2011-05-13

ウィキーリークスで2010年1月26日に公開された鳩山氏の側近松野氏の働きについて

 昨日の明け方、12月9日のウィキーリークスの公電で伝えられた沖縄基地移設問題に関して民主党内の意見割れや、小沢氏側近の山岡氏のアメリカへの取り繕いなどに触れて書いたが、その余韻が残っている時、Twitterで「米有力議員ら移設案見直し要求」(NHK)というクリップニュースが流れた。
 この件では特に驚くこともない。先日から折に触れて話している通り、ゲーツ国防長官が退任する6月以降が狙い目だというこぼれ話をもたらした下地議員らが、ジョーンズ前米大統領補佐官(国家安全保障担当)と5日にワシントンで会談した際に聞き出したことを知っていたというのも理由だ(参照)。ボーっとしていたのもあって、その前の早い時間にもこの件で各紙が報じていたことを後から知ったが(時事47東京)、2009年、岡田氏が外相として沖縄基地問題を独自に調査し、辺野古案は現実的ではないとした上で、嘉手納基地の一部と普天間飛行場の統合案を検討していた事が浮かんだ(参照)。
 この案は沖縄の人達が容認できるものとは思えないが、岡田氏の実直さは、このところのリーク情報では見ない政治家として一目置いた。ここだけの話し、ウィキーリークスでこのところ暴露されているのは、人がもつ二面性という点でろくでもない側の方だ。嘉手納基地の件が今浮上したのは何かの因縁か、絶妙なタイミングとも思う。そして、昨日の昼頃、極東ブログで2010年1月26日付けの次なるリーク情報の訳が挙がった(参照)。
 きたーっ!!とばかりに飛びついて読んだ。名護市長選の翌日の公電であった。おお、段々記憶が最近のこととして蘇ってきた。不思議なものだ。2009年から2010年に変わった途端に「昨年」のこととなり、頭の引き出しの場所も守備が良かった。
 さて、ここで耳寄り情報だと思ったのは当時、鳩山氏が一人だけ浮きまくりだった点がまず一点。二点目に、側近であり「首相が全幅の信頼を置く」松野官房副長官は、ジキルとハイドだった点だ。そこを見抜いているようであるルース氏は露骨には書いていない。ここは、クリントンさんのようにコメツキバッタ2.0にならないような配慮でもあるのかもしれない。私は、一度読んでその事実を疑い、二度目で松野氏の立ち回りのよさが窺えた。三度目は、読みようによっては手回しの良い側近であり、鳩山氏の性格を知り尽くしているが故の暗躍を果たしているというべきかもしれないとも思った。鳩山氏は県外移設を本当に実現できると思っていたのか、表向きに過ぎなかったのかその辺がはっきりしてこないが、少なくとも、斎木昭隆氏など官僚は阻止しようとしていた(参照)。また、松野氏は辺野古移設と県外移設の両案以外の可能性として、独自に模索し始めていたのだろうか。その辺の機微は、見方によってはジキルとハイド的な部分だ。
 さて、その松野氏が今回のリーク情報の主役だ。
 松野氏が米大使館に伝えた中で名護市長選の結果は鳩山氏の決意を揺るがすものではない、というころまでは政府の政策決定による部分と地方政策とを区別して明言しているため、特に問題はないと思ったが、次のような発言がいきなり出て来た。

現行の普天間案に手を入れた案はいまだ検討事項となる。「鳩山首相には依然『自由裁量』があると松野はなんども述べた。

 ここをどう読むかだが、「現行の普天間案」とは2006年、自民党時代に合意が認められた案で辺野古移設のことだと思うが、これが「検討事項」として松野氏の中で生きているというのがそもそもアレな話だ。これは、鳩山氏の県外移設案を何と心得たか戯け者めが、と、お怒りがあってもよいようなことだ。だが、『自由裁量』という言葉を鳩山氏の名誉のために残しつつ、「県外移設」以外の選択肢を検討する腹もあることを暗に仄めかしたことが暴露されたわけだ。つまりここがハイドでありジキルでもある。鳩山氏の県外移設案がぽしゃった際の腹案として他の選択肢を模索していたとすれば、側近ならではの手際のよさとも受け取れる。これをアメリカの大使館員ルース氏はどう思っただろうか。謎。
 さて、この選挙に世間の注目が集まったとおり、辺野古移設に反対するという理由だけで稲峰氏が僅差で市長となったわけだが、ご覧の通り政府は気にしていない。では何が見えたというのか。ここで「沖縄基地移転に見る小沢独裁政治の行方」(参照)で小沢氏の目論見を書いたことを思い出し、そこからもう一度、極東ブログの1月26日の「名護市市長選挙と普天間飛行場移設問題」(参照)を読み直してみた。政局の様子をがっつり捉えられていて、リーク情報と並行して読む醍醐味がある。あまりにも大当たりなので以下に引用させてもらった。

