2011-04-13

ロイター竿白真一記者と読売が報じている福島第一原発4号機火災の相違点について

 昨日、米原子力規制委員会(NRC)と保安院の福島第一原発3、4号機に関する見解の相違について触れたところだったが(参照)、Twitterに思いがけない情報が投稿されたため、内容的には続編だ。
 それは、ロイターのアメリカ版の小さな記事「Fire seen at Fukushima nuclear plant; flames no longer visible」だった(参照)。竿白真一記者の取材記事で、日付は4月11日とある。この記事が伝えているのは、3月15日に起きた4号機火災時の東電社員の消火のための通報の様子だが、日本の読売が3月16日に伝えた東電大槻氏の会見での4号機の火災の様子と事実関係が異なる。これは、東電の隠蔽か確認漏れかを問わずにはいられない内容だ。また、重要なのは、この日の放射線量がこれまでの検出値で最も高い値である点と、NRCが指摘する3、4号機の使用済み核燃料棒が同日、吹き飛ばされて周辺に飛び散った可能性があり、事実確認をしておきたいと思う部分だからだ。ちょっと間違えばデマにもなることで、慎重にこの日の事を扱いたいと思っている。
 まず、ロイター記事だが、短いので全文を引用する。

Fire seen at Fukushima nuclear plant; flames no longer visible
Mon, Apr 11 19:53 PM EDT
By JAPAN-PLANT/FIRE

(Reuters) - A fire broke out at Japan's crippled Fukushima Daiichi nuclear power plant, operator Tokyo Electric and Power (TEPCO) said on Tuesday, although flames and smoke were no longer visible.
事故を起こした福島第一原発から火災が起きた。東電作業員は、火曜日にそう言い、既に炎と煙は目視できなかった。
A worker saw fire at a building near the No.4 reactor at around 6:38 a.m. (5:38 a.m. EST) and a fire fighting unit of the Self Defense Forces was sent to fight the blaze, a TEPCO spokesman said.
作業員が4号機付近の建物が炎上しているのを見つけたのは6:38(5:38米東部標準時間)、消火活動のために、自衛隊の消防部隊を出動されたと、東電広報が言った。
"Flames and smoke are no longer visible but we are awaiting further details regarding whether the fire has been extinguished completely," he said.
「炎と煙は見えなかったが、完全に消火したかどうかの詳細確認を待っていた」と述べた。
Japan has been battling to bring under control the plant damaged severely by last month's devastating earthquake and tsunami.
日本は、先月の地震と津波による壊滅的な被害から原発をコントロール下に置くために努力をしている。

Reporting by Shinichi Saoshiro
竿白真一

 まず、時間の確認だが、この記事内の「6:38」は括弧付けで東部時間(EST)が付記されているためアメリカ西部時間である。時差の15時間を足すと、日本時間では火曜(15日)の午前9時38分となる。これは、4号機の第一回目の火災が発見された時間で、東電作業員は自衛隊の消防部隊に通報後、自衛隊が消火に当たり、その後の詳細報告を待っていたという流れになっている。
 一方、3月16日の読売は、次のように火災を伝えている(参照)。

福島第一原子力発電所4号機で16日朝に発生した2度目の火災を巡り、東京電力は同日の記者会見で、「1度目の火災で鎮火したことの確認をしていなかった」と、確認を怠っていたことを明らかにした。火災場所は前日と同じ4号機の北西部分で、社員が目視で鎮火したと思い込んでおり、同社のずさんな対応が浮き彫りになった。
東電の大槻雅久・原子力運営管理部課長が、同日午前6時45分の会見で公表した。1度目の火災は、15日午前9時38分に発生し、東電は同日、「午前11時頃に自然鎮火した」と説明したが、大槻課長は16日、「社員が、目視で炎が見えないのを確認しただけだった。申し訳ない」と謝罪した。実は1度目の火災が鎮火していなかった可能性を報道陣から指摘されると、大槻課長は「放射線量が高くて現場に近づけず、確認できない」と釈明した。
東電によると、火災確認後、社員が2度消防に通報したが、つながらなかったため、放置していた。
2度目の火災は16日午前5時45分頃、4号機の原子炉建屋から炎が上がっているのを社員が確認。午前6時20分に消防に通報した。

 「社員が2度消防に通報したが、つながらなかったため、放置していた。」というのは一度目の火災を指していると思われるが、先のロイター記事では、自衛隊の消防部隊が消火に当たったと伝えている。この二つの記事の違いは、ロイター記事は、おそらく消防に通報した本人か、それを知るスタッフなどに確認した取材記事ではないかという点だ。
 次に、一度目の火災が完全に消火したかどうかの確認はできず、放射線量が高くて現場に近づけなかったという理由だ。が、ロイターが報じているとおり消防に当たったのであれば、その後の報告があったかどうかの確認ができていないのではないかと推測できる。つまり、大槻氏は、消火作業が行われたこと事態確認できていない状態で会見しているようにも思える。
 これについて何が問題になるかというと、昨日触れたNRCの指摘する3・4号機の使用済み燃料棒がプールから飛び出したのではないか、ということに日本側が反応しない理由につながるのではないかということを思うからだ。一回目の火災がどうであったか、その火災の様子を検証するでもなく、翌日の火災の報告の際、通報義務を怠ったことを謝罪して済ませている。謝罪をしても、問題自体が存在していれば、未解決のまま残ることになる。放射線量が一番高いのは、一回目の火災と重なるからだ。記者の質問で、この火災が二回目の火災に影響したのかどうか、それ自体が問題なのかどうかが分からない。
 16日の二度目の火災を報告する会見で、一度目の火災の事実の把握が充分ではなかったことが判明した後、東電は、その事実関係を精査したのだろうか。
 そして、今頃になってロイターが、3月15日の火災について報じるあたりの背景がよく見えないが、これだけ4号機の使用済み燃料プールの爆発問題が海外で話題になっているにも関わらず、日本で東電からデータの提示がないのも不思議だ。私が記者ならロイターの竿白記者同様、消防への通報者に取材したと思う。何が事実なのか、まったく分からなくなった。
 また、面白いメッセージがある。これは、「「原子力工学研究者からのメッセージ」-2011年04月11日 福島原子力発電所事故を機に記したメッセージと4/6までの情報に基づいた事故分析です」(PDF)では、爆発事故どころか、4号機に関する記述が一切ない。連名の東大教授らの分析なのかが疑わしくなるほど内容が無いようで、とほほな中身だ。が、この表題にあるとおり、連名の教授陣が送っているメッセージを読もうじゃないの、と再読した。
 東大教授陣は、「4号機に関するデータは一切持っていません」というメッセージを全力で知らせているのではないだろうか。

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