2011-03-25

リビア内戦への軍事介入

 リビアへの軍事攻撃は今月19日、英仏米が中心となった多国籍軍による空爆から始まっています。 この時、「アメリカの軍事介入について雑感」(参照)で、ことさらアメリカの介入についての違和感を書き連ねました。未だに終わらないイラク戦争の経緯を辿れば、リビアへの軍事介入は、イラクのシーア派の悲劇の二の舞です。いい加減にしておくれ、と呆れました。では、冷静に見つめ直した時、この介入がどう映るかと言えば、「国連安保理の決議」と言う大義名分の下に、リビアの内戦に口出しをしているに過ぎません。そして、リビアが原油国であるために、この口出しを善行動として正当化した最低の作戦を講じたのだと思います。
 ここで書きたいことは以上ですが、国際社会の動きは実際のところどうなのか、その点について記録することにします。
 昨日、イギリスのキャメロン首相の議会での発言からNHKは、次のように報じていました(NHK)

 国連の決議はリビアの市民の命を守るためのあらゆる手段を認めているとして、状況しだいでは、カダフィ大佐を軍事攻撃の標的にすることも排除しないとの考えを示しました。
 これは、キャメロン首相が23日、議会下院でリビア情勢に関する野党からの質問に対して答えたものです。この中で、キャメロン首相は「軍事攻撃の目標は、国連安全保障理事会の決議に従って選ばれなければならない」としたうえで、「決議は、リビア上空の飛行禁止空域の安全を確保し、市民の生命を守るため必要なあらゆる手段を認めている」と述べ、状況しだいでは、最高指導者のカダフィ大佐を攻撃の標的にすることも排除しないとの考えを示しました。カダフィ大佐を攻撃の対象にするかどうかを巡っては、軍の上層部から標的にはならないとの発言が出る一方で、国防相など閣僚からは、最近、攻撃の対象とする可能性を示唆する発言が相次いでいました。また、キャメロン首相は、リビアに対する作戦にカタールの戦闘機がすでに加わっていることを明らかにするとともに、クウェートとヨルダンも後方支援の形で参加すると述べ、今回の軍事作戦がアラブ諸国の強い支持を得ていると強調しました。

 カタールの役割どころというのは、リビアの飛行禁止区域の維持で、戦闘機の配備の準備が進んでいるいるようです(産経)。

ロックレア在アフリカ米海軍司令官は22日、リビアでの飛行禁止区域を維持するため、カタール空軍の航空機が今週末までに多国籍軍に加わるとの見通しを示した。実現すれば、アラブ諸国で初めての対リビア軍事行動への参加となる。

 また、アメリカは最初からこの戦争に大きく加担することを避けたいとして、早急にNATO(北大西洋条約機構)に指揮の移行を求めていますが、NATOでは、意見が分かれています(毎日)。

 深入りを避けたい米国は指揮権を早期にNATO側に渡したい考えだが、軍事介入に反対のトルコはNATOの正式任務とすることに難色を示している。主導権を握りたいフランスはNATOの役割を限定して米国色を薄めたい意向で、各国間の駆け引きが熱を帯びている。
オバマ米大統領は21日、リビア攻撃について、防空網破壊などの初期攻撃から、飛行禁止空域の設定・運用を目的とする次の段階へ「数日のうちに」移行すると述べた。これに伴い指揮権を米軍から、英仏軍かNATOに移したい考えだ。
ホワイトハウスによると「次の段階」での米軍の主な役割は、リビア政府軍の通信手段の妨害や情報活動、多国籍軍への給油など「支援的役割」という。
大統領はイラク戦争などを念頭に、「結果として米軍がすべての負担を担った」と言及。既に世界各地に展開する米軍や、米国の納税者の負担を軽減するためにも、今回は「国際的な任務」とすることが大事という率直な見解を示した。

 アメリカの内情は分かりますが、火をつけておいて後は「良きに計らえ」とは。喧嘩だったらなんだこいつ、ガツンとやられる卑怯者かもです。そして、聞いて驚くなかれ、この戦争が長期化すると10億ドル(808億円)だという見積もりまで出ています(朝日)。

 米シンクタンク、戦略予算評価センター(CSBA)のザック・クーパー氏は、リビア政権軍の防空施設を排除するための初期費用は4億─8億ドルになると予想。飛行禁止区域のパトロール費用は1週間当たり3000万─1億ドルかかるとしている。
また、米英軍がこれまでに使用した巡航ミサイル「トマホーク」の費用は約2億ドルに上ると述べた。
米軍は飛行禁止区域の設定にかかる費用について明確な数字は出していない。米国では2011年度の財政赤字が1兆4800億ドルに上るとの見通しがある中、リビアでの軍事費を支出できる余裕はないとの批判的な見方も議員や批評家から挙がっている。
英国のオズボーン財務相は、リビアでの軍事費は数億ポンドに上る見通しで、アフガニスタンでの軍事費を下回るとの見解を示した。しかし、軍事アナリストのフランシス・ツサ氏はBBCラジオ4に対し、リビアでの軍事費は政府の想定を超える可能性があると述べ、現時点の支出は航空機1機当たり約20万ポンド(約2650万円)、ミサイル1発当たり80万ポンドに達していると指摘。飛行禁止区域が設定されれば、1日当たり200万─300万ポンドの支出が見込まれるとの見方を明らかにした。

 また、先の毎日記事に戻ると、アメリカがNATOへの移行を望む中、肝心のNATO内部が合意に至っていない理由がいくつか挙げられています。

 (1)軍事行動に異を唱える反戦陣営(2)NATO主導を嫌うフランス(3)NATOへの指揮権移行を望む親米派--に分裂しているためだ。
 反戦陣営の筆頭はイスラム国のトルコだ。エルドアン首相は「NATOの軍事介入は危険な結果をもたらす」と地域の不安定化を警告しており、欧米の参戦国に対して即時休戦や民間人犠牲の回避を求めているという。
 対リビア空爆で戦端を開いたフランスは「アラブ連盟は作戦がNATOの完全な指揮下に入るのを望んでいない」(ジュペ外相)と指摘、NATOの役割を作戦立案などに限定したい。アフガニスタン戦争でアラブ世界に反感の強いNATOとして行動することへの抵抗と、「アフリカは欧州の担当地域」との対米意識がある。
 これに対して英国は「米軍指揮権のNATO移行」(キャメロン首相)を望む。NATOは90年代前半のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争で飛行禁止空域の監視に空軍力を提供したことからリビアでも適任との判断だ。NATOにはユーゴスラビアやアフガンでの実戦経験があり、指揮命令の能力と仕組みを備えている。
 指揮権を巡る混乱は作戦に影響を与えている。F16戦闘機6機を発進させたノルウェーは21日、指揮権問題が解決するまで作戦参加を凍結すると発表した。イタリアもNATOが主導権を握らなければ基地使用許可を取り消す場合もあると警告している。アラブ諸国への配慮からゲーツ米国防長官は「NATO任務とはせずにNATOの指揮命令系統を使う方法」を提案する。

 この記事は23日のもので、この時点ではとても合意できるとは思えないのですが、合意するよりも前に決着がつくのではないかという面も逃せません(ブルームバーグ)。

多国籍軍幹部はカダフィ大佐支配下の空軍基地がすでに機能を失っており、地上軍への攻撃に注力していると語った。AP通信によれば、政府軍の戦車は空爆後にミスラタから退却した。現地の医師の話を引用して報じた。

 この戦争が誰にとって重要であるか、リビアの市民を守る使命感やカッダーフィは世界が認める悪者であるとしても、所詮はこれはリビアの内戦でしかないことです。カッダーフィを擁護するつもりはさらさらありませんが、片方を悪と多数が見なせばその悪を潰すことが正義だという理屈を押し付けているだけに映ります。リビアの平和を願って民主的で平和的な解決を図るのであれば、仲介が最大限の介入かと思います。その結果、どうしても内戦が終わらないのであれば、それは介入が徹底していないからとしか言いようがありません。
 アメリカは、日露戦争(1904年(明治37年)2月8日 - 1905年(明治38年)9月5日)の仲介に入り、ポーツマス条約によって日本とロシアを講和させたという経験の持ち主です。その世話のお陰で停戦できた日本が、リビアの仲介を買って出られると良いのですが、残念ながら目下のところ国内はそれど事ではない状態です。菅さんも出たり引っ込んだりで、てんやわんやしています(参照)。

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