福島第一原発廃炉へ、現状からどう向かうのか
一昨日のNHKニュースの東電社員による会見で、泣きながら声を詰まらせ、しゃべれなくなる様子を見た。その様子に呆気を取られ、その後の話しが飛んでしまった。しばらくしてから、福島第一原発敷地内の別タンクにある溜めてある汚染水を海に捨てたということだった。話しがどんどん展開して行く中で、現在行われている作業が何のための作業か少し混乱気味になってきた。状況を追って把握しておこうと思う。
施設内のタンクから汚染水を海に捨てた理由に戻ると、これは、2号機から漏れ出していると見られる汚染水(毎秒3リットル)を何らかの方法でこのタンクに溜め、海に流れ出すのを防ぐためだったらしい。あの涙の理由は、汚染されてると分かりきった水をタンクから故意に捨てることへの無念な思いからだろうか。それにしても、ピットから垂れ流し状態になっている汚染水の放射性物質濃度の比ではないと聞いた。
タンクの問題について日経は、次のように報じている(参照)。
今後、2号機などの高濃度汚染水6万トンを、集中廃棄物処理施設(容量3万トン)に入れるほか、復水器や復水貯蔵タンクなどに約2万トンを移す。足りない分は、約2万トン分のタンクを新設するほか、5日午後に清水港(静岡市)を出発し16日以降に現地入りする予定のメガフロート(大型浮体式海洋構造物、容量1万トン)や、容量約1500トンのバージ船を数隻活用する。計画通りに行けば計8万トン以上の汚染水を貯蔵できる計算だ。
海江田万里経産相は5日の記者会見で「汚染された水を(意図的に)海にもうこれ以上流さない」と述べた。
ただ、汚染水は1~3号機のタービン建屋や坑道以外にもある。4号機の地下にもかなりの量があり、いずれ排出しなければならない。1~3号機にも原子炉に冷却水を入れ続けており、高濃度汚染水が今後も漏れてくるのは確実だ。
東電は汚染水の現状をつかめていない。いったんは集中廃棄物処理施設の低濃度汚染水を4号機のタービン建屋地下に流し込んだが、逆に3号機坑道の汚染水が増えてしまった。建屋地下と坑道が地下でつながっていたとみられる。
この汚染水が海にそのまま流れ出しているているのはピットと呼ばれる場所のコンクリートの亀裂が原因で、当初の対策はコンクリートを流し込んで亀裂を塞ぐということだった。この方法が失敗に終わり、続いて高分子ポリマーだったが、これも失敗に終わった。また、この作業中にもどんどん水は海に流れ出しているため、水がつたわってくる経路の砕石層に今度は薬剤を入れてガラス状に固める方法を採用しているそうだ。
朝日が次のように報じている(朝日)。
東京電力の福島第一原発2号機で、原子炉内の水とみられる高濃度の放射能汚染水が海に流れ出ている問題で、東京電力は5日、流出ルートをほぼ特定したと発表した。流出を止める工事を実施し、効果を調べている。
海への流出が見つかったのは、2号機の冷却水を取り入れる取水口近くの作業用の穴(ピット)付近。コンクリートの破損部分から流れ出ていた。
東電がピットの下の砂利(砕石層)に色のついた水を流したところ、色水が汚染水とともに流れ出てきたという。
砕石層は、タービン建屋とピットを結ぶ管の下に敷き詰められている。原子炉内からの汚染水はこの管に流れ込み、管のひび割れから砕石層に漏れ、ピットの下の方まで伝ってきた可能性があるという。
東電は5日午後、ピットの下に、砕石層をガラス状に固める薬剤を入れる止水工事をした。工事の後、海へ流れ出る水量はやや減ったという。東電は流出が止まるまで、さらに薬剤注入を続けるという。
一方、4日夜に始まった、集中廃棄物処理施設や5、6号機の地下水をためる升からの比較的濃度の低い放射能汚染水の放出は、5日も続いた。東電は計1万1500トンの放出を予定しており、5日夜までに約5900トンを放出した。
原発事故が起きてから、何らかの形で注水は続けられている。理由は、1~3号機が地震によって制御棒が差し込まれ、停止後も熱を冷ますためだ。
停電によって水を循環させながら冷却する装置が動かない事を知り、素人の疑問としてずっとあったのは、放水した水の行き場だった。と言うよりも、入れても入れても溢れ出てこない水は、一体どこへ流れているのかという疑問だった。やがて、トレンチから漏れ出している水が見つかり、この水をどうするか検討中にピットの亀裂から海へ垂れ流し状態になっているという経過だ。また、この水の濃度から、炉心からの汚染水ではないかと言われている。断片的にニュースを聞いていることもあり、途中の情報が抜けているのかもしれないが、炉心の底が熱で融け、その部分からの汚染水漏れだとは報じていない。報じるのを避けているのか、原因が特定できないからかよく分からないが、もしも、炉心の底抜けだとしたらピットの亀裂を塞ぐことや、先のガラス質に変わる薬剤を注入しても、水は行き場を探して新たに難度の低い場所へと侵食を始めるだけではないだろうか。海へ流れ出すのを食い止めたとすると、今度はそこから地中に深く染み込むということだろうか。
東電は、汚染水の処理に追われてあたふたしているという状態なのだと思うが、かなり深刻な状況だと思う。最も避けたい、高濃度の汚染水を水際でくい止められないという問題だ。炉を冷却しながら水を循環させる仕組みにしなければ、この問題はどのような方法をとっても時間の問題ということになると思う。
昨日のTwitterでクリップした大前研一氏は、水の処理に関して次のような見解を話している(参照)。
汚染水をどう処理すべきか
冷却に関しては、タービン建屋に何らかの形で立ち入り、底にたまった汚染水を復水器から炉心に戻し、循環させることを優先的に模索するべきだ。緊急冷却系が使えるならそれでもいいだろう。今のように毎日800トンもの水をポンプで外部から注入すれば、その受け皿が必要になるが、敷地内のラド・ウエイスト(放射性廃棄物)貯蔵用プールはおそらく満杯だろう。仮に空っぽであったとしても1カ月程度で満杯となる。
ここを読んで、極当たり前のことを言っているようにしか見て取れないのだが、では何故、このようなことを東電はできないかと思う。当然、これくらいのことは考えているだろうに。炉の水を循環させることに成功すれば、副産物的に発生するもろもろの問題が全て解消するように思う。
この作業が進まない理由について、先の日経記事が次のように報じている。
汚染水の量は経済産業省原子力安全・保安院などが推計した。1~3号機の坑道には3千~6千トン、タービン建屋地下の水の量は正確ではないが、水深1~2メートル程度がたまっていることから概算し、坑道と合わせて各号機に2万トンあるとした。
この汚染水を取り除かなければタービン建屋地下に入れず、水を循環させながら原子炉を冷やすポンプなどの電源を復旧できない。特に優先度が高いのは、海への流出が続く2号機の高濃度汚染水だ。
当初、東電が考えたのは汚染水をタービン建屋内の復水器に入れる案だった。復水器にあった水を他のタンクに玉突き排水していたところ、海への流出が発覚。コンクリートや吸水性樹脂では流出が止まらず、2号機の汚染水除去を急ぐ必要に迫られた。
窮余の策として、集中廃棄物処理施設にあった1万トン、5~6号機の立て坑内の1500トンの低濃度汚染水を4日から海に放出した。これらの水に比べ、2号機から流れ出ている高濃度汚染水は100万倍の放射性物質を含む。2号機の水を約10リットル流すと、今回海に意図的に流した低濃度汚染水の放射性物質の量を上回る。
電源復旧作業を困難にする理由は、建屋に近づけないという理由のようだ。現段階は、炉の温度を冷ますという直接的な作業の前の段階であり、そこに行き着く手前に問題が派生しているのが現状のようだ。
漏れ出した水の処理について大前氏の意見では、反応炉に戻すとある。東電案は余剰タンクに移すとある。作業がイメージし難いが、大前案の汚染水を炉に戻すのが順当のような気がする。それだと、汚染水の処理に困らないからだ。でも、問題は、氏が言われている炉心の底が抜けているという点を仮定すると、水を戻す前に底を修理する必要があると単純に思う。
また、東電案の水を別のタンクに移してから建屋に入って普及作業をするというのも、水は単に溜まり水ではなく、炉心から水は漏れ続け、どこからか一定量の水がこぼれ出しているので、つまり、炉から漏れ出す水を止めれば、タンクに移す必要はなくなる。または、次の作業に移れなくなるということだろうか。この点では両者とも同じ作業が必要になるのではないだろうか。
炉の水漏れを止めるための修理作業のことだが、底が抜けているとしたら、それを修理するのは可能だろうか。大前氏のこの説は、アメリカのフェアウインド・アソシエイツ顧問で沸騰水型軽水炉を監督して40年の経験を持つアーニー・ガンダーソン氏の見解(参照)に似ている。また、私の知る限りでは、東電はこの件には触れていない。でも私は、この問題が核心ではないかと、実は一番気になっている。
福島第一原発を廃炉にする方向であるなら、葬るまでどのような道を辿るのだろうか。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント