要な票を集められれば、真正フィン党がEUのポルトガル救済計画を台無しにすることも理論的には可能だ(現実には、EU支持派である与党の賛成を取り付けないかぎり、無理な話だが)。

だが、ドイツなどで主流政党からも救済反対の声があがっていることに加えて、真正フィン人党やオランダの自由党、フランスの国民戦線などの極右政党が台頭している現状は、ユーロ圏の結束を揺るがしかねない。域内の富裕国と貧しい国の連携こそ、EUの長年の命綱だったのだが。

 国民が支持している政党という視点で見ると、Newsweekが捉えているとおり、EUを支える公約を挙げている政党は人気が落ち始めている。また、EUの結束が何のためなのか、その趣旨自体が分からなくなってきているような向きがあると思う。これとは逆に、主要国は中東やアラブの民主化を支援するため、資金援助の政策の強化を決めている(毎日

 【ブリュッセル斎藤義彦】欧州連合(EU)は25日、中東民衆革命の拡大を受け、地域諸国の政治・経済改革を支援する「欧州近隣諸国政策」を強化すると発表した。公正な選挙や表現の自由の保障など民主化を進める国には資金援助し、EUへの市場参入などを認める。エジプトなど独裁的な国に支援してきた過去を反省したもので、民主化と支援を連動させる。
 EUは26日からの主要8カ国首脳会議(G8サミット)で中東政策の見直しをアピールする。11年から13年の近隣諸国政策の予算に12億ユーロ(約1400億円)を積み増し、約70億ユーロ(8100億円)規模とする。
近隣諸国政策は中東諸国だけでなく、ベラルーシなど旧ソ連諸国も対象。報道の自由の保障、公正な司法制度の確立、汚職の撲滅など民主化を達成した国には貿易関係の強化、学生などの受け入れ、安全保障協力などで応える。アシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)は「改革を早く進める国は、支援に早く近づくことができる」と述べた。

 民主化が進めば国際社会の一員となるのは道理で、納得できるが、民主化と支援を連動させるという考え方には直ぐに頷けないものがある。そこまで肩入れする理由がはっきりしないのと、民主化を進められる国力があれば支援を必要とするだろうか、という疑問があるからだ。エジプトのような独裁政権国を支援してきた過去の反省がこれか、と、少し路線が違うような気がした。
 私自身もよく整理できていないが、ユーロ圏の赤字を抱えた国を支援してきた結果、やってらんねぇと悲鳴を上げている一方で、これから民主化を進めるというエジプトやチュニジアには融資が決定している。これは、エジプトとチュニジアの民主化を管理するということに他ならないのではないだろうか。なんとなく、植民地時代の郷愁が漂ってくる。
 また、先の記事にもあるとおり、EUの経済問題をもう少し改善しないと政権こそ交代の危機に陥りかねないと思う。ユーロはドイツが持ちこたえられなくなれば破綻を迎えるのではないかとさえ思っている。しかも、セルビア・タディチ政権が検討中であるEU加盟が、セルビア復興に果たして有用かどうも怪しくなってきている。Newsweek5月27日記事で取り上げているが(参照)、加入すればEU諸国との関係改善になり、結果として復興にとっては良い方向になるような気もするが、不可欠かどうかは分からない。
 一見両極端に走っているように映るこの状況から、この先をどう読んだらよいかよく分からない。

追記:冒頭のイギリス人の漫画にあるようなフランスを中心にドミノ倒しの構図予言するようなエントリーが、2004年の極東ブログ「大欧州がコケるに賭ける」(参照)で興味深く書かれている。参考までにリンク先を参照されたし。

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