2011-04-27

「進化論をアニミズムと誤解」していたというこそばゆさ

 「ジュラシック・パーク」(マイクル クライン)()のこと、覚えている?後で製作された映画を見た人は多いかもしれないが、SF小説としての読み応えはたまらない。映画よりも描写は詳細に渡っていて凄い本だ。
 バイオテクノロジーを駆使してクローンを生み出し、自動化された管理システム内で飼育されている恐竜達を公開するまでに至った。このテーマパークが、人為的なミスによって制御不能に陥り、開発研究者達は自ら生み出したクローン恐竜に襲われてしまうというパニックサスペンスだ。こういう話しは、恐竜の存在を証明する化石の研究や新たな発見を知ることでどんどん話しが空想的になり、いつしか夢に降りてくる時がある。

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移行化石の発見
ブライアン・スウィーテク

 こんな話を唐突にどうしたの?という書き出しだが、昨日「移行化石の発見」(ブライアン・スウィーテク)という書籍の紹介で些か血が騒いでしまい(参照)、ジュラシック・パークを思い出してしまった。そういえばと、次に思い出したのが「猿の惑星」であった。空想に走ってどこかに行ってしまわぬうちに、早速本の注文を済ませた。
 この書籍を実際に読み、しっかり知っておきたいと思った部分は二点ある。一つは、人の直立歩行はナックル歩行から進化したのではなく、突然現れたものだという新説(?)と、もう一つは、始祖鳥が鳥の祖先ではないかと教えられた口だからだ。しかも、本書の隠されたテーマが「収斂進化(しゅうれんしんか)」だというので、ぞくっとした。高校で生物を選択した人なら覚えてるのではないかな。進化は、必然か偶然かという興味深い話だ。紹介によると、収斂進化にスポットを当てているわけではなさそうだが、援用しているとある。

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 収斂進化の話しは、例えば、人の二足歩行が生活様式などからの必然によるのか、遺伝的な要因によって進化を遂げたのかなどが挙がる。また、例に挙がっている始祖鳥も同様に言えるのだと思う。これらは、その必要性から進化したと仮定すると、その仮定にそぐわないことがあることも疑問として残ってはいた。それが、未知への誘惑と言うか、動機にある。
 例えば、鳥にあって始祖鳥に無い骨格上の違い等だが、私の頭の中は既に進化論(生気説)優先で、系統だった図式もインプットされてしまっているため、偶然説や創造説を受け入れがたくなっているかもしれない。本書が届く前に、頭を少し解す必要があると思い、助走的にちょっとネットで調べてみた。
 タラバ蟹の話しが分かりやすかったが、どうだろうか、私にとっては大変面白い話なので一部を引用させてもらった(参照)。

 分類学者がタラバガニをヤドカリのグループに分類したにはわけがある。タラバガニにはヤドカリによく似た曲がった腹が付いている。ただしとても小さく裏側にしまい込まれている。これは普通のカニには見られない。また、両者は成体では形が著しく違うが、幼生はとてもよく似ている。もう一つ、両者に共通するがほかのカニには見られない形質として、5対ある脚のうち、極端に短いものが一対ある点があげられる。この分類は本当なのだろうか?
 C.W.カニンガム、N.W.ブラックストーンとL.W.バスはこの疑問に答えるために、リボソームRNAを使ってタラバガニを含めたヤドカリのグループの分子系統樹を推定した。その結果、驚くことに、タラバガニがヤドカリの一つ、ホンヤドカリのグループから比較的最近進化したことが明らかになった(図1)。つまりタラバガニはヤドカリの一系統で、形態がカニのグループに酷似しているのは収斂進化の結果ということになる。形態の著しい相違にもかかわらず、タラバガニを正しくヤドカリの一員として位置づけた分類学者の眼力はさすがである。この論文は英国のネイチャー誌の表紙を飾ったが、「隠者から王者」という一文が印象的であった。

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 これはなんとも説得力のある話で、カニとヤドカリの容姿は全く違うにもかかわらず、あはは、タラバはヤドカリのなかーまとね、とすんなり入ってくるから可笑しい。
 先日Twitterで「日本人が進化論をすんなり受け入れたのは、アニミズムと誤解してるから。」というつぶやきに「ひでえっ ■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ」と、反応しているやり取りを見て、ひどくない説だと逆に関心を持っていた。
 進化論は論であって、タラバの話のような具体的な骨格の違いなどの明示がない。頭蓋骨はこんな風に進化したのではないだろうか、鳥の羽は、指が変化してこんな風にできたのではないだろうか、と教わってきた。例えて言うと、呪文にかかって催眠状態にあるのかもしれない。だから、「アニミズム」という表現に、後でにんまりした。
 一連のTweetが「移行化石の発見」を読むための導入になるとは思いがけなかった。

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