NRCと東電・保安院の3・4号機に関する見解の相違について
昨日の夕方、福島に大きな地震が発生した。余震は、現在(夜中)でもなお集中的に続いているようだ。ここ諏訪では大した揺れではなかったが、何度も何度も揺れを体感しているうちに起きているのが辛くなり、眠くなった時点で早々に寝た。案の定、その分早く目が覚めたが、テレビをつけると、番組の途中で地震速報が何度か流れ、寝る前に感じた恐怖のようなものがそのまままた舞い戻ってきた。この恐怖は、揺れによるものではない。原発は大丈夫なのだろうかと、その心配ばかりだ。
昨日の一番大きな揺れの後、保安院の会見だったか、50分間注水が停止したと知った時は絶句した。この地震の後、少し経ってから極東ブログで「放射性物質を含む瓦礫の撤去が始まる」(参照)のエントリーが挙がったが、気持ちが集中できず、同じ場所を何度も繰り返し読んでいた。起きてから早速読再読し、またしても原発に対して気がかりな点が残った。今後の問題でもあり、書き留めておくことにする。
それは、3・4号機に関してだが、米原子力規制委員会(NRC)が3月26日付けのOfficial Use Only(内部機密)の文書でいくつか指摘がある中の一部分で触れている。この文書は、極東ブログで別のエントリーでリンクされていたため、その時点で読んでいたが、炉心の状態についての文脈で読んでいたため、原発敷地内の瓦礫の撤去作業のくだりで、使用済み燃料プールの爆発の文脈では気を置かなかった部分だ。
少し遡って記憶を戻すと、4号機に関しての認識は、使用済み燃料プールの爆発という強烈な出来事と共に、使用済み燃料棒は、炉心で制御されている燃料よりもはるかに危険な状態に晒されている点だった。勿論、平常時ではまったく問題はないとしても、全ての電源が停止した場合に備えていなかったという点だ。設計上の問題であるという以外、詳しくは分からない。4号機への関心は、この時がピークになった。また、3号機については関心が少し遠のいた。
まず、4号機の使用済み燃料プールが全6機のうちで最大容量である点と、15日午前中、4号機付近で大きな爆発が二度起きた。二度目は、一度目の火災の沈下を東電側が見逃していたためその事実を知らなかったことが後で判明した。このことは、「ニューヨークタイムズの放射線量グラフで4号機の火災を検証してみた」(参照)を書く時点で、読売記事から拾ったものだった。このエントリーでもニューヨークタイムズが作ったグラフを引用したが、4号機の爆発原因が何であるか日本側では明らかにされていなかった。話は前後するが、当時は、アメリカの方が確実なデータを持っているような嫌いがあり、何故東電からデータが出てこないのか不思議に思っていた。これが隠蔽と疑ったのは当初にはあったが、以後の東電の態度を見ていると、説明責任の認識や義務感の欠落かもしれないと感じている。
話を極東ブログに戻すと、該当エントリーでは、瓦礫の撤去作業の開始にあたり、先のNRC文書で指摘されている使用済み燃料棒の破片の発見場所に注目している。記事で引用されている日本の記事を読む限り、確かに、瓦礫の散乱状態を報じる意識は、水素爆発によるものだとしている。
極東ブログでは次のように解釈している。
報道からは、初めて瓦礫撤去活動が始まったような印象がある。また、高い放射線を発している場所は、(1)2号機と3号機の間、および(2)3号機西側とされ、NRC文書の指摘場所とは若干異なる。また、放射性物質が水素爆発に由来するとしても燃料プールからの散乱という指摘は日本側報道にはない。
NRCの指摘と言うのは、先の3月26日付けの内部文書にその記述があり、極東ブログの引用を借りる。
Fuel particulates may have been ejected from the pool (based on information of neutron emitters found up to 1 mile from the units, and very high dose rate material that had to be bulldozed over between Units 3 and 4. It is also possible the material could have come from Unit 3).
