原発使用済み燃料の問題
福島第一原発の避難区域のどこかで、近所の人達と固まって避難している夢を見た。政府の誰かが私達の腕を強引に引っ張って、指定する避難場所へ避難しろと催促されている場面だ。数名なのだが、どうしても移動はしないと言って座り込んでいる。役人は諦め、次回に来る時は、勧告書ではなく命令書を持ってくると言って出て行った。
その後、私たちは、ひそひそ話を始める。
政府の言うとおりにしても、どうせ日本はいずれ住めなくなる国になるのだから、動いても同じことだとと皆で話し合い、結束を固めた。
目が覚めて、この夢には避難の意味がまったく含まれていないことを知った。避難するのは被爆しないためではないのか?そのことは、夢の中の私の意識にはなく、政府の言うとおりにはしないと意地になっている、そこだけがはっきりしていた。
さて、一昨日、経済産業省の原子力安全保安院が福島第一原発の事故の評価をレベル7に指定した。INES(アイネスまたはイネス)が設けている国際基準に準じて評価されるもので、既に周知のとおりチェルノブイリと並んだと報じてる事だ。世間はこれをどう見ているのだろうか。世間と言っても、私が世間話をするのはTwitterが多い。家の周辺はお年寄りばかりで、原発の話しはあまり通じない。Twitterで話をしていると言っても、かなり独り言だ。思っていること、ベントしたいことを設けられた四角い枠にタイプしてEnterキーを押しているだけのこと。さっきの夢の話じゃないが、一緒に避難する近隣の住民は誰だったのだろう。よくよく考えると、そういった付き合いのある人はあまりいない。それは、むしろ幸いなのかもしれない。沢山持っていると失うものも多いが、無ければ失う辛さが軽くて済む。
話を戻すと、INESの基準に準じてレベル7に上がっても私は驚かない。ここで書いてきていることは、言い換えればレベル7以上の想定であったし、Twitterに投稿された外国情報が豊富で、日本の比ではなかった。また、それらには、納得の行く説明なり解説をつけているため、信憑性の高いものだと感じて取り上げてきたからだ。そして、あの菅総理の会見での話は、どこか他所の国の話でもしているのかと思った。原発事故に対する正直な認識から率直に話されているとしたら、菅さんの原発の理解度は最悪で、現職の総理から降りてもらわなければならないレベルだ。
今起きている原発事故は大変深刻で、よい風など一行に吹かない。状況の変化が起こる時は、それは、悪い知らせだ。発覚してから手を打つような対処法しかない中、アメリカの提案に応じて海水から真水を注水することに切り替えた点と、1号炉の水爆の予防措置として窒素を注入したことだけが唯一、妙な安心感が持てたことを覚えている。
こうした中で、米原子力規制委員会(NRC)のヤツコ(Gregory B. Jaczko)委員長の新しい見解が12日、ニューヨークタイムズで公表され、早速、極東ブログ「NRCは水素爆発の原因を炉ではなく使用済み燃料プールと見ている」(参照)で訳がつき、解説された。実は、このエントリーが挙がる前にTwitterで該当の記事のリンクが投稿され、読んで内容は大まかに把握していたが、最初、肝心の部分を誤訳したため手間取った。原子炉の構造と、使われている英単語がどの部分を指しているのか理解できなくても、忠実に訳をつければ分かってきそうなものだが、そうは簡単に運ばないものだ。ここでは「secondary containments(第二次格納施設) 」を使用済み燃料プールと訳している。それでよいのだと思う。
早速読ませてもらい、ヤツコ氏の指摘と、気がかりだった4号炉の火災原因が結びついた。以下がその肝の部分だ。
the explosions in the secondary containments might have been caused by hydrogen created in the spent-fuel pools within those containments.
原子炉建屋の爆発をおこした水素は、建屋内にある使用済み燃料プール火災から発生していたかもしれないと述べた。
1号機と3号機の爆発の原因として考えられてきたのは、炉心から発生した水素が建屋の上部に溜まって爆発したと言う説明だった。この説明は、NHK科学文化部(かぶん)よる解説が分かりやすく、ニュースを聴いていた人は思い出すのではないだろうか。フランス・アレバ社の説明用資料から図を切り出したアニメーションが分かりやすい(参照)。これを否定するものでもなく、この可能性も勿論置いておくとしても、ヤツコ氏のこの仮説は、地震時、定期点検で稼動を中止していた4号機建屋が火災を起こした裏づけとなる。この火災発生時の状況は、以前取り上げたことだ(参照)。
これは、想定内のことではあったが、他の施設の爆発原因とまでは考え及ばなかった。そこが今回の収穫だ。ヤツコ氏のこの新しい説は、稼働中だった1、3号機の使用済み燃料プール全てにも言えることではないか、というのが極東ブログで考察している。言うまでもないが、2号機に関しては、爆発は起きていない。
4号機爆発の水素が使用済み燃料プールに由来するとしても不思議ではない。
問題は、1号機と3号機の水素爆発の水素は炉から、4号機は使用済み燃料プールからという、現在優勢な二元説にNRCが疑念を呈した点にある。別の言い方をすれば、1号機と3号機の爆発も使用済み燃料プールから発生したものではないのか?
もちろん優勢説からの反論は容易い。1号機と3号機の使用済み燃料プールの温度は4号機ほど高くないので水素の発生はないか少ないというものだ。
これまで部分的に分かってきたことが理路整然とつながった、というすっきりとした印象を受けた。私としてはここまででかなり満足してしまったと同時に、これは大変大きな問題なのだと認識した。椅子から崩れ落ちるかと思った。地べたに座り込んで呆然としているような気分だった。
稼動中止だった4号機建屋が爆発し、そこで自分なりに検証してみた時、使用済み燃料を水に浸した状態で炉の直ぐそばの隅っこに置いてあった、という事の重大さが分かった。それは、燃料棒が冷却水から顔を出してしまうと、再臨界が始まる危険性を知ったからだ。今回の地震では全ての電源がなくなり、冷却水の循環系等が全て動かなくなって起きた事故だが、何重もの厚い壁で包まれている炉心よりも、むしろ使用済み燃料プールの水を冷やす電源が止まり、加熱して水が蒸発し、中身が露出した問題の方が厄介だと認識した。よくもまあ、「あんなところ」にあんなふうに置いてあったものだと呆れた話になる。
このことは、今になって分かったことなのだろうか。この度の事故の検証で、原発の炉の設計者が時々話をされているが、使用済み燃料の終末処理に関してはどのような見識があるのだろうか、伺いたいものだ。原発の事故の検証というよりは、これ以上放射性物質を世界にばら撒かないよう食い止めながら、廃炉に向かって行く一方で、使用済み燃料の終末処理が新たな問題となるようだ。それは皮肉にも、ヤツコ氏の説が暗示している。
これまで受けた原発の恩恵に対して何十倍ものお返しが課せられるということだ。
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コメント
GE曰く、
「Reactor Building (Secondary Containment) 原子炉建屋」
らしいです。
http://www.ge.com/jp/news/reports/BWR_march17_11.html
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ちょっと一次資料まで確認してないんですけど、
福島第一原発「4号機のプール」(←いわゆる使用済燃料プールだと思われ)には、
(使用済みでない)「548体の使用予定燃料」があるらしいです。
http://astand.asahi.com/magazine/judiciary/articles/2011031600001.html
投稿: 774 | 2011-04-14 08:26
774さん、情報ありがとうございます。GEの資料から照らして、使用済み燃料プールは原子炉建屋内ですから、文脈は変わらないと確認できました。
また、燃料棒の混在についてですが、調べたところ、使用済みが783本、使用中548本、未使用が204本だと中日が報じています☞http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011041390225551.html
昨夜、NHKで、該当プールの水の検査値を報じたので気になっていました。
サイトの情報は助かりました。
投稿: ゴッドマー | 2011-04-14 09:03