2011-05-21

最悪のタイ総選挙のシナリオ

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 おーまいがー。タイのタクシン元首相の9番目の妹さんインラック・シナワトラさんは7月3日、大統領選に出馬ですと。微塵じゃなかった美人43歳。アメリカ・ケンタッキー州立大の政治学の博士号を取得した後、タイのモバイル通信大手AISと、不動産大手SCアセッツで要職を歴任したキャリアウーマンである。政治家としてはずぶの素人と言う噂が各紙で流れているようだ。この点で、極東ブログで海外紙からの抜粋を引用しているので参考になった(参照)。日本でもぼちぼち見かけるが、タイの現政権のアシビット首相の対抗馬として正式に出馬を表明したと報じた毎日記事はどうだろうか(毎日2011・5・19)。

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タイのタクシン元首相派によるバンコク都心部占拠終結から1年の19日、タクシン派の「反独裁民主戦線」(UDDいわゆる“赤シャツ”))は軍との衝突に伴う死者を追悼するため、占拠の現場となったラチャプラソン交差点で1万人を超える大規模な集会を開いた。この日は7月3日投票の総選挙へ向け、各党の比例代表選候補者の届け出開始日でもあり、当局は多数の警官を動員して不測の事態に備えた。

昨年の衝突では、日本人カメラマン、村本博之さん(当時43歳)を含む91人が死亡した。軍は兵士の発砲で死者が出たことを認めず、貢献党は軍や政府の責任追及を公約に掲げている。【バンコク西尾英之】

 私は、このところオバマさんの中東和平問題で手詰まり感があり、ちょいスルーしていたが、ちょっと面倒な展開になるかもしれないという思いがよぎり、後のための参考として備忘的に記事を拾っておくことにした。
 彼女の出現には言葉を失ったほど呆気に取られた。記事にもあるとおり、昨年、タクシン元首相の支持者らが反政府デモを起こし、当時の軍の対応に対する責任追及を公約に挙げている点が既に挑発的であることだ。これだけで、赤シャツの血が騒ぎ出すには充分であると思った。
 また、タクシン氏は汚職罪で2009年、有罪判決を受けて海外逃亡中の身であるため、身内が首相の座に就くことで恩赦や裁判のやり直しなどを目論んでいるとしか思えない。それでも大統領に選出される可能性がなければ問題にはならないと言いたいところだが、実は、可能性があるから困りもの。
 実は、支持率も問題で現職のアピシット首相とは僅差(参照)である上、タクシン氏の支持者が多いタイ東北部の支持率は、64%と与党の21%を大きく上回っている(参照)。

【タイ】タイ国立コンケン大学の東北ビジネス経済研究センターが4月28日―5月3日にタイ東北地方の20県で実施した世論調査で、タクシン元首相派の野党プアタイの支持率が63・9%と、与党・民主党の20・7%を大きく上回った。連立パートナーのプームジャイタイ党は9・1%、チャートパタナープアペンディン党は5・3%だった。回答者は2354人。

東北地方はタイの中で平均所得が最も低い一方、人口が最も多く、過去に度々、国政選挙のカギを握ってきた。タクシン政権(2001―2006年)のばらまき政策で恩恵を受け、タクシン派の最大の地盤となっている。タイの民主党連立政権は数日中に下院を解散、6、7月に総選挙が行われる見通しだが、民主党は政権の座にあった過去3年で東北地方の支持を得ることに失敗した形で、政権維持への道程は険しいものになりそうだ。

 ばらまきで恩恵を受ける話しというと、日本の自民党政権時代の地方農業になんだかその構図を重ねて見てしまうが、所得の低い高いに限らずばらまきが効果的であるのは言うまでもない。そうなら、多くの支持者から支持を得ている政党が政権をとったらよろしいというのが民主的で理想的でありそうだが、反政府が実権政党になるのは、タイの場合はマズイ。
 タイという国は軍の力がかなり強い。というよりも、軍が国を治めている。軍人が首相を務めたこともあり、国防大臣はほぼ全期が軍人である。反政府のタクシン派が政権をとれば、混乱になることは間違いない。では、落選したらよいのかも。この仮説には意味など全くない。
 今回の立候補で一番の困りものは、仮に落選しても、世論調査の通りの割合で落選すれば両政党とも過半数に満たない。つまり、連立という道しかなくなる。これは、更なる混乱になる。軍と与野党連立政権がともに上手く政治運営が出来るわけがない。国民が一番迷惑なことになると思う。

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