燃料粉塵が使用済み燃料プールから飛び出している可能性がある(施設から1マイル離れたところに中性子線放射が検出されたとの情報、及びブルトーザーで均しておくべき3号機と4号機の間にある非常に高い線量率の物質による。これもまた3号機から飛び出た可能性のある物質である。)
撤去作業に関しての指導書のようであるが、気になるのは、東電では3号機と4号機の爆発をどう見ているかという点だ。グラフでは3号機に関して14日の水素爆発以後、17日には燃料プールの水を確認している。報道にない事は、事実になかったということではない。東電が3・4号機の爆発原因と、今後の危険性をどう見ているか、その点がこちらに伝わってこないのは、単にメディアの関心が向かないだけなのか、東電が説明義務を感じていないからなのか、違和感が残る問題だ。
また、今後の作業を行うに当たり、このような見解の相違のままでは危険であるし、そこここに放射能を含んだ燃料棒の破片が転がっている可能性が問題だ。また、指摘に対して対応しないという姿勢は、アメリカとの信頼関係が今以上に損なわれるのではないかと気になる。周囲からの指摘に耳を貸さないままでよいわけもない。
ついでに言うと、これまでも遠隔操作のできるロボットの提供に関して、早い時点でフランスなどからオファーもあったようだが、政府は受け入れていない。日本はロボット先進国であるとばかり思っていたが、最近は、政府の刷新の名の下に開発費をケチったため、原子力安全技術センターが研究開発していた無人ロボットが朽ちてきたようだ。2000年に開発したロボットも東電に引き渡されていたが、捜査できる人材がなく、また、予算がつかなくなったため維持管理ができなくなったと報じていた。これら一連のことは、「原発政策に加えたい項目」(参照)で、既に触れた。
また、産経記事「1~4号機個別復旧プラン策定 難題山積、実現性?」(参照)では、正確な現状把握がないまま東電と保安院が今後の復旧プランを練っていると報じているが、その根拠がよく分からない。
ただ、いずれも復旧の障害となる難題を抱えるうえ、高濃度の汚染水と高レベルの放射線量に阻まれ、正確な状況を把握できておらず、具体的なプランは見えない。原子炉や核燃料貯蔵プールを安定的に冷却できるめどについて、保安院は「数カ月単位の時間がかかる」(西山英彦審議官)と繰り返すばかりだ。
その内容とは、ここで着目している3・4号機についてのみ引用する。
▦3号機
3号機は14日の水素爆発で、建屋が最も激しく損壊しており、格納容器の配管が損傷し、2号機と同様に汚染水が大量に漏出している恐れがある。また、残留熱除去システムも被害を受けている可能性があり、「復旧は厳しい」(関係者)との見方がある。
汚染水の移送先であるタービン建屋内の「復水器」では、「水が増え続けているが、原因は不明」(保安院)という状況で、排水作業も進んでいない。このため、2号機と同様に、外部構築の検討が必要になりそうだ。
▦4号機
震災時に定期点検中だった4号機では、核燃料貯蔵プールにある高熱の使用済み燃料への対応が最大の課題だ。現在は、生コン圧送車で注水し水の蒸発分を補給しなんとか危機的な状況を回避している。1~3号機のプールも同じ状況で、注水した水を循環させるシステムの復旧が急務だ。
さらに使用済み燃料をプールから取り出し、安全に保管できるのかも問題だ。水から露出すると高い放射線を放出するため、建屋内部で遠隔操作で搬出する必要があるが、建屋に加え、クレーンなどが爆発で壊れている可能性があり、取り出し方法の検討を迫られている。
実際の計画書なりを見たわけではないため、この内容が全てとは思わないが、使用済み燃料プールの爆発や、燃料が飛び出したという言及はない。
今回、極東ブロブで取り上げられたNRCの見解と日本側の認識が「相違」であるかどうかの確認も取れていない状況であるなら、「正確な把握」には至っていないと思う。このままでよいとは思わないが、では、いったい誰がこれに物言いをつけるのだろう。それとも、このまま続行するのだろうか。
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