2011-05-26

中国・ASEAN諸国の南シナ海領有権問題と日米の関わりについて

 三日程前になるが、毎日新聞で「南シナ海:中台やASEAN諸国 領有権の主張強まる」(参照)の記事が気になっていた。日米同盟に何ら異変も起きたわけではないが、中国の軍事力増強に伴い、アジア周辺国には中国や北朝鮮に対しては警戒心がある。現実に、中国から尖閣諸島沖で当て逃げのような目に遭遇した当時、政府の対応に苛立ちすら覚えた。また、先日公開されたWikileaksで知ったアメリカの公電にもあったとおり(参照)、民主党の防衛(抑止)に関する認識は杜撰なものだったことが私の警戒心につながっているという理由もある。それだけに関心が強くなり、我がことになったというものだ。
 早速蛇足だが、先日、沖縄アメリカ領事館大使だったケビン・メア氏が赤裸々にしゃべるという前宣伝に釣られて民放の番組を見てみた。そこで彼が話していたのは、民主党の人達は何故日本に米軍基地が必要か、抑止ということを分かっていない。特に鳩山さんは全く考えていない人だった。「菅首相はどうですか?」「宇宙人よりはましだけど・・・うーむ」みたいな砕けた感じで話が進み、彼が招かれたゲストとして質問なども受けていた。勿論、何故退職したかという質問もあり、個人のプライドと家族の名誉を守るには米政府をやめるしかなかったと話していた。私は、この番組をしばらく見ながら、先のWikileaksの内容を思い出していた。
 日米安全保障条約50周年記念を節目に、アメリカのキャンベル国務次官補と政権交代したばかりの民主党幹部や官僚との会談の中で、アメリカは日本政府にしきりに抑止の必要性を国民に説明するべきだと話していた。察するところ、新政権がどういったスタンスで日米同盟を考えているかがこの時点でアメリカ政府にきちんと伝わっていなかったのだと思う。また、鳩山案としての県外移設は、突飛に映ったのではないかと思う。野党時代に国民の声を政治に反映するのが国会議員の使命だみたいな夢の中にいた人なので、そのまま本心を言ったまでだった。それだけの人で終わってしまったが、アメリカにしたら、何て酷い政府だろうかと嘆かわしかったのではないだろうか。挙句の果て、沖縄の人達にはぬか喜びをさせてしまった。
 さて、日本政府はもとより、アメリカの抑止が東南アジア全域にとって大きな意味を持つことでもあるとは思いつつ、その日本政府が不在の折、現在の状況だけでも把握しておきたいと思い、クリップしておくことにした。
 まず、先の毎日の記事だが、何を問題にしているかだけ拾ってみた。

 南シナ海の領有権を巡り、経済力と軍備増強で実効支配を強化する中国、共同戦線を敷くフィリピンとベトナム、防衛強化を打ち出す台湾など、関係各国・地域の動きが活発化している。今後、シンガポールで6月3日から始まるアジア安全保障会議やインドネシアで7月に開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)でもせめぎ合いが続きそうだ。

  しかし、中国は多国間問題に発展することで米国の関与が強まることを警戒する。温家宝首相は先月下旬、マレーシアとASEAN議長国のインドネシアを訪問し、「領有権や海洋権益の争いは2国間で適切に解決すべきだ。問題の拡大や複雑化には賛成しない」とクギを刺した。中国国家海洋局は8日、南シナ海を担当する南海総隊に最新鋭の大型監視船「海監84」(排水量1740トン)を配備。海軍航空兵団は先月下旬、南シナ海で低空爆撃訓練を実施した。

 一方、フィリピンは中国への対抗色を強め、米国からヘリを搭載できる大型巡視船(同3250トン)を購入。フィリピン海軍では最大の艦船で8月にも南シナ海に配備される。潜水艦の購入も検討し始めた。このほか実効支配する南沙諸島のパガサ島の滑走路を、大型輸送機が発着できるよう改修する方針も発表している。

 ベトナムやフィリピンが積極的に国防に乗り出す理由だが、昨年、中国が独自のオンラインマップ「天地図(MapWorld)」のβ版を公開した際、いつもの勝手な線引きがあり、問題になった経緯がある(参照)。図があると華やぐのでここにその地図を貼ってみた。(クリックすると画像が拡大する)

Screenclip

 ベトナム政府の公式サイトによると、「天地図(マップワールド)」に示された南シナ海の境界線は、9本の途切れた線を用いて、両国間で紛糾しているスプラトリー(南沙)諸島とパラセル(西沙)諸島が、中国の水域にあるかのように示されている。11月5日、ベトナム外務省は、「天地図」は1982年の「国連海洋法条約」に違反し、2002年に交わされた「中国・ASEANの南シナ海における関係国行動宣言」の主旨に反するものだという声明を発表した。

 正確には10本の薄い線で囲まれた部分を指している。
 ところでだ。尖閣諸島の線引きはどうなっているのか見てびっくり。地図上の右上に「釣魚島」という表記の部分に線がない。日中首脳会談が昨年あり、そのために消されたのであろうか。
 このように、中国は、自国のご都合で勝手に線引きをするので困りもの。ベトナムとはしょっちゅうこの海域で漁船のトラブルが多発している。今に始まったことではないが、それだけにアメリカも手を焼いてきている。
 また、ASEANがこのような強気に出てくるのも19日、南シナ海問題ASEANの国防相会議が催されたようだ(参照)。

【ジャカルタ佐藤賢二郎】東南アジア諸国連合(ASEAN)は19日、インドネシアのジャカルタで国防相会議を開き、一部加盟国と中国が領有権を争う南シナ海問題や防衛面での協力強化を盛り込んだ共同宣言を採択した。
06年のASEAN国防相会議開始以来、共同宣言で南シナ海問題に言及するのは初。同海域での「航行や上空飛行の自由」の重要性を再確認する文言などを盛り込み、2国間交渉での解決を主張する中国をけん制した。
また、会議では15年のASEAN共同体構築に向けた防衛面での協力などについても討議。平和維持活動の能力向上のための「ASEAN平和維持センター・ネットワーク」構築を承認し、防衛産業の連携を強化して軍事面での技術向上を目指すことでも合意した。

 また、フィリピン軍の内部資料で、ベトナムが実効支配する島で新たに軍事施設の建設を進めていることが分かったと東京新聞が伝えている(参照)。

【マニラ共同】中国と台湾、東南アジア諸国連合(ASEAN)の一部加盟国が領有権を主張する南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島をめぐり、ベトナムが、実効支配する島などで新たな軍事施設の建設を進めていることが24日、フィリピン軍の内部資料で分かった。
中国も南沙諸島周辺で活発な軍事活動を展開しており、フィリピン軍は「緊張が高まる恐れがある」と警戒している。
資料によると、ベトナムが実効支配する20以上の島や環礁などの一部で、衛星通信施設などの建設を「驚異的なスピードで進めている」とし、「軍事基地強化を図っている」と指摘している。

 こういう動きを中国はどう見ているのかというのも気になるが、中国は確実に領有権拡張の動きを強くしているかに思われる。その中国の戦略が今後、日本のどこへどのように及ぶのかと思うが、地震と津波、原発の痛手を負ったというのに皮肉にも、核の抑止なくして太刀打ちでいない。複雑な思いはある。

|

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 中国・ASEAN諸国の南シナ海領有権問題と日米の関わりについて: