2011-05-21

オバマ大統領演説について雑感:中東和平交渉に関わらないオバマ氏の見据えていることとは

 オバマ大統領の演説は予定通り19日に行われ、私も予定通り遅れて目を通してみた。始めはウォール・ストリート・ジャーナルあたりなら直ぐに全文が出るだろうと思ってチェックしていたが、ホワイトハウスのホームページにそれがあるのを知った(参照)。今更だが、これは驚きだ。というか、アメリカのホワイトハウスのホームページに日本の一主婦がアクセスし、大統領の演説をテキストで読めるなんて感激する。大変身近に感じられた。
 さて、15日の「ナクバ(大惨事)」にイスラエルとパレスチナの衝突があったことに触れ(参照)、この緊張状態でのオバマ氏の演説が気になっていた。中東和平問題に触れたオバマ氏の演説は約二年ぶりというのもある。ところが、全文ともなると非常に長い、またそれに訳をつけるとなると大変時間がかかってしまう。かといって一部を抜粋して引用に使うのは物足りなさもある。いろいろ思ったが、演説のメインである中東和平問題についてのみ取り上げることにした。
 話は広範囲なものだった。ビンラディン殺害からテロの問題に始まり、中東、北アフリカの政変という問題提起からアメリカの対応を模索したという話で始まり、これらの民主化への支持と経済的な援助を約束するものであった。
 スピーチを要約すると、中東和平の諸問題として1)パレスチナ国家の国境、安全保障問題、エルサレム問題、難民問題を挙げたが、パレスチナと安全保障問題がから交渉の取り掛かりとして重要である。2)交渉は、イスラエルとパレスチナ間で行われることが望ましい。3)パレスチナ国家設立は、国連総会での承認にはよらない。4)ハマス(イスラム抵抗運動)は、パレスチナの和解にとってこれまでの立場を見直すことが必須である。このように、中立的な立場から和平の重要性を説き、交渉再開を願っていることを明らかにした。
 この演説を受けて中東の各国からコメントをBBCが伝えているが(参照)、他の記事でBBCが報じている通り、イスラエルのネタニヤフ首相はオバマ氏との会談で、1967年の国境に関する創設案には反対するコメントを出した(参照)。この地は、防衛不能で、パレスチナ側に多くのイスラエル集落が残るためだとした。これは、パレスチナ国家の非武装化の問題が根本にあり、国境問題そのものであると言ってもよいのではないだろうか。
 この1967年国境は、第三次中東戦争の和解原則を定めた決議で、イスラエルには占領地の返還を、アラブにはイスラエルとの共存を求めるものだ(決議242号)。問題は、イスラエル側が撤退すべき占領地を曖昧にしている点で、パレスチナ人に対しては難民という扱いをして民族自決権を認めていない。国際的にはこの242号が中東和平の解決への定義としている。つまり、オバマ氏が演説で説いた立場は特別新しいものでもなく、これまで国際社会が取ってきた立場をこれからも変えないということを表明したに過ぎないと思った。ただ、アメリカ国内のユダヤロビー(ユダヤ系)のイスラエル支持者から大きな反感を買うような提言であるとは思う。
 結局、和平交渉が進まなかった原因に、イスラエルとパレスチナの国家間以外に世界中に広がるユダヤ系とアラブ系が二極に分かれ、国際法と決議242号の趣旨を無視した議論しかなかったからではないかと思う。とは言え、これまでアメリカの何らかの介入があったから中東和平問題が多少なりとも進んだかに思う。第一次から始まる第三次中東戦争を経て決議242号までこぎつけたのは、その歴史からもはっきりしている。が、今回、オバマ氏はアメリカの原則的な立場は表明したが、直接的な関わりへの言及は何もしてない。つまり、「見ているから仲良くしなさい」といったスタンスだろうか。喧嘩に割って入らないということだろうか。それでどうなるかと言えば、圧倒的に強いイスラエルは妥協しないでしょうし、パレスチナは暴力に訴えるしかないという従来どおりになるしかないと、こういう結末が見えちゃうことになる。
 私としては、圧倒的に強いイスラエルが問題解決に積極的にならなければ国境問題は解決できないと思っていて、オバマ氏の演説後のネタニヤフ首相との会談は、非常に重要なポイントだと思っていた。ところが、先のBBCの報じていることによると、ネタニヤフ氏は、オバマ氏の演説から国境に関する部分を削除して欲しいと激怒したことをもらしたとある。これが本当なら、和平どころではないようだ。また、ウォール・ストリート・ジャーナルでは、オバマ氏の演説後の両極のコメントを次のように報じている(参照)。
 

 1967年の境界線に基づくパレスチナ国家の創設案はパレスチナ紛争に対するオバマ大統領の最も重要な転換とみられるが、イスラエル当局者は直ちにこれを拒否した。一方、パレスチナ指導者は、オバマ大統領がイスラエルに入植活動の凍結を呼び掛けなかったと不満を漏らしている。

 今回、話の進展がないとすると次の場面は、秋の国連総会が国際社会が議論できる場ということになるが、パレスチナ国家承認という決議案が出されれば、アメリカは在米ユダヤロビーの事もあり、もしかすると拒否権行使ともなる。すると、アラブから反発を食らってしまうことは想定内のことである。つまり、アラブからの敵対視を軽減するため、1967年国境問題をちょい出ししたとも言える。
 これから先は、オバマ氏の善意なのか偽善なのかみたいな憶測に走る危険な考察なってしまいそうなので、今日はここまで。

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