アメリカが抱えている外交問題-パキスタンに関してNewsweek記事が気になった件
昨日、米国防長官を努めてきたゲーツ氏の退任後にパネッタ氏が指名され、また、7月にアフガニスタンからの撤退開始を見届けた上で、ペトリス司令官は、議会の承認を得られればCIA長官に就任する予定だそうだ(NHK)。ゲーツ氏の名前は日本のニュースには良く出てきた名前で馴染みがあるが、もうこの名前を聞くことはなくなるのかと思うと、この4年間を少し振り返っていた。
ゲーツ氏は、ブッシュ政権から関わり、アフガニスタンへ訪問した回数も多かったと思う。3月の初旬、NATO軍の国際治安支援部隊(ISAF)による誤爆で9名が死亡した時も、カルザイ大統領を直接訪問して謝罪するなど、両国の関係を取り持つ役目を果たしていた。そして、アフガニスタンから米軍が撤退するのは間近となってしまい、昨年、本当に撤退できるのだろうかと疑っていたのはどうやら無用な心配だったみたいだ。ついでといっては何だが、先日のNewsweek(4月27日号)で、アフガニスタン情勢の鍵を握るパキスタンとの関係に触れた記事が気になった。少し引用してクリップ的に書きとめておくことにした。
記事のタイトルは「米パの亀裂をアルカイダが笑う」とあり、副題に「対テロ パキスタンとの関係がいくら悪化してもアフガン問題を抱えるアメリカは強気に出られない」というのが、なんだか素直にそのまんまではないかと思った。
陰で実権を握り続けるパキスタン軍も、ここ2年のアメリカの諜報活動に不安と怒りを募らせている。彼らにしてみればデーピスの一件や無人機の空爆によって、自分たちが領土を完全に掌握できていないという現実を日々突き付けられている。
パキスタンのアシュファク・キヤニ陸軍参謀長やアハメド・パシャー軍統合情報局(ISI)長官が望んでいるのは「レーガン・ルール」への回帰だ。
このルールは80年代にさかのぼる。当時、CIAとサウジアラビア当局はISIに資金と武器を提供し、アフガニスタンに侵攻したソ遂軍と戦うイスラム・ゲリラ組織ムジャヒディンを支援させた。CIAとISIはまさに盟友だった。
米政府は基本的に干渉せず、作戦や戦争の遂行はISIに任せていた。パキスタン側にも、主権や尊厳を脅かされているという感覚はほとんどなかった。
レーガン・ルールには、パキスタンの核開発を黙認するという暗黙の合意も含まれていた。しかし89年にソ連がアフガニスタンから撤退すると、アメリカはパキスタンの核開発に対する制裁を実施。90年にはF16戦闘機など、パキスタンが支払いを済ませていた武器の供給を突然中止した。パキスタン軍はあの裏切りを忘れていない。
先にある「デービスの一件」というのは、CIA関係者である彼が強盗と見られるパキスタン人2名を射殺した事件で、パキスタン政府は当初、これを計画的な犯行ではないかと疑ってた(参照)。
記事によると、その後、釈放に当たっては230万ドル(約2億円)が慰謝料として支払われているそうだが、パキスタンのメディアは、米印イスラエルの結託によってパキスタン兵器を奪う計画があるという陰謀論を仕立て、国民の怒りを煽っていると見ている(ブルース・リーデル)。
このような背景を受け、アメリカを抜きに「レーガン・ルール」を活用し、独自の平和構想を目論んでいるのではないかという指摘だ。また、どれ程米パ関係が冷え込もうと、アメリカがパキスタンを必要とする理由はインドとの対立関係から抜け出したいと望むパキスタンを後押しすることは重要だからだ。これは、インドとアメリカの関係を維持することは、結果的にはパキスタンとインドが危険な火種とならないための配慮になる。このように、アメリカが両国の橋渡し的な位置にいることが必須であるにも関わらず、パキスタン国軍とタリバンなどイスラム武装勢力との関係もよくわからない関係のひとつで、アメリカの困惑を感じる。
4月22日のAFPが次のように報じている(参照)。
パキスタンを訪問した米軍制服組トップのマイケル・マレン統合参謀本部議長が20日、パキスタンの三軍統合情報部(ISI)はテロリストとつながっており、アフガニスタンの旧勢力タリバンとの戦いにおける取り組みが不十分だと批判したことに対し、パキスタン軍は翌21日、これを強く否定する声明を発表した。
マレン議長の発言を受けてパキスタン軍は21日、アシュファク・キアニ陸軍参謀長は「パキスタンの取り組みが不十分で、パキスタン軍が透明さに欠けているとするネガティブなプロパガンダ」を断固として否定するという声明を発表した。またキアニ参謀長は「現在進めている作戦は、テロリズム打倒に向けたわが国の決意を証明するものだ」と述べたという。
またキアニ参謀長は、テロリズムとの戦いの勝利の鍵となるのはパキスタン国民の支持だが、波紋を呼んでいる米軍の無人機による攻撃は、「テロリズムに対するわが国の努力だけでなく、我々の努力に対する世論の支持も損なっている」と批判した。
パキスタンにも言い分があるようだが、両国の軍のトップ同士のこのような批判の応酬から、関係はあまりよくないように映る。アメリカが物別れで終わりにするはずもないだろうと見てみると、パキスタンに小型無人機85機を供与するという23日の産経記事があった(参照)。
この配慮(懐柔策)は、先の「デービスの一件」後、既に手配済みだったのではないだろうか。アメリカとしては、アフガニスタン国境地帯の武装勢力掃討と物資補給路の確保はパキスタンの協力なくしては達成できないところであり、パキスタンとの関係維持に気を使っているだけではなく、相当の出費も嵩んでいると思う。 また、パキスタンがアメリカの要請にどれ程応えているか、そのことも監視しつつ、アメリカの意見力維持のためにも無人機の提供が先手にあったのではないだろうか。
そういえば先日、Twitterで見かけたワシントンポスト紙のチャールズ・クラウトハマー氏(コラムニスト)の寄稿で、来年の大統領選は、オバマ氏が再選されるだろうと予測していた。アメリカの抱える問題解決のためには、大統領が変わらないほうが良いのかどうか分からないが、激務となるのは必須だと思う。アメリカは経済大国だという見方を強く持ってきたせいか、財政難であることや、それが外交に影響することに直結して考えにくかったが、莫大な費用を費やしてきている。財政的にもアメリカは厳しいところだと思う理由に、リビアへの軍事介入も事実上はアメリカが仕掛けた戦争であるため、抱える問題は山積されていると思う。こうした財政難と同時に、アメリカの外交はどのように変わるのだろうか。気になる問題だ。
日本はというと、外交どころの話しではなさそう。
昨日、国会で菅さん下ろしを露骨に発言する野党の言い分を耳にしたが、血相を変えていた。苛立ちと怒りだろうか、原発と震災復興問題という大きな課題についての議論ではなかった。菅さんにも問題はあるのだろうとは思うが、議論する部分が違うだろうと思った。被災された方々は菅さん下ろしの議論より、明日はどうなるかという問題解決を望んでいると思う。
ここでは触れなかったが、パキスタンには核開発の問題もあり、アメリカのかかわりは、かなり深刻である。この件に関しては、極東ブログ「深刻化するパキスタン問題」(参照)で、詳しく取り上げている。参照されたい。
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