しいて言えば、三点可視になった部分はある。
一つは、鳩山政権が昨年夏に想定していた以上に迷走していることだ。
決定プロセスにあった。端的にいえば、合議的なプロセスもマニフェストもへったくれもなく、小沢氏の独断ですべてが最終的に覆ったことだ(参照)。くどいが、小沢氏の判断は結果からすれば正しいとも言えるものであり、小沢氏が民主党の屋台骨であると言えないでもない。そして、この独裁的な決定権を事実上持つ小沢氏が、辺野古移設問題でもNo!と言っているから(参照)、連立与党がとりあえずまとまっているかに見える。ただし、この小沢氏の論点は辺野古移設反対に留まらず、「軍事戦略的に米国の極東におけるプレゼンスは第7艦隊で十分だ」(参照)という見解に結びついているにもかかわらず、民主党内ではその合意はまったくといってほど取れていない。

二つ目は、その屋台骨の小沢氏の動向がまったく不明になっていることだ。小沢疑惑の今後の動向は見えない。

三点目は、以上の経緯を踏まえても米国が軟化していることだ。軟化の理由は、日本の政治の不在に対する米側の絶望感だが、加えて、高まる中国問題や、オバマ政権も鳩山政権のように内部できしみが発生しいることがある。

論理的に見れば、鳩山政権の課題は、辺野古移設の可否ではなく、普天間飛行場を撤去して、米側が要求する「軍事上の要請を十分満たした代案」の推進である。現行では、鳩山氏の発言からもそれを志向しているので、5月までの検討を注目したい。

 間を抜きすぎた引用で分かりにくいかもしれないが、リーク情報にあったように、鳩山氏やその側近がどう動こうと、官僚が阻止して辺野古案をねじ込もうともびくともしない小沢案がこうしてあったということ。側近の山岡氏が必死こいて大使館で説明した理由も多分これだ。
 第七艦隊というよりも「やまと」があれば極東地域の安全保障は万全だと言われているほどの空母らしい。小沢氏の腹は、これに守れている日本は安全だというだけではなく、先日のリーク情報にもあったとおり、核の持ち込みを目論んでいたのが本当なのだとやっと私にも結びついた。つまり、国連軍に寄与するための軍隊を日本も配備するというところまで話は及んでしまうことになる。ここは、昨日のエントリーでは確信が持てず、疑問視のままで終わっていた部分だった(参照)。
 山岡氏がアメリカ大使ルース氏に7月の参院選まで待って欲しいと暗躍に奔走したが、小沢氏が首相になっていたら日本はとんでもないことになっていたのジャマイカ。核の平和利用と並行して核保有国日本になるところだった。そして、今だから笑える「一緒に降りましょう」と鳩山氏が自らの辞任と同時に小沢氏を降ろしたこと、これが鳩山氏を党代表に選んだ民主党の唯一の功績かもしれない。
 エントリーはここまでのつもりだったが、昨夕飛び込んできたオスプレイ関連ニュースに少し触れておきたい。
 琉球新報が以下のように伝えている(参照)。

 

Img4dcb2ea91fa03

政府は普天間飛行場に2012年から配備が計画されている垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、沖縄側に正式に配備を説明する方向で調整に入った。政府はこれまでオスプレイ配備の可能性については言及していたが、正式な説明は避けていた。普天間飛行場の移設が遅れ14年までの閉鎖が困難になったことで配備が迫っていることから、地元への説明が不可避と判断した。早ければ今月末に開催予定の沖縄政策協議会で説明する可能性もある。仲井真弘多知事も配備反対を鮮明にしており、県内の反発を呼ぶのは必至だ。

米海兵隊は12年から24機を順次配備させる予定だが、日本政府はこれまで、米側から配備について正式な報告は受けていないと繰り返し、地元への説明を避けてきた。
一方、09年12月には防衛省の担当者が沖縄等米軍基地問題議員懇談会で「(米国の計画書では)普天間のヘリは、全てオスプレイになるとの記述だ」と述べるなど、政府がCH46の代替としてのオスプレイ配備計画を把握していることを認めていた。

 さて、2009年に防衛省がアメリカの計画書を住民に知らせていることからすると、当時の民主党政府の説明責任は果たされず、「正式な報告は受けていない」と言い逃れをしたかに思われる。が、アメリカのこの計画は、基地問題が未解決のままでも貫くつもりがあったと思われる。
ついでと言っては何だが、先の小沢氏の野心の文脈で引用した同エントリーにこのことが示唆されている。

台湾有事に備えるには沖縄にヘリポートが必要だとの論もあるが、アーミテージ氏の言う可能なかぎりの「軍事上の要請を十分満たした代案」に新在沖海兵隊飛行場の必要性がどの程度あるかについては、明確な議論はない。というか、この問題は、現行の普天間飛行場でかなりクリアできるので、その意味では、辺野古移設がすべて頓挫しても米側としては現在の普天間飛行場の確保でなんとかなる

 アメリカの示した2012年の計画を行使するには今から予告があって然るべきだし、これを妥当だと政府は認めざるを得ないだろう。沖縄の人々が、危険極まりないとするオスプレイを普天間に持ち込むなと反対すれば、アメリカの基地移設案を呑むしかなくなる。アメリカとの合意は辺野古だが、オスプレイのための準備は整っていないとなると、「普天間飛行場の確保でなんとかなる」の道理が通る。それとも、抑止は無用だとして日本は独自に軍を持つかという小沢案をとるかだ。

|

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ウィキーリークスで2010年1月26日に公開された鳩山氏の側近松野氏の働きについて: